【向日葵は枯れていない!】31.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~第31節 vs SC相模原 ~
連敗から脱出し、さあこれからというところで痛い敗戦を喫する。
シーズン終盤戦に突入したギラヴァンツ北九州は再上昇なるのか?
今節はホームで苦杯を舐めたSC相模原との対戦でしたが、チームは積極果敢な戦いを魅せてくれました。
振り返ります。
1.試合結果&メンバー
前半CH(34)高吉正真のゴラッソ(J初ゴール)により先制!と思われましたが、相手GKへの味方ファールをとられノーゴールに。
しかし、北九州はゴールへの積極性を失わず、後半立ち上がりRSH(29)高昇辰の個人技で先制、その後中押し、ダメ押しと理想的に追加点を奪います。
3点目はキャプテンCH(14)井澤春輝の記念すべきJ初ゴールとなりました。
相模原はイエロー6枚、退場者を1人出す荒っぽさが目立ちましたが、ラフプレーに影響を受けることなく北九州が自分たちのリズムで試合を完結、完封勝ちを収めました。
この勝利により僅差ながらもチームは再び4位に上昇、相変わらず熾烈なプレーオフ圏争いが続きますが、得失点差も回復しましたし、北九州にとっては大きなきっかけとなりそうな1勝です。
メンバーです。
北九州は4-2-3-1でのスタートです。
メンバーにも大幅な変更が加えられました。
前節岩手戦で久々に欠場したエースCF(10)永井龍が戻ってきました。
一方、中盤の軸MF(6)藤原健介はベンチスタート、CHにはキャプテン(14)井澤春輝が入ります。
MF(21)牛之濱拓もベンチスタート、(17)岡野凛平が珍しくLSHに入りました。RSBでは久々に(23)坂本翔が、そしてGK(31)大谷幸輝が28試合ぶりに先発しました。
サブにもMF(8)若谷拓海が久々のメンバー入りを果たしました。
相模原は3-1-4-2です。
守りの軸であるCB(55)田代真一が出場停止、(2)加藤大育が入ります。一方、LWBには「実力者」(16)高野遼が出場停止から戻ってきました。
非保持時には両WBが最終ラインまで下がり、シャドーの2人がアンカー脇を埋める5-3-2の守備ブロックを形成、2トップが北九州の球出しに制限をかける形であったと思います。
2.レビュー
相模原の当たりの強さ、これが試合が進むに連れて徐々にラフプレーへと変わってゆくのですが、その相模原が主導権を強く主張する立ち上がりでした。
全体で幅と奥行きをとる、ピッチを広く使う陣形に見えましたが、後方からのビルドアップよりは、最終ラインから北九州陣内のサイド、特に左サイドにつけるフィードは正確で、ここからの(16)高野やサイドに流れてくるLST(48)植田啓太の突破には迫力がありました。
彼らからのクロスを中央で構えるCF(39)瀬沼優司に当て、シャドーを中心にシュートに結びつけようというねらいであったと思います。
しかし、相模原のパス、クロスに精度を欠いたこと、そして北九州自陣サイド深い位置への対応については、SH、SBのチャレンジ&カバーの関係がしっかりしており、それでも空くボックス付近のスペースについては、CH(34)高吉正真の的確なカバーで対応できていたと思います。
LSHに(17)岡野を起用した理由は、こうした守備面での対応において運動量が必要であったからではないかと推測します。
一方、相模原最終ラインからの球出しについては、北九州前線も闇雲なプレスではなく、一定の約束ごとに基づいたプレスを敢行出来ていたと思いました。
10分25秒の場面です。
相模原が自陣で保持していますが、最終ライン3枚に加えてアンカーの(47)岩上祐三が下りてきます。
おそらく(47)岩上は(29)高昇辰や(17)岡野のプレスを警戒して、数的優位をつくりに下りたのですが、(47)岩上が下りた時は北九州の前線2枚(10)永井とOMF(20)矢田旭は、この動きを静観していました。そして相模原は(47)岩上→(2)加藤→LCB(40)長谷川雄志とパス交換、おそらく(40)長谷川から強みである左サイド(16)高野へと出したかったのだと思いますが、ここをおそらく(29)高昇辰が牽制、ボールは(2)加藤へと戻されます。この時点で(47)岩上は自身のポジションに戻りかけており、(10)永井が猛烈に(2)加藤へとプレスを仕掛けます。これがスイッチとなり(17)岡野もRCB(28)小笠原圭佑へとプレス、(47)岩上は(20)矢田が、(40)長谷川は(29)高昇辰がみているため、出し所がなくなった(2)加藤は慌てて一列飛ばした対角線上のパスを出しますが、これを(17)岡野がカット、一気に北九州のショートカウンターに繋げました。
プレスの細かい約束事と一度スイッチが入った時のスピード、連動性が良かったと思います。
前節の欠場により、皮肉にも(10)永井の存在感が際立ってしまったのですが、リーグ戦最終盤を迎えるにあたり、彼の負担を減らしながら好調をキープさせる、故障リスクを減らす策がチームには求められていたと思います。そういう意味では、もちろん対戦相手の守備方法にもよるのですが、プレスにいく場面、いかない場面をはっきりさせているのは良かったと思いました。
この試合、相模原も北九州も最終ラインで保持した際には、焦ることなく、最終ライン間でゆったりとパスを回していた点が非常に印象的でした。
両チームのパスソナー、パスネットワーク図からもその様子がみてとれます(SPORTERIAより)。
では、この両チームの明暗を分けたものは何であったのか。
前へのチャレンジの積極性と精度であったと思います。
北九州が最終ラインで保持している際、相模原は2トップが(34)高吉、(14)井澤の両CHを消します。そこでサイドの(23)坂本やLSB(33)乾貴哉と出し入れしながら、前線への出し所を探ります。
北九州にとって幸運であったのは、相模原が比較的ピッチを広く使うため、ライン間に広めのスペースが出来ていることでした。
この試合(6)藤原不在でスタートしましたが、各選手に比較的プレースペースが十分あったことで、各選手が主体性を持ってプレーすることが出来ていたと思います。
そしてもう一つは相模原のアンカー脇を上手く使えていたことです。ここに(20)矢田や(10)永井、左WB寄りのスペースに(29)高昇辰がしっかり下りることで、北九州のCB陣(50)杉山耕二の縦パス、(13)工藤孝太の対角線のフィードを引き出していました。
(6)藤原不在をカバーする積極性はフィニッシュへの意識にも現れていました。
26分、(20)矢田のFKからのこぼれ球をボックス外から撃っていった(34)高吉の抑えが効いたミドルシュートは見事の一言で、主審は少なくともファールを現認していなかった事からも認めらてもおかしくなかった一撃でした。しかし、今までの北九州の選手、特に若手に積極的にシュートを撃つ姿勢が生まれているのは非常に良い傾向といえます。
ゴールにならなかった不運よりも、何となくこのシュートをみた時に今日は勝てそうとポジティブな気持ちが個人的には芽生えたのでした。
おそらく前半のポジティブな流れを褒められつつも増本監督から更なる発破をかけられた選手たち(想像です)は、後半開始から仕掛けます。
3点目もそうですが、(33)乾のフィード、クロスの精度もこの試合、非常に良かったと思いました。
(10)永井がつぶれた浮き球を(29)高昇辰が頭で運び、最後は相手2枚を丁寧に剥がした末のゴールでした。
ゴールの積極性という点では、寧ろ有り余るぐらい積極的な(29)高昇辰ですが、その精度が課題であったと思います。そういう意味では個人技ですが、最後冷静に交わしたあたりに成長の跡をみることができました。
試合中にこんなことを呟いているのですが、これは58分19秒からの場面です。(34)高吉からの右前方へのパスが流れ、相模原ボールになるのですが、実は北九州にとってかなり危ない場面になりかけていました。
相模原LWB(8)橋本陸が赤点線、RST(22)福井和樹やCH(17)伊藤恵亮へパスを出していたら、一気に相模原のカウンターになる場面であったのです。(23)坂本はこれに気づいて(17)伊藤へのグラウンダーのパスコースを切っているのですが、いち早く(10)永井も気づいているのです。そこで、相模原に何が何でも前へ出させないと猛烈なチェイシングを敢行します。最終的に右サイドまで相模原ボールを追っていき、この動きを「相棒」(17)岡野がサポート、最終的に相模原の低い位置からのスローインに止めました。
このチェイシングにスタジアムも湧いたようですし、増本監督も大拍手を送っていましたね、筆者も胸が熱くなりました。
これが(10)永井の真骨頂なのです。
走るべき時を感じる判断、感性、そして徹底して追い込む執念。
パスミスをしてしまった味方(高吉)を助ける動きでもあります。
この日、(10)永井に代わって途中出場したCF(18)渡邉颯太にはこの精神、伝わっているように思ったのですが、(16)大森真吾にしても、(9)平山駿にしても、この姿勢をぜひ吸収してほしいと思いました。
チームを救うという意味では、いつも地味ながらもボール運びのリンク役になり、攻守の時間づくりに励んでくれる、そして貴重なコミュニケーション役も担う(14)井澤に嬉しい初ゴールが生まれたのも大きなニュースです。本当はベテランMF(11)喜山康平が担っていたかもしれない役割をまだまだ若い(14)井澤が担っているというのは、北九州にとっては明るい未来を暗示していると勝手に思っています。
この試合でも(13)工藤がファールを受けた際に少々カッとなりそうなところを真っ先になだめにいったりと、キャプテンぶりを如何なく発揮していました。
以前に、北九州の若手アタッカーはパス能力は高いので、ゴールにパスするつもりでシュートを撃ってほしいというような事を書きましたが、(14)井澤本人のコメントによるとやはり瞬間的にミートを重視したようで、技術力の高さが上手く表現されたゴールであったと思います。
そしてこのシュートもボックス外から撃っているのですよね、
前半の(34)高吉もそうなのですが、各選手、しっかりゴールに矢印が向いていた試合であったと思います。
3.まとめ
さて、今節は良い意味でそこまであれこれと書くことはなかったと思います。(6)藤原のベンチスタートは大きな要素で、その分各選手の攻撃への積極性が増していたともいえます。
この姿勢を頭から(6)藤原が入った時に持続できるのか、(6)藤原の個性と融合できるのかが、最終盤を迎えた北九州の新たな課題になるのかもしれません。
※ピッチカメラによる各ゴールシーンを加えておきます。
公式さん、いいですね、コレ!
今回もお読みいただきありがとうございました!
※敬称略
【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。
北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。
鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。