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【ファジサポ日誌】123.ストレスフルな世界を越えて~第27節 徳島ヴォルティス vs ファジアーノ岡山 マッチレビュー ~

もう次の試合も迫っている木曜日夜ですが、今回は少しばかり作成に時間をいただきました。それは、レビューの内容的な問題というよりも、望んでいる結果がなかなか出ない今のファジアーノ岡山を観るにあたり、サポーターとしての一時の感情で語ることは大きなミスリードに繋がると感じたからです。

おそらくストレスを抱えているのはチーム、サポーター共にであると思います。獲れそうなあと1点がどうしても獲れないというフラストレーションは、昇格出来そうでなかなか昇格出来ないJ1への壁に対してのフラストレーションに転換され、更にはこのクラブの真面目だけれども突き抜き切れない歴史への悔しさや虚しさへと発展してしまうこともあるでしょう。

筆者が最も嫌なのが、誰かのせいにすることです。
選手のせい、監督のせい、フロントのせい、最近は応援のせい、GATE10のせい、筆者のような「ユルイ」サポーターのせいという声を見聞きすることもあります。
このシーズン終盤において、内なる最大の敵は「分断」です。
それではレビュアーの端くれとして筆者が出来ることは何なのか?と考えた時、この徳島戦が「分断」を誘発するような内容の試合であったのかを確認することであると思いました。

今節は何度か試合を見直し、冷静にファジアーノ岡山の今を考えてみました。その「ココロ」はストレスフルを乗り越えることにあります。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

中断明けから3戦連続のドロー、中断前から4戦連続のドローとなりました。前節のレビューでも述べましたが、今月は日程的に有利な岡山においてドローが続くこの結果自体は敗戦に近いものと評価されても仕方ありません。
各種インタビューでは、選手は失点しても最小失点で終わらせることが出来る守備への自信を根拠に2点獲れれば勝てるチームという明確な勝利への目安を口にしていました。
そんな自信を持って臨んだ試合で開始6分で失点、出鼻をくじかれます。その後、時間を空けずに追いついたものの、決定機は徳島の方に多く訪れましたが、何とか2失点目は免れた。そして勝ち越しゴールも奪えなかった。
お互いに消化不良の一戦であったといえます。

順位は敗北に近いイメージとは裏腹に5位に浮上しましたが、2位横浜FCとは勝点差が13に開きました。残り11試合で4勝分以上の差を覆すことは現在の上位2チームの状況を踏まえて、厳しいと言わざるを得ず、実質的にチームはプレーオフ争いのみを戦っていくことになったともいえます。
7位いわきは勝点1差で迫ってきました。

J2第27節 徳島-岡山 メンバー

メンバーです。

負傷により離脱していたメンバーが続々と復帰している岡山は、メンバーを選択できるチーム状況といえます。
今節は(33)神谷優太がRSTで移籍後初先発を飾ります。
一方、右サイドではMF(88)柳貴博がメンバー外、DF(4)阿部海大も2試合連続のメンバー外となりました。
結果的にこの右サイドの人選も少々試合結果に影響したような気がします。

徳島では、CF(16)渡大生が5試合ぶりの先発、2試合ぶりの出場を果たします。前回のホームでの対戦時に2得点を決められています。そしてFW(7)チアゴ・アウベスが3試合ぶりのベンチ入りを果たします。

7月の最優秀監督を受賞した増田功作監督には相手の嫌なことを積極的にやってくるイメージが筆者にはあり、この徳島の人選は明らかに岡山を意識したものであったと思います。

一方、STで攻守に貢献していた(10)杉本太郎は先日負傷離脱、(8)柿谷曜一朗がLSTに、LCHには(54)永木亮太ではなく(20)児玉駿斗が先発しました。
これらの徳島の人選も試合に大きな影響を与えました。

2.レビュー

J2第27節 徳島-岡山 時間帯別攻勢・守勢分布図

まずこの試合での岡山は立ち上がりが非常にまずかったといえます。
失点しても1失点までと堅守を標榜しているチームにあるまじき時間が続いてしまった理由については考える必要がありそうです。
それでも岡山はLST(19)岩渕弘人の同点ゴールに代表されるように、相手のニアゾーンに進入した際には、それなりにチャンスはつくれており、勝つために2点獲るサッカーについては、それなりに説得力もあるところは示していたとように見えました。
一方で徳島と比較すると、決定機の数自体は少なく、今後こうした試合を勝ち切るために、ニアゾーンへの進入回数を増やさなくてはならないという振り返りも理には適っていると感じました。

他にも多くの論点が存在するゲームであったかと思いますが、筆者が述べたい点は上記の2点に絞られます。

(1)後手にまわった立ち上がりを考える

徳島(16)渡の先制点に至る立ち上がりの5分、岡山はいきなり徳島の波状攻撃を受け続ける訳ですが、実はこの間、岡山は徳島のセットプレーも含めて、一度もマイボールに出来ていないのです。
その原因は、端的に前方へのフィードを全く回収出来ていないからであるといえます。実はここに岡山の右サイドの人選が深く絡んでいて、長身(88)柳貴博の不在が大きく影響しているのです。最近の岡山の立ち上がりは、GK(49)スベンド・ブローダーセンからのゴールキックも最終ラインからのロングフィードも右サイドの(88)柳(貴)を目がけて蹴られることが多くなっており、ここで彼が収める、収められなくても相手が弾いたボールがタッチラインを割ることで、相手陣内でマイボールになっていたシーンも多かったと思います。
また、中断明けの2試合はこの(88)柳(貴)と(22)一美のターゲット2枚体勢を敷くことで、岡山はロングボールの的を分散させて、上手く前進に繋げていたのですが、(22)一美の一枚になることで相手CBにしっかりマークされ十分に収めることが出来なくなっていました。
それでも、セカンドを回収出来れば良かったのですが、確実な前進をねらったコントロールショットはボール自体に勢いがなく、難なく相手に跳ね返されます。シャドーの一角(33)神谷のセカンドへの寄せも甘く、岡山ボランチの回収についても、徳島の両STのプレッシャーにより十分に行えていなかったといえます。

(22)一美は空中戦もある程度出来るのですが、いわゆる空中戦が売りの選手ではありません。その強みは足元と考えると、一枚でも十分ターゲットになっていた(9)グレイソンがいた時と同じボール運びは避けなければならなかったのです。

実は失点後の岡山は、後方から中盤まで細かく繋いだ上で前線にフィードする場面が増えており、ゲーム中にある程度修正が出来たからこそ、この序盤のボール運びのミスジャッジは痛かったものといえます。

失点シーンそのものは、(8)柿谷からのスローインが少々意外性もあり、虚を突かれたことは間違いなく、クロスを許したCB(18)田上大地の対応もGKの前のスペースへのコースを消しており、これはこれまでの失点傾向を踏まえたものとの推測もできます。
どちらかと言えば、マイナスのクロスに対するLWB(17)末吉塁らの絞りも遅れていたといえるのですが、これも(8)柿谷のスローインに虚を突かれていた影響もあったと考えると、やはりこの失点シーンに至るまでの流れを大いに反省するべきと考えるのです。

徳島としては、先発起用した(16)渡や(8)柿谷が計算どおりに働いたことから最高の立ち上がりであったといえます。真夏の一戦であり、他のカードをみると流れを掴んだチームが一気に複数得点を決める試合もありました。この時点の徳島にはそんなチームの空気が充満していましたが、やはりそこは岡山の最後をやらさない守備には底力があるのだと思います。
この夏場においても岡山の試合がロースコアで推移する理由といえます。

90分ある試合の中で、なぜこれだけ序盤について述べるのか?
それは今週の大分、そして来週の山口、共に直近の試合で序盤の得点に成功しているからです。
おそらく、今後も岡山の立ち上がりは狙われます。授業料はもう払う時期ではありませんが、それでも高い授業料を払ったと思って試合の入りについてはもう一度締め直してほしいです。

(2)ニアゾーンへの「使い方」には一定の進捗が

先週の岡山が、攻撃のチームコンセプトともいえる「ニアゾーン」の攻略に心血を注いでいたのは練習を見学した方、練習記事を読まれた方はご存知のはずです。
この試合の岡山は得点には繋がらなかったものの、何度か有効な形でニアゾーンへの進入に成功しており、ニアゾーンからの最後の崩しについてもLST(19)岩渕弘人を中心に得点に繋がりそうなアイデアはよく示されていたと思います。
ボックス内での崩しが単調であった一時期と比べると進捗がみられていたと思います。

一方で、この(19)岩渕の同点ゴールは直接ニアゾーンへの進入により生まれたものではありませんでしたが、その派生形であったといえそうです。

J2第27節 徳島-岡山 16分(19)岩渕の同点ゴール

岡山CKからの二次攻撃でした。
クロッサーのLCB(43)鈴木喜丈からのクロスの質、直前に自身へのクロスを手で合図している(19)岩渕とのコンビネーションも見事でした。
そして、それぞれをマークしていた徳島(8)柿谷とLST(9)ブラウンノア賢信の寄せの甘さもあったと思いましたが、まずこの場面では彼らに徳島のCB陣をつかせていなかった点が大きかったと思いました。
徳島のCB陣は中央ゴール前のスペースを埋め、ファーにいた(22)一美を二人がかりでマークしているのです。

直近3試合の岡山のPA内進入傾向です。
クロスは左右共に中央~ファーサイドが中心になっています。
選手起用でもしっかり相手をみてくる徳島のことですから、こうした傾向を見逃している筈がありません。徳島CB陣は中央からファーを固めているのです。よってニアは守備対応が得意ではない選手が担当する状況が生まれています。

そして、徳島のニアゾーンへ対応も分厚いものがあります。このクロスを上げる直前に(33)神谷がボックスに走り込み徳島RWB(18)エウシーニョを引きつけている点もポイントです。
もちろんセットプレーからの攻撃であり、単に空いているスペースを埋めていただけとも取れますが、この警戒ぶりを考えると、徳島はある程度岡山のニアゾーン進入を警戒していたのではないかと推測します。

こうした意味でこのゴールは岡山としてもニアゾーン攻略の裏を掻いた意識されたものともいえます。
そして、このゴールの元となったセットプレーも(17)末吉のニアゾーン進入から生まれたものであり、ニアゾーン進入の目的はボックス内で崩し切ることのみではなく、数多くのセットプレーを生み出すことにあるのです。
そして(33)神谷が徳島GK(21)田中颯が十分に弾き切れないボールを供給したことで、岡山の二次攻撃が生まれたともいえるのです。

(3)更にニアゾーンを巧く使うために

では、チームとして2点目を奪うために出来ることはまだないのか?と考えた時に、枠内へのミドルシュートを増やすことは重要と考えます。
枠内へというのが重要で、つまり相手CBに脅威を与え、前に引き出すことがその目的となるのです。こうすることで相手CBとGKの間にスペースも出来ますし、そこから更にニアゾーンを経由するなどのボックス内の崩しが可能となります。

思い出せば佐野航大が在籍していた昨シーズンは、他の面で上手くいかないことはありましたが、彼がミドルを撃つことでゴール前に坂本一彩が細工できるスペースが出来ていた記憶もあります。

そこで必要となってくるのが、最近何度も書いていますが(39)早川隼平の存在です。彼のミドルシュートであれば、もちろん直接決め切ることも出来ますし、彼がミドルを撃つことでボックス内にスペースが出来る、そしてセットプレーの精度も上がってきます。

この試合では(33)神谷のキックの精度が目を惹きましたが、一方で前述しましたように守備の強度という面では弱点も露呈しました。
(33)神谷の起用法の難しさという課題は残りましたが、改めて(39)早川に期待したいと思います。

3.まとめ

以上、簡単でしたが徳島戦をまとめと申しますか、今回は論点を抽出してお伝えしました。お読みいただいていかがでしたでしょうか?
今の岡山の課題は精神論の問題でしょうか?
違いますよね。
実は遊び心とかの問題でもない、レビューを作成していてそのように思いました。
閉塞感はどうでしょうか?ゴールを得るため方策が手詰まりなのでしょうか?それも違います。

やはり、今はリーグ最終盤に勢いを得るためのプロセスにあると筆者は感じました。そして、その勢いを選手の個の力のみではなく、サッカーの仕組みで打破しようとしているファジアーノ岡山の姿があります。

勝手に諦める理屈などどこにもないのです!

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

※一部敬称略

【自己紹介】雉球応援人(きじたまおうえんびと)
地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。

レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。
鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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