【向日葵は枯れていない!】34.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~第34節 vs ツエーゲン金沢 ~
9月以降苦境から抜け出せそうで抜け出せない北九州、11戦未勝利が続く金沢、お互いにプレーオフ進出の可能性は残すものの停滞から抜け出すきっかけを掴むのはどちらなのか?
両チームにとって大きな意味を持つゲームでした。
振り返ります。
1.試合結果&メンバー
後半、北九州はLSB(33)乾貴哉の今シーズン初ゴールで先制も、その後金沢にサイドを抉られ2失点。2試合続けての逆転負け、北九州は今シーズン2度目の3連敗を喫してしまいました。
順位は8位に後退。プレーオフ圏とは勝点1差と僅差ではありますが、今日の他会場の結果によっては更に順位を下げる可能性があります。
寂しい言葉と数字を並べてしまいましたが、チームは明らかに退潮傾向に入ってしまっているといえます。
メンバーです。
北九州は不動のCH(34)高吉正真が累積による出場停止、ダブルボランチの一角には久々にベテラン(11)喜山康平が先発します。
前線の並びはLSHに(29)高昇辰が回り、(17)岡野凛平がRSHを務めます。(17)岡野の守備負担を考慮した配置と考えられます。
トップ下には(6)藤原健介が入りました。
前節欠場組の中ではCB(50)杉山耕二が戻ってきました。一方でMF(21)牛之濱拓は前節に続き欠場しました。
GKは前節FC大阪戦でハイボールの処理に不安をみせた(31)大谷幸輝に代わり(1)伊藤剛が先発します。
金沢は3-4-2-1、守備時には5-4-1のブロックを組みます。CH(8)大山啓輔が8試合ぶりの出場を果たしました。
2.レビュー
北九州は金沢の3バックに対して、前線の4枚が金沢のボランチを消しながらプレス、中を締めて外へ誘導します。金沢も中へつけるボールを最初から捨てている訳ではありませんが、ビルドアップで無理をすることはなく、右サイドに出した際にRSB(14)石原崇兆がドリブルで前進、RST(6)梶浦勇輝と内外でパス交換、北九州を剥がした際には比較的チャンスになっていたと思います。
一方、北九州は金沢のハイプレスを引き込みながら金沢の陣形を間延びさせて前線へフィード、CF(10)永井龍、LSH(29)高昇辰へ当てるボールを増やし、セカンドの回収によりチャンスをつくろうとしていました。
しかし、金沢は攻撃の最終局面が淡白であり、北九州はねらい程にはセカンド回収が上手くいってなかったように見えました。
金沢はリーグ序盤戦ではRSBが最前線に飛び出してくるような伊藤監督ならではの可変も採り入れていましたが、戦術の浸透に時間がかかったせいか、リーグ中盤戦では徐々にシンプルなシステムに修正していきました。
戦術をシンプルに修正する過程において、得点力の維持に個の力量も必要になり岐阜から主力のCF(71)田口裕也を獲得した訳ですが、今節まではまだ本領発揮に至っていなかったのです。
北九州は特に速攻に入った際とサイドに起点をつくろうとした際に、ボールの収まり先である(10)永井や(6)藤原をファールで止められるシーンが続出、攻撃の流れを止められ、なかなかチャンスをつくれていませんでした。
(34)高吉の代役で入った(11)喜山は相方CH(14)井澤春輝との距離感を大事にしながら、攻守のリンクになろうとしていましたが、攻撃面ではそこまで有効的なパスを出すことが出来ていなかったようにみえました。また「BOXtоBOX」を身上とする(34)高吉と比べると縦への運動量は少なく、セカンドを回収できない一因になっていたと思います。
プレースタイルの違いもあり、仕方ない面もありますが、裏を返せばそれだけ(34)高吉が代えの効かない戦力へと成長しているということなのでしょう。
更にデキの見極めが難しいと感じたのが(6)藤原です。
そのプレースキックからは相変わらず得点の香りがするのですが、(10)永井がボックス前で金沢守備陣3人に囲まれるという徹底的なマークに遭う中、あまりそのサポートにいけていませんでした。
基本的な配置はトップ下ですので、より高い位置で攻撃に絡んでいくという点、そして前線からのプレスにも期待がかかったのですが、プレスに関しても他の前線の選手と比べると甘さが目立ちました。
立ち位置自体が2CHのサポートに寄っている時間も長く、黒髪にしたせいではないでしょうが、今まで見てきた(6)藤原の荒々しさが消えていた点が少々気になりました。
これが戦術的な理由によるものなのか、藤原の自由な判断によるものなのか、少々読みづらい点は感じられました。
北九州、金沢、お互いに可もなく不可もなくといった前半であったと思います。
後半、立ち上がりの5分間を勢いをもって入った北九州でしたが、50分過ぎから全体的にトランジションが鈍り始めていたように見えました。
バテるには少し早すぎると感じ始めた中で、北九州の先制ゴールが生まれます。やはり(6)藤原と(10)永井の距離が近いとチャンスが生まれると改めて思いました。
リスタートからRSB(23)坂本翔が中央の(10)永井へ。ここで(6)藤原が(10)永井を追い抜こうとする走りをみせていたことが大きかったと思います。右のヒールで(6)藤原に出したことで、金沢CB(38)山本義道を(6)藤原に引きつけることに成功、右サイドは2対1で北九州の数的優位になっています。
ここで(6)藤原が(10)永井に返すのではなく、前方のスペースに出して(17)岡野を走らせたことで、金沢の守備網を混乱に陥れました。
(17)岡野のクロスに対して、ファーにしっかり(29)高昇辰が走り、左から走り込んだ(33)乾がコントロール抜群のシュートを決める。
北九州攻撃陣がお互いを感じ合っていたゴールであったと思います。
(33)乾はJ3・100試合目の節目で今シーズン初ゴール。今シーズンも同角度から何度もシュートを撃っていた成果であったと思います。
ゴールが決まった時のクロスを出した(17)岡野の喜びようを観ましても、まだまだこのチームは死んでいないと思いました。
しかし、北九州の全体的なトランジションの鈍さ、運動量の低下といった状況自体は変わることはなく、金沢は60分からCH(18)熊谷アンドリュー、RST(30)大谷駿斗を投入した影響もあり、やはり試合は金沢ペースへと進んでいくのです。
金沢は(71)田口がクロスに合わせる場面も出てきて、少しずつゴールの気配が漂ってきます。
北九州は両SBも中を固めますが、その分サイドに広いスペースが出来ます。北九州の両SHは懸命にそのスペースを埋めようと奔走しますが、間に合わなかった。それが金沢の同点弾でした。
ここまでサイドをWBとシャドーで丁寧に崩していた金沢でしたが、ここはLWB(2)長峰祐斗が間髪入れずに矢のようなクロスを入れます。(17)岡野の対応も間に合いませんでした。(71)田口に(50)杉山の前で触られてしまいましたが、北九州としてはこれまでの崩しと比べると緩急をつけられた面はあり、筆者は金沢を褒めるべきゴールであったと考えます。
しかし、新エース(71)田口に待望のゴールが生まれたことから、ムードは一気に金沢へと傾きますが、北九州はここで選手交代によってもう一度流れを引き寄せようとします。
81分、(10)永井に代えてCF(18)渡邉颯太、(11)喜山に代えてMF(20)矢田旭が入ります。残り時間も限られる中、この2人の力も加えて、劣勢ながらも2度の決定機をつくった点は北九州にとっては明るい材料です。
勝負を決めるという点では(18)渡邉が2度の決定機とも枠内に飛ばせなかった点は今後の大きな課題にはなりますが、これは実戦で数をこなしていくことでしか精度を上げる術はないと思います。
金沢と比べると交代が遅くなった点は否めないのですが、おそらく増本監督としては、オープンな展開になるまで待っていたというフシはありました。
裏を返せば、そのような展開にならないと交代選手が十分に通用しないという評価なのかもしれません。
(18)渡邉に関しては、というよりサブの若手全般に言えることかもしれませんが、自力で試合の流れを変えられる選手との評価、信頼を勝ち得ることが彼らにとっては必要です。
結果的に決められないと決められてしまう。サッカーとは時に残酷なものです。
右サイドにポイントをつくられ左右に振られてという形ですが、北九州の選手たちはこの段階ではそもそも走れていませんでした。体力的な限界が近づいていたということかもしれません。
3.まとめ
今節は後から視聴したのですが、ちょっと辛い試合になってしまいました。
出続けている選手については、体力的に相当厳しくなっていることもわかり、この疲労が回復しない限り明るい展望が描きにくい面はあります。
しかし、選手たちはゴールシーンも含めて随所で奮闘を披露してくれました。レビュー中でも書きましたが、まだこのチームは死んではいないと思います。
向日葵は夏までの花?
いいや秋にも咲く向日葵をみせてもらいましょう。
まだ諦めていません。
今回もお読みいただきありがとうございました!
※敬称略
【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。
北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。
鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。