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【映画感想】イミテーション・ゲーム

一気に寒くなってきましたね…
かーたんです。読んで下さりありがとうございます。

この半年くらいで急速にベネディクト・カンバーバッチさんの演技にドはまりしております。
そこで今回は
『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』の感想を書き留めておこうと思います。
ネタバレが多いので、気になる方はブラウザバックをお願いいたします。
鑑賞後、戻ってきてくださるととてもうれしいです。


あらすじ

舞台は第二次世界大戦中のイギリス。
ベネディクト・カンバーバッチさん演じる天才数学者アラン・チューリングは、誰にも解読できないとされるドイツ軍の暗号エニグマ解読に挑みます。
10人が24時間かけて全パターンを調べるだけでも2000万年かかるというエニグマ。共に立ち向かう仲間との衝突もありながらチューリングが構築したマシンが解読します。
湧き上がる喜びもつかの間、本当の戦いはこれからでした。
解読されたことがドイツにばれてしまえばエニグマを改良され、解読作業が振り出しに戻ってしまうからです。
英国軍にさえ解読したことは告げられず彼らは勝利という"大義"のために緻密な計算を続けていきます。
作戦を遂行するにつれて彼らに降り積もっていくのは秘密と疑惑。
チューリングが最後まで隠し通した秘密とは…

全体的な感想

予告やタイトルからみると「エニグマ解読」までに焦点をおいたストーリーという印象を受けましたが本筋はエニグマ解読を達成したところから始まります。
エニグマ解読を誰にも悟らせず、英国を勝利に導くために「血にまみれた計算」を行う必要がありました。
-どの作戦を行い、どの攻撃を見逃すかを冷静に分析していく状況には言葉も出ません。
作品には一定の静かな空気が流れており、"ド派手"な演出は加えられていません。静かでありながらも観客の感情を後半にかけて大きく揺さぶる展開が巧みであると感じました。
『スペンサー ダイアナの決意』のような作品が好きな方には結構刺さると個人的には思います。

この作品自体がまさに"チューリング・テスト"

私は大学で計算機システムや情報工学の講義を受けており、アラン・チューリングの名を聞いたことがありました。
ある機械が知的であるかどうか、知能を持っているかどうかを判断するチューリング・テストについても基本的なことは知っていました。
警察署で尋問を受けたチューリングが、刑事ロバートに過去を話し、こう告げます。

さぁ、教えてくれ。私は機械か?人間か?戦争の英雄か?それとも犯罪者か?

エニグマ解読を成し遂げ、血にまみれた計算を行ってきた、そして当時は犯罪とされていた同性愛者である彼に「知的であるかどうか」つまり道理を判断し処理する心の働きがあるのかを刑事ロバート、そして観客に問うたのです。
エニグマ解読を共に行った仲間から「モンスターだ」と言われたこともあるチューリング。
彼はそこまで非人間的だったのか?
クライマックスにかけてカンバーバッチさんの演技に胸をうたれます。

1人にしないでくれ…孤独だったチューリング

当時は犯罪者とされていた同性愛者であるチューリングは、マシン「クリストファー」との仕事を続けるために薬物療法を受け入れて生活を送っていました。
薬物療法の影響で体も心もバランスを崩していたチューリングの「クリストファー」を取り上げることはしないでほしいという叫びが心をえぐりました。
「クリストファー」とずっと一緒に居たけれど彼は孤独でした。
彼の叫びが思い知らせてくれます。

神をも上回った男に手を差し伸べるのは?

学友であるクリストファーは、亡くなってしまうことでチューリングとの手を離しました。
マシン「クリストファー」もチューリングが自殺したことでチューリング自身が手を離すことになりました。

エニグマ解読を成し遂げ、勝利に向けた作戦を実行していた彼ら。

その時は神よりも運命を握っていたに違いありません。
一時は神をも上回ったチューリングは神の救いを受けられず、二度もクリストファーを失ったというのはなんともむごいです。

チューリングの美しい微笑

自らの命のスイッチを切る直前のチューリングの表情。
満足したような、運命を悟ったような僅かなはにかみ。作中でもっとも美しいシーンの1つではないでしょうか。カンバーバッチさんの表情演技に引き込まれました。

演出について

この作品は、冒頭に述べた通り"ド派手"な演出はありません。
なんともイギリス映画らしい空気感だと感じました。
エニグマ解読までが思ったよりもあっさりしており
そこをあえてダイナミックに描かないのも巧みだと思います。
全体として流れる"静"の雰囲気が"動き"を生み出しているのです。

マシンを"クリストファー"と名付けたことについて

作中でチューリングが作り上げていくマシン「クリストファー」。

これは彼が学生の時に愛した学友「クリストファー」を投影しているという演出です。史実とは異なります。
私は個人的にこの演出がなくてもチューリングがそのマシンを心の拠り所とし、丁寧に構築していたことは伝わるはずだと考えます。
この名付けの演出は確かに"観客の心を揺らす"ポイントにはなると思うのですがそれが逆に"演出チック"過ぎたのではないかと思います。
みなさんはどうですか?

天才とカンバーバッチさん

私が今までに見てきたカンバーバッチさん出演作の多くで、彼は賢さが光る役を演じられていました。

周囲よりもずば抜けた賢さによって集団の中で異質な人物として取り扱われるキャラクターを、
そしてキャラクター自身が抱える苦悩を、あからさまに表すのではなく奥に秘めたように丁寧かつ緻密に演じられている印象を受けます。

この作品のラストシーンはその演技のテクニックが
如実に感じられました。

結末・その後を文章で伝えて幕を閉じる演出

この映画のラストでは、終戦を迎えブレッチリー・パークで仲間たちと資料を焼却するシーンを背景に、チューリングのその後について淡々と文字が流れていきます。あえて、映像としては描かず文章にすることで観客の注意を引く意図があるのでしょうか。
物語の最後の波という意味でのラストシーンではなく、映画の幕が閉じる寸前という意味でのラストシーンというのはどんな内容であれ観客の心にダイレクトに残ると思っています。

今回背景となったシーンについて考えます。
ゆらゆらと燃える炎。一仕事終え絆の深まった仲間。舞う資料。
ブレッチリー・パークでの難問、エニグマと終戦を解き終えたチューリングらの永遠のような、一瞬のような輝きを閉じ込めたようです。このシーンを作品の幕を閉じる位置に持ってきた演出は作品自体が多くの人の心に残る理由のひとつではないでしょうか。

最後に

長くなってしまいました…
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
みなさんの意見もぜひ聞いてみたいと思いますので、
コメントをこちらのnoteもしくはXアカウントに
ぽーん!と投げてくださるとうれしいです。
ぜひ、この作品について感情シェアしたいです。

余談


私は一度気に入った作品は何度も何度も見返すタイプですが、
特にこの作品は良すぎて24時間で3回も視聴しました。
2023年出会えてよかった作品ランキング1位になりそうな予感がします。

劇中の音楽も緻密さを感じさせつつも緊張感と力強さを秘めており心に残りました。この記事もサウンドトラックを聴きながら書きました。


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