【ファジサポ日誌】24.成長は止まらない~第38節vsベガルタ仙台〜
J1自動昇格圏内を目指して2位の横浜FCとの勝点差は5。
土曜日(9.24)に開催された横浜FCvsV・ファーレン長崎の一戦は、横浜FCが守護神ブローダーセンのアクシデントに見舞われたものの、2-0で完勝。
日曜日の試合となったファジアーノにはよりプレッシャーが掛かる状況となりました。
しかし、そんなプレッシャーとは関係なくスタジアムを包む空気は勢いと若さに溢れていました。
クラブ史上過去最高勝点の更新、過去最高順位に到達している好調ぶり、そしてJ1昇格に手が届こうとしている現状、更にこの日は「高校生無料招待デー」に「高校生ダンスパフォーマンス2022」の実施、学生団体とクラブ(Jリーグ)の連携企画が岡山駅付近の商店街で実施と若者企画が目白押しとなり、スタジアム周辺は大変ポジティブな空気感に包まれていたのでした。
久々のデーゲーム、ベガルタ仙台戦はアクシデントをものともしない岡山の勢いと若者の勢いが勝った試合となりました。
1.仙台の現在地を確認
2.仙台戦 結果&スタートメンバー
3.岡山左サイドの攻防
4.ライン間を攻める
5.終盤まで落ちない前プレ
6.今後の展望
1.仙台の現在地を確認
今シーズンのJ2中盤戦は横浜FC、新潟、そして仙台の3クラブが自動昇格圏(2位以内)を争う構図が続いていましたが、この状況に変化が現れたのが真夏の第31節でした。
ここから第35節まで仙台は突然の5連敗と失速、この間岡山が3位に浮上します。
この要因については本題から逸れますので言及しませんが、仙台関連の記事を読んだところ、選手の状態の悪化(運動量の低下)などが挙げられているようです。
第34節終了後の9.6には原崎政人監督が退任、ジュビロ磐田を退任したばかりの伊藤彰監督の就任が発表され、第35節から指揮を執ります。
伊藤彰監督と言えばJ2観戦者ならご存知のとおり、昨シーズン甲府を3位に引き上げた智将です。
就任初戦の大分戦は0-1で敗れたものの、続く栃木戦は粘り強い戦いで1-0と勝利。前節の徳島戦は前半退場者を出しますが、数的不利な状況で追いつき1-1のドローと勝点の上積みに成功します。
第31節から第34節の4連敗中の失点は8、1試合平均2失点を喫していましたが、伊藤監督就任後の3試合は2失点に抑えています。守備の再整備という面では早くも成果が顕れているといえるでしょう。
その要因は可変システムの採用にあると思います。
攻撃時3-4-2-1から守備時4-4-2の(に近い)ブロックを形成することにより、攻守のメリハリをつけ、そして守備時に相手のパスコースを丁寧に消すことで無用な失点を防ぐサッカーを展開していました。
2.仙台戦 結果&スタートメンバー
実はこの後示します岡山のメンバーも踏まえて1点勝負の接戦と予想していましたが、内容面も含めて予想以上の完勝でした。
① チアゴ、河井陽介の不在
最近は毎試合メンバーに驚かされるのですが、この日もそうでした。
(15)デュークはオーストラリア代表ゲーム(NZ戦)のため不在なのですが、(7)チアゴや(27)河井がメンバー外となりました。
試合前はケガなのか、戦術的理由なのかわからなかったのですが、チームのねらいを徹底してくる木山采配を考慮すれば、守備に絶対に隙を与えないという意思表示にも見え、戦術的理由も否定はできないと考えていました。
結局試合後の木山監督のインタビュー(ファジラボ)によりますと、2人とも「体調が整わなかった」というコンディション面での問題であったようです。
岡山にとって、今シーズン合わせて24得点をマークしている(15)デュークと(7)チアゴの両者の不在は、単純に得点力の低下に繋がるものであり、前述した仙台の守備のスタンスを踏まえても非常に堅い試合になると予想したのです。
② 代表帰りの佐野航大、久々のステファン・ムーク
しかし、帰ってきた人たちもいます。
U-19日本代表(AFC U20アジアカップウズベキスタン2023予選)に召集されていた(22)佐野航大が帰国後初戦でスタメン入りしました。
今回の遠征で(22)佐野は4試合中3試合にボランチとしてフル出場、代表内でレギュラーに近い序列を獲得したようです。
更に再開試合の山形戦以来、約1ヶ月ぶりの登場となった(8)ステファン・ムーク。前線からの献身的なプレスには定評があります。相棒(15)デュークの代表活動によって回ってきたチャンスに燃えるものがあったはずです。
③ どこかで観たこのシステム
この日の岡山の3-4-2-1というシステム、どこかで観た記憶がある…と思った方もいらっしゃったのではないでしょうか?
そうなのです。
コ○ナ禍の緊急事態に見舞われたアウェイ横浜FC戦と同じシステムなのです。試合終了後のDAZNインタビューで、木山監督も横浜FC戦で一度取り組み、手応えを感じていたシステムであることに触れていました。
(7)チアゴの不在は大きなアクシデントでしたが、経験済のシステムを組んだことにより、選手は大きな違和感もなく試合に入れた。この試合のポイントのひとつであったと思います。またこの時の横浜FCも3-4-2-1、細かい仕組みに違いはありますが、仙台の基本システムも同様であった点も幸運でした。
④ 仙台(25)真瀬拓海に警戒
仙台も3-4-2-1なのですが、RWB(25)真瀬拓海のポジショニングが特徴的です。攻撃時にトップやIHの位置まで上がってきます。また右サイドで張っているシーンも多い選手です。
そして左サイドで攻撃を組み立てた際には、大胆にPA内にも侵入してきます。第37節の徳島戦での同点ゴールは彼の特徴が大きく出ていたといえます。
ここは動画でご覧いただいた方がわかりやすいと思います。
更に特徴的なのが昨年J1札幌戦でのゴールです。こちらの方がわかりやすいかもしれませんね。
右サイドで張る選手といえば、大分の(17)井上健太も脅威なのですが、(25)真瀬の場合はPA内での決定力も持ち合わせている点でその脅威度が増します。岡山の(16)河野諒祐も含めて、今シーズンのJ2にはいい右ウィングがたくさんいますね。
そしてもうお気づきかと思いますが、この試合は岡山(22)佐野と仙台(25)真瀬がマッチアップすることになるのです。この試合の大きな見どころであったと思います。
3.岡山左サイド(仙台右サイド)の攻防
岡山LWB(22)佐野と仙台RWB(25)真瀬のマッチアップについては、前半の写真からご覧いただきだいと思います(未熟な写真で恐縮ですが…)。
マッチアップする時間帯が長く続いたのですが、マッチアップそのものはほぼ互角であったと思います。
このマッチアップが続いたことにより(25)真瀬を自由にさせなかった効果は相当なものといえます。
それでも(25)真瀬は前半16分、17分と連続してPA内に侵入し、決定機に絡もうとします。らしさが出た場面でしたが、一方で自身がクロスを上げる場面は、ほぼ無かったと思います。
ここで右サイドに出せばチャンスになるという場面で、仙台の選手がシュートや中へのパスを選択していた点も、岡山としてはラッキーでした。
後半6分岡山の2点目、佐野のゴールが決まった場面では(22)佐野の動き出しに(25)真瀬が若干遅れていることが分かります。ゴールを決められた後に(25)真瀬が頭を抱えていますが、おそらく痛恨の想いであったと思われます。この日、ほぼ互角であったマッチアップに僅かな差が生じた場面でした。その相手の僅かな綻びを決め切ってしまう(22)佐野の成長ぶりを感じた場面でした。この場面は動画がわかりやすいと思います。
4.ライン間を攻める
(22)佐野の2点目もそうなのですが、この試合で岡山は仙台のライン間を上手く攻撃に使えていました。まずは前半40分(8)ムークの先制点のシーンです。
仙台(20)キムがセンターラインを越えた付近から左サイドの(18)氣田にパスもこれがずれ、岡山(16)河野にカットされます。
(16)河野はそのままドリブルで持ち上がりますが、この動きに連動して(14)田中が縦へラン、仙台(20)キムや(8)松下を引きつけます。
更に(38)永井は仙台(5)若狭を引きつけながら徐々にゴール方向へ。
この動きによって仙台の中盤と最終ラインの間に広大なスペースが生まれ、(16)河野はフリーの(8)ムークへパスを出します。(8)ムークも縦にドリブルしながら、マーカーを引き連れながらPA内に侵入した(38)永井へパス、永井からのリターンをゴール左へ突き刺しました。
仙台守備陣は岡山の裏へ抜ける動き、縦への浮き球を警戒していたと思われますが、その裏をかく見事な攻撃でした。(16)河野も(14)田中しかいない縦よりも(8)ムークの持ち上がりにより人数をかけられる左へ出した判断が素晴らしかったです。
これまでの岡山に見られなかった攻撃であったと思います。
先ほど(22)佐野の追加点のシーンを動画で紹介しましたが、この起点となったシーンも仙台ライン間を上手く突きました。
岡山自陣で(23)バイスがボールを持つシーンです。
(5)柳へのパスコースは仙台(18)氣田が切っています。
仙台最終ラインは高いラインを敷いており、裏へのフィードに対してオフサイドをとろうとしているねらいを感じます。
ここで(26)本山がボールを受けに下りてくるのですが、この動きに仙台(35)フォギーニョがついていったことで岡山右サイド側にぽっかりとスペースが出来ました。
(14)田中がこのスペースを察知し、素早くボール受け、裏をとった(16)河野へパス。(16)河野からのクロスを(22)佐野が決めます。
おそらく仙台最終ラインは(23)バイスからの浮き球を警戒していたと思います。そこに意表を突く(14)田中のリンク。ここで勝負ありというシーンでした。
採り上げた2得点とも、岡山の裏へ出すパスを警戒させながら仙台のライン間や中間ポジションに起点を作ることに成功しています。
この日の先制点、2点目は岡山の攻撃の進化形をみたと言っても過言ではないのです。
5.終盤まで落ちない前プレ
こうなれば岡山ペースです。(9)ハン、(44)仙波、(24)成瀬、(19)木村、(11)宮崎智と次々とフレッシュな選手を投入。最後まで前からのプレスを怠りません。
(44)仙波が決めた3点目はいわゆる岡山らしさが詰まった泥臭いゴールでした。最近の出場試合で何度もシュートを試みていた努力が報われた形です。またゴールこそ生まれなかったものの、この日の(38)永井は2トップでやるべき予定のプレスを1人で敢行。それでも決定機での冷静な判断が光りました。ゴールに値する活躍でした。
6.今後の展望
それでも私は、J1昇格に向けてはまだまだ厳しい戦いが続くと思っています。もちろん、自動昇格を諦めてはいませんが、横浜FCの戦いぶりは見事です。
仮にプレーオフに回った場合は、リーグ戦で死闘を繰り広げたクラブとの再戦、そしてその先にJ1・16位との対戦が待っています。清水、湘南、京都、福岡、G大阪、神戸など…。これらのクラブにアウェイで勝ち切らなくてはなりません。
しかし、今の岡山の成長曲線を残り4戦でも描けるのであれば、チャンスはあるのではないかと思えてきました。
まとめ
以上簡単にまとめます。
1.横浜FC戦での経験値を活かした戦い
2.佐野vs真瀬のマッチアップはゴールの差で佐野に軍配
3.相手のライン間や中間ポジションを活かす攻撃
4.前プレに代表される各選手の献身性は変わらない
5.J1昇格に向けてゲーム内容の進化は必須
このリーグ戦最終盤において、岡山の戦いぶりは進化を続けています。
秋のデーゲームとはいえ、非常に暑い一戦となりました。
仙台の選手の動きが、前節の徳島戦と比べ少し鈍く映った一方で岡山は(22)佐野、(14)田中、(26)本山、(44)仙波といったルーキーたちが躍動しました。
若さは岡山の武器なのだと、試合前のスタジアムの様子も含めて実感した一戦でした。
お読みいただきありがとうございました。
※敬称略
【自己紹介】
今シーズンから未熟な内容ながらもレビューを続けております。
ありがたいことに、最近、コメントや反応をいただくことも多くなって参りましたので、少しばかり自己紹介をさせていただきます。
麓一茂(ふもとかずしげ)
40代。社会保険労務士です。
コミュニケーション能力に長けていないにもかかわらず、人の意図、心情、人と人との関連性、組織の決定などを推測しながら、サッカーを広く浅く観ています。
公私において、全体的にこのレビューのような論調、モノの見方、性格だと思います。
1993年のJリーグ開幕でサッカーの虜になり、北九州に住んでいた影響で、一時期はアビスパやサガンをよく観戦していました。
(ギラヴァンツが産声を上げるずっと前の話です。)
ファジはJFL時代からです。
J2昇格がかかったリーグ終盤、佐川急便戦を落とした時の伊藤琢矢選手の涙は未だに印象に残っています。
ずっと何気なく一喜一憂しながら応援していましたが、2018シーズン後半に「なぜファジは点を取れないのか」考えるようになり、ちょっとずつ戦術畑を耕すようになりました。
ミラーレス一眼片手の乗り鉄です。
金沢アウェイに岡山→大垣→東京→上野→水戸→郡山→会津若松→新津→新潟→直江津→泊→富山→金沢という、周囲から不思議がられるルートで入ります。状況が許すようになれば、乗り鉄&away戦のレビューも行いたいです。