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【ファジサポ日誌】144.風 ~ 第2節 横浜FC vs ファジアーノ岡山 マッチレビュー 〜

誤解ないように先にお伝えしますと、敗戦の原因を直接的に強風に求めている訳ではありません。しかし、まだまだ真冬の不安定な気圧配置に伴う強風は、この日の両チームのゲームプランに影響を与え、確実に風を味方にしたホームチームに勝利をもたらしました。

岡山としては久々の敗戦となりましたが、近年勝点を失う時、チームの勢いを止められる時は、風を味方につけられていない時が多いと思います。

サッカーに自然はつきもの、そろそろこうした試合内容からも勝つための方策を学びたいものです。

1.試合結果&メンバー

通算5シーズン目のJ1を戦う横浜FCの目標はJ1残留、そして定着です。そんな決意のシーズン開幕はこの試合を含めて2戦連続のホーム戦、開幕戦が良い試合内容ながらもFC東京に0-1で惜敗、この後2戦がアウェイで横浜F・M、広島と強豪と対戦が続くこと、そして岡山には昨秋ホームで4点を先行される(2-4)というショッキングな敗戦を経験してきたことからも、この試合は何が何でも勝点3を獲りたかった筈なのです。

つまり、シーズンを通してのチームコンセプトよりもこの試合を勝つための対策的な戦いを優先してくる下地はあったものと考えます。

岡山としては、惜しいシュートはあったものの枠内はわずか3本。
こうなると決める、決めないというところに焦点を当てがちなのですが、岡山側のこの試合の論点はそこではないと筆者は考えます。

J1第2節 横浜FC-岡山 メンバー

メンバーです。

岡山は前節京都戦とスタメンは同様、サブもMF(3)藤井海和からMF(23)嵯峨理久への変更があった以外は前節同様です。
昨シーズンの主力、MF(19)岩渕弘人、(17)末吉塁は前節に続きメンバー外となりました。負傷等により離脱している可能性が高いといえます。クラブは2/23になり、J2磐田からMF松本昌也の加入を発表しました。サイド、ボランチ、シャドーとポリバレント性がある選手だけに、彼の活躍を願いながらも、負傷者の状況も気になるところです。

横浜FCは前節FC東京戦からRWB(3)鈴木準弥に代わりLWBにレフティ(48)新保海鈴を入れて、LWBの(8)山根永遠をRWBに回しました。
このようにサイドの選手を利き足側に配置したことからも切り返しのシュート、クロスよりは岡山陣内深い位置からのクロスや早いタイミングでのアーリークロスを入れてくることが予想できます。

2.レビュー

(1)明暗を分けた風向きに応じた振る舞い

前半は岡山が風上、横浜FCが風下に立ちます。

岡山も横浜FCもJ2では堅守が際立っていました。お互いに3-4-2-1の同じシステムを採用している訳ですが、違いは守備の重心にあります。
簡単に述べれば岡山はハイプレスを中心に前方でボールを奪いたいチーム、横浜FCも前から守備をしない訳ではないのですが、どちらかというと後方に引き込んで守る、いわゆるリトリート型の守備を行います。

余談ですが、この試合で決勝ゴールを決めたCF(9)櫻川ソロモンが岡山在籍中にパフォーマンスが低迷した理由は、この両チームの守備の違いがあったと筆者は考えています。

つまり、リトリート型のチームが風下に立つ訳ですから、普段の試合以上に割り切って引いて守る訳です。

逆に岡山は相手が最終ラインからボールを動かして、初めてハイプレスを仕掛けられる訳です。この段階で自分たちの良さを出しにくい状況になっていることが分かります。

岡山と横浜FCは近年ひりつくような渋いゲームを何度もやってきた間柄です。岡山がやられたら困ることをよく知っています。
それは自陣深くに岡山の前線を引き込んで、プレスを掛けられる前に前方に蹴ることで、実際にそれを実行しているシーンも多かったといえます。

試合後の木山監督のインタビューです。風上の前半にゴールへ向かうプレーが不足していたことを指摘しています。このインタビューを少々補足しますと、前線のプレスは割と健闘していたと思います。蹴り上げようとする横浜FC最終ラインをRST(27)木村太哉を中心に粘り強く追い込みCKも度々獲得していました。

では、ゴールへ向かう回数が少なかったとはどういうことなのか?
端的にはサイドに流れるCF(99)ルカオにボールが集まり過ぎたからと考えます。

確かに(99)ルカオは好調ですので、彼にボールを預けたくなるのは分かるのですが、あまりにも単調過ぎたのと、やはり彼はサイドに流れる分、ゴールにダイレクトには向かっていけないという面はあります。
もちろん岡山がサイドからの攻略を今シーズンのテーマとして掲げている影響はあるのですが、少々極端過ぎました。

そうなると中にはLST(8)江坂任などシャドー陣が入ってくる必要があるのですが、そこが昨シーズンこのポジションでプレーしていた(19)岩渕との違いなのか、(8)江坂は中央に入る回数は少なく、常に横浜FCのライン間で浮くようにフリーになっていました。

こうなると、岡山は横浜FCのサイド奥まではボールを運べますが、肝心のボックスには近づけないという状況が生まれる訳です。
(8)江坂があえてこういうポジションを取った理由は、横浜FCのゴール前に人数が掛けられていて堅いため、単純に中に走り込むのみではゴールが生まれる可能性が低いと判断したと推察するのですが、おそらくフリーになっているポジションでボールを受けて中央で時間をつくり、横浜FCの最終ラインを前に引き出そうとしていたのではないかと推察します。

これをやるには、(8)江坂にボールを預けて彼を追い越し、中央に走り込む選手が必要で、残念ながら岡山の後方の選手、ボランチの2人にはそうした意識が少々不足していたようにも見えたのです。
もちろん意識のみの問題ではなく、前方への進路を横浜FCの両ボランチや一列下りたRST(7)鈴木武蔵に封じられていた点も大きく影響していました。

一方、横浜FCは前半30分前後から地上戦を交えながら逆風下を前進することに成功。この前進で目立っていたのはCHの(34)小倉陽太であったと思います。サイドに流れながらミラーゲームにズレをつくろうとする積極的な動きが目立っていました。
岡山は最後をやらさない守備で対応しましたが、後半風上に立つ横浜FCには希望が生まれていたと推測します。

(2)逆風下においては運ぶしかない

当然、逆風下におかれた後半の岡山はますます横浜FCゴールに迫れなくなります。そこで何とかラインを上げようとする訳ですが、その裏を冷静に横浜FCにひっくり返されてしまったのが失点の場面です。

J1第2節 横浜FC-岡山 失点前の場面

動画では各選手の細かい位置までは確認出来ないので、立ち位置の部分はご容赦いただきたいのですが、岡山陣内に攻め込んでいた横浜FCは自陣深くまでボールを戻し、岡山前線のハイプレスを誘発、岡山の最終ラインが上がったところでその裏をロングボールで突いています。
LWB(50)加藤聖の対応が遅れたのは、一度前へ走りかけて戻っているからです。そして(8)山根のクロスも非常にいやらしい浮き球でした。
上空で風の影響を受け、バウンドも不規則となりGK(49)スベンド・ブローダーセンのミスを誘発しました。最終ラインとGKの間、(49)ブローダーセンが最も対応を苦手としている位置といえます。

ここから見えてくることは2つあり、まずは(99)ルカオがGK(21)市川大暉まで追う必要があったのかという点、そして前半に岡山がこういう攻撃をしたかったという点なのです。

この後、岡山は前線を2トップ、(8)江坂をトップ下に置き彼に自由に細工出来る空間を与えました。その策自体は、堅い横浜FCの中央を攻略する上で有効と感じましたが、出来れば前半からこの形にする思い切りも必要であったかもしれません。いずれにしましても逆風下においては、前半の横浜FCのようにもっと地上戦を仕掛けないと2トップまでボールを運べません。

3.まとめ

以上、横浜FC戦を振り返りましたが、岡山が上手くいかない時のよくあるパターンの一つであったと思います。昨シーズンで言えば、アウェイ鹿児島戦(ドローですが)、ホーム秋田戦、アウェイ甲府戦は似ている構造であると思います。
こうした試合を勝つには、もっと自陣から地上戦で運びながら敵陣に進入していくゲームプランが必要で、これに取り組まない限りは数少ないチャンスを決める、決めないといった部分のみで勝敗が決まってしまうのかなと思います。
では、こうした試合をモノに出来ないからJ1を戦えないのかというと、そうでもないと筆者は考えており、その理由として、まずJ1でこうしたサッカーを指向するチームが少ないことが挙げられます。
そういう意味では、語弊を恐れずに述べますならJ1のゲームではなかったということかもしれません。

とはいえ、シーズン終盤に緊張感がある戦いが続くようになると戦術は何でもありになります。チームの更なるレベルアップに期待したいと思います。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。

昨シーズンは岡山悲願のJ1初昇格のゲームを記すことが出来た。
今シーズンも初のJ1の舞台となる岡山、念願のJ2復帰へ向けて勝負に撃って出る北九州の戦いぶりを追っていく。

日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。

岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われる。
鉄道ファンでもあるが、最近は鉄分不足が続く。


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