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ランキングを通し偉人の意外な一面を知る『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』
はじめに
木曜はラノベ愛語り…ですが、今回はラノベではなく、私の推し作家さんである真山知幸先生の新刊を紹介します。
さっそく感想を
今回紹介するのは、さくら舎『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』です。著者は、もちろん真山知幸先生。
書名から分かる通り、これは日本史に登場する様々な有名人をランキングで紹介する本です。と言っても、「戦国最強」とか「幕末人斬り」みたいな、割と有りがちなランキングではありません。「実家が太い」や「性格に難あり」、「FIFA蹴鞠ランキング」、「忘れ物がヤバい」、「料理上手」、「満員電車に耐えられなさそう」等々、「はぁ? 何ですか、そのランキングは?」と言いたくなる様なランキングがズラリと並んでいます。
しかも、そこに登場する有名人が意外な人だったりします。例えば、「都会っ子」ランキング…1位から3位まで、誰だか分かりますか?
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・ (ちょっと考えてみてください)
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1位・源頼朝(ミナモトノヨリトモ)、2位・西行(サイギョウ)、3位・永井荷風(ナガイカフウ)です。「永井荷風は何となく分からないでもないけど、西行なんて出家して隠遁生活してたのに何で? あと、頼朝は鎌倉幕府を開いて都を築いたからですか?」と考えた方が、割と多いのではないでしょうか。
しかし、本書を読めば分かります。「へぇ~、頼朝がモテたのは聞いた事があるけど、それは、こんな感じで都会風を吹かせていたからなんだ」とか、「西行って隠遁生活していたと思ってたけど、案外、我慢できない性格だったんだ」などと感じる事でしょう。
そう、この本を読む事で、日本史に登場する様々な有名人の、一般には知られざる一面を知る事が出来ます。
そう言う点では、この本、令和6年の夏頃に出た『実はすごかった!? 嫌われ偉人伝』と似ています。
『実はすごかった!? 嫌われ偉人伝』は個人そのものにスポットを当て、少し深掘りな感じで書かれている本です。それに対し、『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』は意外な個性にスポットを当て、広く浅く紹介している本だと言えます。共に、広く知られた日本史上の有名人の知られざる側面や、新しい研究で分かってきた部分を知る事の出来る本ですが、広く浅い分だけ『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』の方が、取っつきやすいかもしれません。
『実はすごかった!? 嫌われ偉人伝』の感想でも書きましたが、ついつい我々は、先入観をもって出来事や人物を見てしまう事があります。その結果、時には決めつけてしまう事も少なくありません。
でも、出来事にしても人物にしても、そんなに単純なものではありません。思っている以上に、多面性をもっている事が多いのです。
『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』を読み、日本史上の有名人の意外な一面を知る事は、「へぇ~、この人って、こんな面もあったんだ」と感じる事に繋がるのではないかと思います。そして、それは、出来事や人物を一面的に見て理解するのではなく、多面的に見る事に繋がるのではないかな…そんな風に私は思います。
ここからは「内ゲバ」語り
以上で、『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』の感想は終了なのですが、もう少し書きたい事があります。それは、この本の中で出てきた興味深い言葉…「内ゲバ」についてです。
私は、学生運動が激しかった頃は子供でしたから、直接、学生運動を体験してはいません。それでも、ニュースなどで色々と見ており、「内ゲバ」と言う言葉も具体的にイメージする事が出来ます。
因みに、「デジタル大辞泉」さんだと「内ゲバ」は、「《ゲバは「ゲバルト」の略》主に学生運動の諸派間あるいは一組織内での対立から起こる実力抗争」と書かれています。一般的には、組織内の対立が暴力的な抗争になると、「内ゲバ」と呼ばれるのではないか…と思います。
で、その「内ゲバ」です。
私と相互フォローしてくださっているnoterさんに、北楠清名さんがいます。北楠さんの記事に「死語現禁」と言うシリーズがあるのですが、その記念すべき300回目の記事が「内ゲバ」でした。
その記事の中で、学生運動がほぼ消滅した現在、この言葉は「死語」になるのではないか…と書かれていました。また、記事に対する様々なコメントからは、むしろ「内ゲバ」と言う言葉は「死語」にしていかねばならない…と考えている人が多いと、私は感じました。その考え方には私も賛成です…が、果たして、そうなるでしょうか。
実は、北楠さんの記事には私もコメントしました。全文、紹介します。
コメント欄も含め、とても興味深い内容でした。
私は、学生運動が下火になった時期に大学生だったので、直接的な経験は全くありません。当然、学生運動の内ゲバは未経験です。
しかし、この「内ゲバ」的な行動は、今日でも起こりうると思っています。
組織の中に派閥が出来てしまい、その派閥間の関係性がキツイ(タイトな)ものになると、「内ゲバ」的な行動は起こってきます(実は、それを目の当たりにした経験があるので…)。もちろん、かつての学生運動の様な流血沙汰にはならないかもしれませんが、相手を「社会的に抹殺」する…は、案外、今でも起きている様に思います。
そう考えると、言葉としては死んだとしても、その根本は残りそうな…そんな気がします。
その、私の考えを裏付ける…かもしれない記述が、『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』に出てきます。
例えば北条政子(ホウジョウマサコ)の部分では、次の様に書かれています。「初代将軍で夫の源頼朝(ミナモトノヨリトモ)は落馬して死亡し、2代将軍で長男の源頼家(ミナモトノヨリイエ)は内ゲバで殺されてしまう」と。或いは源実朝(ミナモトノサネトモ)では、「当時の鎌倉幕府が、常に仲間同士で粛正し合うような、内ゲバ状態だった」と書かれています。
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」により、鎌倉幕府の内部抗争の激しさは広く知られる様になりました。これって正に「内ゲバ」です。
『ひょんな偉人ランキング~たまげた日本史』では「内ゲバ」と書かれていませんが、新撰組の芹沢鴨(セリザワカモ)が暗殺されたのも、結局は「内ゲバ」でしょう。奈良時代に行われた豪族同士の争いだって、やはり「内ゲバ」だと言えます。
もちろん、これらを「内部抗争」と言う事も出来ます(先程、私も使いました)。
ただ、「内ゲバ」の方が言いやすく、文字数も少ないですから、言葉として選択する方は今後もいると思うのです。それでも、使われる機会が減ってくれば、自然消滅的な形で「死語」になるでしょう。
しかし、日本国内か外国かは分かりませんが、どこかで激しい内部抗争が頻発する状況になり、それが耳目を集める様になれば、「内ゲバ」と言う言葉を使う人は増えるはずです。そして、それにより「内ゲバ」と言う言葉を学習する人が増えれば、「内ゲバ」は復活すると思います。
その可能性は決して低くない…私は、そう考えています。う~ん…少しばかり悲観的に過ぎますかね。
おわりに
真山知幸先生の本については、他にも記事を書いています。興味のある方は、そちらもどうぞ~。