辞めたいのに辞められなかった剣道①
小学1年の頃、集団登校の時によく俺の事を気にかけてくれた6年生の先輩がいた
登校の際に、体力が追い付かずに歩みが遅れてみんなに抜かされていく俺を気遣って後ろまで来てくれたり
出発時刻までの待ち時間中に話したり遊んでくれたりと、とても親しみやすい人だった
あるとき、その彼が
俺、剣道やってるんだけど(俺の名前)も入らないか?
と誘って来た
好きな先輩との交流の時間が増えると思い、二つ返事で「入る!」と返し、親に話した結果そのまま了承されて剣道を始めてしまった
これが長い苦しみの始まりになるとは、当時の自分は知る由もなかった
1年目は、体育館の片隅で私服のまま竹刀を振り回すだけと言う非常に軽い練習内容で、1年生同士で遊んでしまう子も居た
自分もその輪に入って遊んでしまっていた
結局、剣道というものに興味はなく、先輩と接する時間を伸ばしたかっただけだったものが、いざ、稽古が始まると先輩とは一緒に練習できないのだからそうなってしまったのだ
それでも練習が始まる前後はその先輩と一緒に居られたので1年目は良かったのだが問題はその翌年以後だった
憧れの先輩が卒業と同時に遠隔地へと転校してしまったのだ
それと同時に辞めたかったのだが「辞める」と親に言っても
先輩がいなくなって駄々をこねているだけだと思われたのか辞めさせて貰えなかった
実際そうだったのだが
「アンタ遊ぶために剣道始めたの?」
と凄まれた瞬間
「そうだ」と返すことが出来ずに首を横に振ってしまった
「そうだ」と言えば雷が落ちると思ってしまったのだ
結局2年目も続けたのだが練習に身が入らず、当時仲の良かった友達と遊ぶ事がまだまだ多かった
そのうち、自分よりも後から剣道を始めた子がどんどん技量を上げていき、その子達だけが練習量も増やされたのだが、それを見た母親に火が付いてしまった
「アンタねえ、後から始めた〇〇君に抜かされて恥ずかしくないの?」
「アンタまた△△君と遊んでたでしょ! そんなんだから〇〇君に抜かされんのよ!」
などと練習の帰りに毎度言われた
言ってることは正しいのだがそこまで罵るんだったら辞めさせてくれれば良かったのに
結局その翌年にはその仲良く遊んでいた友達も辞めてしまった
3・4年目、辞めさせてくれないだろうと言う諦めもあったが
当時は友達同士で遊ぶ機会に恵まれなかったため(大戦犯お婆様のご活躍により)
剣道に通うことが他の友達とも触れあえるいい機会だと認識するようになっていた
この頃からは他の同世代と同じく防具を身に付け、同じ練習をするようになり、対外試合にも参加させられるようにもなった
しかし、試合に出ても全くと言って良いほど勝てなかった
体格も小さく、持久力もなかったせいだった
引率の先生には当然叱責されるがそれだけでは留まらず
母親からの叱責まで待っていた
試合があった日の夜は母親からその日の対戦相手と試合内容について聞かれ、粗探しされ「なんでその時こうしなかったの!」などとケチをつけられた
大体は夕食の時に母親から質問責めに遭っていたが、あまりに根掘り葉掘り聞くその姿を見かねて祖父が
「疲れて帰って来てんだから飯くらいゆっくり食わせてやったらいいじゃないか」
と助け船を出してくれた。(全くその通りだと思う)
だが、それでその場は質問責めがなくなるのだがその後の入浴中~就寝前のタイミングで続きを話すことを強制された
「なに話さないで済むと思ってんの。ほら、話の続きは?」
と、祖父の目の届かない場所で催促された
こんな感じだったのでまた嫌気が差して来たので4年目の中ごろ
再び剣道を辞めたいと母親に掛け合った
「試合に出ても勝てないし自分は剣道向いてないから辞めたい」と
いつ雷が落ちるかもしれないという恐怖と戦いながら伝えていったが
「勝てないから辞めたいは違くない?」
と、よく分からない返しに始まり
「勝つ以外にも続けることに意味がある」
だとか
「せっかくここまで続けてきたのに」
そして
「勝ちたいんだったらもっと筋トレや練習の努力をしろ」
と引き留められた
この経験から
親は子供の声に耳を傾けない存在だ
と認識するようになり
さらには愚かにも
『一度始めたことを途中で辞めてしまうのは悪いこと』
とも認識するようになってしまった
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