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【ファジサポ日誌】140.J1を生きろ!~2025シーズン新体制発表会見より~

明けましておめでとうございます。
本年もファジアーノ岡山(私的)レビュー『ファジサポ日誌』をよろしくお願いいたします。

早速ですが、今回は1月11日(土)15:00から開催されました「ファジアーノ岡山新体制発表会見」の内容を中心に、初のJ1を戦うファジアーノ岡山の展望を簡単に行ってまいりたいと思います。

(何回見てもいい一枚ですよね…)
毎年、新体制発表会見の内容は多岐にわたりますが、筆者は次の2点に注目してみていました。

1.新スタジアム(フットボール専用スタジアム)について
2.今シーズンの戦い方について

もちろん、この2点について直接的な言及が決して多かった訳ではないと思いますが、様々な発言から読み取れる要素は多く、収穫多き会見であったとの感想を持っています。

1.新スタジアム(フットボール専用スタジアム)について

J1昇格決定後の昨年末より、伊原木岡山県知事から言及があったり、県議会でも採り上げられる等、新スタジアムの「構想」が公に認知されるようになりました。

会見の中では森井社長から4年前に製作されたという「スタジアム構想図」が示され、今朝の山陽新聞朝刊でも一面で採り上げられているようです。

こうした行政とクラブの動きは呼応しているものと筆者は捉えています。
コロナの混乱期を経て、クラブがJ1への「再挑戦」に向けて動き出したのがちょうど3~4年前と推測するならば、この時点からJ1昇格後のクラブ長期成長の「礎」としてフットボール専用スタジアムが構想されたと考えるのが自然であるからです。

しかし、皆さまご存知のように、低成長経済、少子高齢社会に突入した今の日本において税金の使い道は厳しく問われるところです。
一般社会から、サッカーという特定のスポーツのための施設新設に多額の税金が使われるという面に特化した批判を受けることは当初から想定されており、県民クラブを標榜するファジアーノ岡山としても一般県民を敵に回したくないとの考えが、ここまで新スタジアム構想の「表明」を控えていた大きな要因であると考えます。

一方で、新スタジアム構想「表明」のGOサインはやはり「J1昇格」であったといえます。
既に現在のスタジアム定員15,500人ではJ1サポーターの観戦機会を確保できない(J1・1試合平均約20,000人)ことは明らかでしたし、J1が集中する大都市から岡山を訪れる旅行客を逃す、岡山の存在を広く全国にアピールするという「機会損失」の観点からも行政や県内経済界に訴求する力は大きいものと感じます。

改めて、昨シーズンのJ1昇格の価値はファジアーノ岡山という一サッカークラブに止まるものではないことが分かります。

森井社長の新スタジアムに関する力強い発言は、まさに「GOサイン」が出たからであると考えます。
そのスタジアムに関してですが、まずはフットボールという「興行」面を強調したものになっていました。
この点については、やはり「日本最高峰のフットボール」を最高な環境で観戦する機会を提供するという、フットボールクラブとしての価値提供が前面に出ており、まずはこの点から一般県民の反応をみるという観測気球的な側面もあるように感じます。

税金を使うという点では、スタジアムの公共的機能(防災拠点としての利用等)についても構想はあるものと推察しますが、この点については行政の守備範囲という側面もありますので、現段階では控えたのではないかと推察します。

よって、一サポーターとしてもまずは専用スタジアムで観戦するサッカーの面白さについて積極的に発信していけば良いのかなと、現段階では考えています。


2.今シーズンの戦い方について

(1)現有戦力のレベルアップは必至

この点については、これまでのJ1昇格クラブの新体制会見では具体的な勝点等の数値目標や「残留」について語られることが多い中、木山監督はあえて目標を設けないと述べました。筆者には、J1のレベルは全然違うと語るその表情は非常に厳しく見えました。

指揮官としてのJ1経験は2020シーズンの仙台以来となりましたが、自ら仰ってたように清水、神戸、G大阪とJ1でのコーチ経験も豊富ですから、リアルにそのレベル差がわかるのでしょうし、オフ期間中は現在のJ1の研究に明け暮れたとも報じられています。
その上での言葉は重いと言わざるを得ません。

一方で、戦うサッカーのコンセプトは変わらないとの発言もありました。
いわゆる「相手コート」でのサッカーをこれからも指向するということです。

昨シーズンの岡山は、シーズン終盤から急激に個々のプレーの質が向上したように見えました。これは主将(7)竹内涼がパスの出し手、受け手の関係性向上に言及したことがきっかけになっていると考えていますが、その完成形がまさにプレーオフの2戦に集約されていたと思います。

この2戦を戦った主力からMF本山遥は神戸へと移籍しましたが、多くの主力の残留に成功したことからも、今シーズンも彼らの更なる、限界に近いまでのレベルアップがJ1残留の必須条件となることでしょう。
そのレベルアップに貢献してくれる、もしくは既存戦力で賄えない部分の補完が今オフの補強であったと理解しています。

質疑応答で、新加入選手に対して、特にJ1経験者にJ1で戦うために必要な要素を質問していましたが、その回答は聴きどころがあるものでした。
MF(8)江坂任は「自信」と回答、この自信を早い段階で得るためにも序盤戦で選手たちが「これなら戦える」という「自信」を持てるかは非常に重要になります。

DF(50)加藤聖は「集中力」と回答。J2長崎から横浜FMへ個人昇格を果たしていただけに自らカテゴリーの違いを感じとっていたのでしょう。説得力があります。ハードワークが大前提となる岡山において、90分+ATを通した集中力維持が大きな課題になる筈です。

DF(2)立田悠吾は昨シーズン柏で厳しい残留争いを経験しており、その発言に注目していましたが、彼は岡山の「強度」は通用すると答えてくれました。数多くのJ1のアタッカーと厳しい局面で対峙してきた彼のコメントだけに説得力があります。
今の岡山にとって「強度」は大きな拠り所になるのかもしれません。
そしてこの発言の裏を返せば、「スピード」や「質」の部分ではまだまだレベルアップの余地があることも示唆しているのかもしれません。

「スピード」と一言で述べても、選手個々のプレースピード、トランジションのスピードと様々な要素があると思いますが、J2と比べると更にボールを持てる時間が少なくなりそうなJ1において、より効率よくボールをゴールへ運ぶ必要は出てくるかもしれません。

山田強化部長はレフティの確保について言及していましたが、昨シーズンと同様の3-4-2-1と仮定して、左WBの(17)末吉のところにレフティの(50)加藤を補強したことからも、切り返しによるニアゾーンのへの進入のみではなく、より素早く左からアーリークロスを上げることで時間を掛けずに攻めようとするチームの指向もみてとれます。

そしてDF(43)鈴木喜丈に頼っていた自陣左からの持ち運びについても、レフティDF(15)工藤孝太を獲得したことで(43)鈴木の補完的な役割を行わせるのと同時に(15)工藤が得意とするフィードによるボール送りも新たにチームの武器に加わるかもしれません。

一方で「質」の部分、特に攻撃に関しては、昨シーズンはチーム不調時も含めてチャンスを数多く作れている割にはゴール数が少ない(48得点・6位以内チームでは最少)という課題も残りました。
この課題を独力で解決できそうなストライカーの確保に至っていない点は、今オフの補強の明確な減点材料にはなると考えます。
FW(9)グレイソンの契約更新は、彼が昨シーズン序盤に魅せてくれたプレーの質を踏まえてもJ1で通用しそうな予感を与えてくれるのですが、外国籍選手枠を余したことからも、もう1人外国籍ストライカーを獲得しても良かったような気はします。

(2)私見 量から質へ

では、ここからは筆者の私見を中心に今シーズンの攻守を考えていきます。
攻守は一体ですので、まず守備から考えていきます。

昨シーズンの岡山の守備は3バックのハイラインが前提にありました。上手くいっている時は相手コートで獲り切れますし、上手くいかない時は最終ライン自体が押し下げられていました。しかし、リトリートで守ることについても長けた選手構成であったことから、上手くいかない時は割り切って引いていた試合も多かったと思います。
よって、案外ハイラインの中央裏を狙われるようなシーンはほとんど無かったと記憶しています。

どちらかといえば、狙われていたのは3バック脇やサイドCBが上がった後の裏のスペースであり、このスペースにボールを送られた時は躊躇なく両サイドCB、状況によっては中央の(18)田上大地が臆せず迎撃し、時間稼ぎをしている間に中央へ他の選手が戻るという守備を行っていました。

バイタルへの進出を許した際も、基本的には相手シューターの近くの選手が体を投げ出し、シュートコースを限定、ブロックを完結することにこだわっていました。

こうした守備陣の頑張りもあり、GK(49)スベンド・ブローダーセンは相手シュートに対して十分な予備動作が行えていた。彼自身の驚異的なセービング能力はもちろんのことですが、チームとして相手に良い状態でシュートを撃たせなかったことが、シーズン最多クリーンシート達成(20試合)に繋がったと考えます。

これがJ1になるとどうなるか?
おそらく今以上に3バック脇を素早く狙われることになりますし、より早いタイミングでシュートを撃ってくる、理不尽なシュートも増えます。

つまり(49)ブローダーセンの予備動作が間に合わない状況でのシュートが増えると予測します。昨シーズンであれば、アウェイ清水戦でカルリーニョス・ジュニオに喫したような失点です。

昨シーズンの岡山の被シュート総数はリーグで5番目に少ない449本でした。しかし、自動昇格した横浜FCとは100本以上の差があります(336本)。一方で、枠内シュート総数では岡山129本に対して、横浜FCは111本とそこまで差はなく、いかに岡山が相手に良い状態でシュートを撃たせていなかったかが伝わってきます。

しかし、前述しましたようにJ1ではシュートの質が上がってきますし、一見不利な状況の相手であっても高い質のシュートを放ってきます。
PO仙台戦のオナイウの決定機の場面のようにニアを切り、シュートをファーに誘導していてもニアに撃ってくるのがJ1です。
被シュート総数を減らす取り組みはレベルアップの上で必要と考えます。

昨シーズンの岡山の自陣での守備が非常に背後のスペースを空けた「迎撃」に頼っていた理由は、当然ですが自陣に人数を掛けられていない時間があったからです。そして、自陣に人数を掛けられない理由は、これも当然ですが敵陣、つまり「相手コート」に人数を割いていたからです。
象徴的なのがサイドCBの(43)鈴木や(4)阿部海大が敵陣深くに自らボールを運ぶ動きであったと思います。この「押し上げ」がWBやボランチのニアサイドへの進入を可能にしていたと思うのですが、この人数をもう少し守備に備えるポジションに割き、相手コートでの戦いを「人数から質」でカバーできないかと考えるのです。

そこで完全な私見なのですが、4バックの導入については検討の価値があるのかなと考えます。開幕まで約5週間と時間がない状況では従来の3-4-2-1を成熟させる方が良いとは思うのですが、敢えてです。

思い切り大胆な配置にしてみたつもりです。
こうした「妄想」が非常に楽しい訳ですが、3バックも含めてもう少し次回は「J1での戦い方」について深めてみたいと思います。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。

昨シーズンは岡山悲願のJ1初昇格のゲームを記すことが出来た。
今シーズンも初のJ1の舞台となる岡山、念願のJ2復帰へ向けて勝負に撃って出る北九州の戦いぶりを追っていく。

日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。

岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われる。
鉄道ファンでもあるが、最近は鉄分不足が続く。

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