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【向日葵は枯れていない!】33.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~第33節 vs FC大阪 ~

まるで闇を抜けたかのような逆転劇であったが、そこは6ポイントマッチ、相手も懸命であった。一度手繰り寄せた勝利は残り10分スルスルと北九州の掌からこぼれ落ちた。

振り返ります。

(※カバー写真はnoteにおいて使用可能とされているものをお借りしています。)

1.試合結果&メンバー

4位FC大阪とは勝点48で並ぶ状況、まさに6ポイントマッチでした。
過去3回の対戦は全てスコアレスドローでしたが、この試合に臨んだ両チームからは積極的にスコアを動かそうとする勝負へのこだわりをみることが出来ました。結果的にFC大阪のサッカーと呼べる試合内容になってしまいましたが、2-3というスコアは両チームの奮闘の爪痕であったと感じました。
今日(10/20)の試合結果によっては、北九州はプレーオフ圏内から転落する可能性もありますが、やはりこの試合で出来たこと、出来なかったことをもう一度整理して次節金沢戦に備えてほしいと思います。

メンバーです。

J3第33節 FC大阪-北九州 メンバー

北九州には大きな変動がありました。

今シーズン31試合に出場、守備の大黒柱であるCB(50)杉山耕二、そしてLSHのレギュラー(21)牛之濱拓が揃ってメンバー外となりました。増本監督の試合後のコメントからは、何らかのアクシデントがあったことが示唆されています。具体的な内容は不明ですが、状態によっては残り試合の戦いにも影響を及ぼす可能性もあります。

また、CBの控え一番手といえる(4)長谷川光基もメンバー外となり、ベンチには久々に(3)伊東進之輔が入りました。長身CBですが、今シーズンはRSBにも挑戦中の選手です。

スタメンではリーグ戦10試合ぶり(7/27琉球戦以来)の登場となったレフティ(24)前田紘基がLCBに入ります。

北九州は(23)坂本翔、(13)工藤孝太、(24)前田の3枚で最終ラインを形成、中盤は流動的でしたが(6)藤原健介を頂点に(34)高吉正真、(14)井澤春輝をIHのような立ち位置に両WBの5枚、トップは(29)高昇辰と(10)永井龍の2枚という3-5-2を形成します。

一方、FC大阪は今シーズン全試合に出場していたRSB(2)美馬和也が出場停止。代わりに今夏加入した(44)フォファナ・マリックが初先発しました。尚志高校3年時には日本高校選抜にも選出されたことがあります。
昨シーズンから今シーズン途中までの2年間はJFLのティアモ枚方でプレーしていました。

2.レビュー

(1)アクシデントと対策の狭間で

増本監督の試合後のコメントとDAZN中継内で紹介された情報を総合しますと、北九州はメンバー編成に苦心しながらも3バックでこの試合に臨む計画は予めあったものと推測されます。
FC大阪対策として監督が参考にしたのが、第25節の鳥取-FC大阪(2-1)であったとのことです。
この試合の鳥取は3-4-2-1を採用していました。
FC大阪の2トップを中心としたハイプレスを3バックの数的優位をもって掻い潜り、前線の普光院誠やボランチの高柳郁弥らが最終ラインからのパスを引き出し、FC大阪最終ラインの裏を狙い序盤から決定機をつくっていました。
北九州の布陣からは、こうした攻守の意図がみえていました。
ハイプレスに対しては、3枚のCBで落ち着いてパスを回しながらいなし、中盤中央の(6)藤原へ。彼がパスの引き出し役になっていたと思います。
また中盤の底を3枚にしたのは、FC大阪のもう一つの特長であるロングボールを跳ね返した後のセカンド回収に人数を割きたい意図があったものと思われます。
ある程度、北九州のねらいは前半から達成されていたようにみえました。
しかし、誤算であったのはマイボールになってからであったと思います。
自陣からの持ち運びの部分でショートパス、縦の楔が共に走らないことでFC大阪に引っ掛けられるシーンがかなり出ていたように感じました。
これは北九州のパス精度の低さという問題もあったと思いますが、折からの雨と花園のピッチの特性も影響していたと思います。
北九州は初スタメン(44)フォファナの左サイドを攻める意図も持っていたようでした。3CBの一角に長身の(33)乾貴哉ではなく、(24)前田を起用した意図は、(33)乾の守備対応との比較という点のみではなく、彼が持つ左からの推進力を維持したい意図があったからと思われます。
しかし、この左サイドへのフィードも全体的には質を欠きます。18分には左サイドから前線に進出した(33)乾がシュートを放ちますが、このサイドからの決定機はこれぐらいで、北九州の意図を察知したFC大阪はチーム内で最も推進力に秀でるRSH(10)久保吏久斗が一時的に左サイド(北九州右サイド)へとポジションチェンジし起点を作り直します。
これは北九州の攻撃のねらいを外すのと同時に、北九州RWB(17)岡野凛平の守備対応を突きたい意図もあったように感じられました。
(17)岡野は前節の八戸戦での対人守備が上手くいってなかったのですが、この試合に関しては右サイドでのプレーということもあり、FC大阪の揺さぶりにも冷静に対処出来ていたように見えました。

いずれのペースであったかというと、FC大阪のペースなのですが、FC大阪のサッカーの場合、シンプルに前へボールを運ぶ、押し込む、ハイプレス、敵にボールが渡ったら強く体を当てると、この繰り返しになりますので、地上戦を指向するチームは自ずと自らのペースにはなりません。そこは北九州も許容出来ていたように思います。
また、FC大阪は積極的にシュートも撃ってきますが、全体的に精度を欠きましたし、北九州最終ラインもシュートコースを限定出来ていたと思います。FC大阪との試合では、大体対戦相手はこういう感じの試合になるのだろうとは思います。ですので、前半をイーブンで終えていれば北九州としてはゲームプランどおりであったと思われます。

ですので、最も獲られてはいけない時間での失点は痛かったですね。
セットプレーからのゴールが多いFC大阪ですが、CKから直接というよりは二次、三次と何度もクロスを上げて決め切ることに特長があります。
この得点シーンでもクロスを気持ちよく上げられているので、北九州としては少し寄せが甘かった点は否めないという印象は残りました。

FC大阪が先制した試合の成績は11勝3分1敗、勝率73.3%を誇ります。この段階で北九州には空模様と同じく暗雲が立ち込めたといえます。

(2)未来は自分たちで変える

注目された後半立ち上がりの北九州でしたが、マイボールをしっかり前線の(10)永井、(29)高昇辰につけることを徹底する様子が伝わってきました。おそらく前半から荒いファールが目立ったFC大阪からファールを受けようというねらいが明確に出ていたと思います。
北九州ボックス手前でのFC大阪の横パスをカット、カウンターに入った北九州でしたが、一気にスピードで競り落とすというよりは、前線2人の状況をみながら縦につけた点からも、こうしたチームの意図が伝わってきました。

(6)藤原のFKに関しては、これぐらいのコースであればイージーに決めてきますね。「美しさ」すら感じる同点ゴールでした。

後半開始早々に生まれた同点ゴールは、シックスポイントマッチにおいてFC大阪の最終ラインを前に引き出したという点で大きな意義を持ちました。

前半は十分に突けていなかったFC大阪右サイドのコンビネーションの隙を突いてボールを奪い、左サイドへと駆け出した(29)高昇辰が運び出す。
そして、間髪入れない左足からの横へのフィード、これも芸術品級であったと思います。
そして(10)永井も左へと相手DFを振り切り、GK(1)永井建成を引き出してシュートコースをつくり流し込む、見事な駆け引きであったと思います。

この後半の北九州の2得点はいずれもFC大阪の傾向や前への圧力を逆手にとって奪ったものといえ、苦しい編成で試合に臨んだチームの振る舞いとしては満点であったと筆者は考えます。

逞しいチームになったと思ったのですが、強いていうなら早めに逆転してしまったことが北九州にとって仇となったのです。

(3)裏目に出た選手交代

正直なところ、北九州の選手交代が試合の流れを変えてしまったとは思いました。76分、北九州は(10)永井に代えてCF(18)渡邉颯太、(6)藤原に代えてCH(11)喜山康平を投入します。

(10)永井の交代は時間帯からしても既定のものと考えられるのですが、同時に(6)藤原を下げたのは、彼が3試合ぶりの先発出場であったことを踏まえても少々早過ぎた印象が残りました。前半からかなり削られていましたので、負傷リスクを避けたいという考えもあったのかなとは思います。
しかし、この2人が一度にいなくなったことで北九州にはボールの引き受け先がなくなってしまいました。

それでも(29)高昇辰が残っている間は前にポイントをつくれていたのですが、その彼も83分にMF(7)平原隆暉に交代。前でポイントをつくれなくなった北九州はいよいよ、押し込まれ続けることになります。

またこの最終盤、FC大阪はボックス内へのクロスを長身の(13)工藤を避けた両サイド(23)坂本や(24)前田を狙って供給しており、そのギャップから押し込もうとする意図は明確でした。
北九州は試合最終盤にCB不足の影響を大きく受けることになります。
ベンチでは(3)伊東投入の準備も進めていましたが、間に合いませんでした。各選手、頑張って跳ね返してはいましたが、例えば(33)乾と(24)前田の位置を明確に入れ替えるといった工夫の余地はまだあったのかなと感じる部分もありました。

正直なところ、このままではやられてしまうという危機感は画面を通しても伝わってきましたので、本当に残念です。

逆にFC大阪は、大嶽監督が自分たちのサッカーを続けることへのこだわりを選手たちに述べていたようです。その執念が実を結んだ勝利であったと思います。

過去3戦、スコアレスドローであったカードが一転して5ゴールの撃ちあいになった。これが昇格争いなのですよね。

3.まとめ

以上、筆者もかなり堪えましたFC大阪戦を振り返りました。

(50)杉山、(4)長谷川、(21)牛之濱、そして彼らが不在の場合、序列的にベンチに入りそうな選手の何人かが一度に不在になったことから、何となく事態の内容について憶測したくなる面もあるのですが、これ以上の言及は避けます。こればかりは分かりませんし、彼らが早期に戻ってくれることを祈るばかりです。

苦しい状況での6ポイントマッチでしたが、増本監督をはじめチームは対策も施していましたし、逆転するところまではいい戦い方が出来ていたと思います。FC大阪相手に一時のこととはいえ、逆転出来たという点は自信にしていくべきと考えます。やはり地力は持っているチームです。

一方でその地力が(10)永井、(6)藤原、(29)高昇辰、そしてGK(27)田中悠也らの力量によったものであるという点も、改めて浮き彫りになってしまいました。監督の采配からは、勝ちながら育てるという意図もみえてくることがあり、この点が今の北九州の立ち位置の難しさも表しているようにも思えます。また、監督自身もこれまで経験したことがない試合展開やチーム状況と対峙しているようにもみえます。

今シーズンのJ3は長いです。これから毎シーズンそうなのですが、あと5試合もリーグ戦が続きます。

来シーズンの契約等、選手にとっては難しい時期にも差し掛かっているかと思いますが、この状況で一体になれるチームが真に強いチームであり、北九州はそんなチームになることをまだ諦めてはならない立ち位置であると考えます。

粘ってほしいですね。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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