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『忙しい人のための代謝学』第1章

植物と動物はエネルギーの産生方法がどう違うのか?『忙しい人のための代謝学』第1章の内容をまとめたいと思います。

〇植物と動物の最大の違い

植物と動物の最大の違いはエネルギーの産生方法にあります。

植物「水+二酸化炭素 → 酸素+炭水化物」①
動物「炭水化物+酸素 → 二酸化炭素+水」②

このように全く逆の反応によりエネルギーを得ているのです。「逆の反応なら片方はエネルギーを得る反応で、もう一方はエネルギーを消費する反応ではないのか?」と思ったあなた、いい質問です。

植物では水(H2O)を酸素(O2)に酸化した結果、水素イオン(H+)を得てエネルギーを産生します。そして、その水素イオンとエネルギーを使って二酸化炭素(CO2)から炭水化物を作るのです。これによりエネルギーをその場で消費することなく炭水化物として保持し、必要な時に分解してエネルギーを取り出すことができます。つまり、植物の光合成①はエネルギーを産生してかつ貯蔵するための反応だということです。

動物は、植物の所で説明した「炭水化物を必要な時に分解してエネルギーを取り出す」反応のみを用いています。つまり、炭水化物を二酸化炭素(CO2)に酸化して得られた水素イオン(H+)をミトコンドリアの内膜を通すことでエネルギー(ATP)を得ているのです。

植物と動物の違いは、メインのエネルギー産生方法が水の酸化なのか炭水化物の酸化なのかという違いだと言えるでしょう。また、両者ともに水素イオンの流れでエネルギーを得ている点では共通しているとも言えます。

〇酸化と還元

さて、ここで酸化と還元についておさらいしましょう。

化学では、酸化とは電子を奪われる反応、還元とは電子を受け取る反応と習いました。

生物においては、分かりやすく理解するために、
 酸化:水素イオンを奪われる反応
 還元:水素イオンを受け取る反応
という理解で充分であると本書に書いてあります。ちなみに、ヒトにおける酸化反応で働く酵素は2種類のみでオキシダーゼ、デヒドロゲナーゼのみだということです。確かに、英語の意味そのままですね。

さて、植物と動物の反応①、②を見てみると、植物の水、動物の炭水化物はそれぞれ酸化されています。しかし、反応①は還元反応、反応②は酸化反応と呼ばれます。なぜでしょう?理由として、①、②の反応は炭水化物を中心として語られることが多く、①の反応は二酸化炭素を還元して炭水化物を得た反応、②の反応は炭水化物を酸化した反応とみなしているからです。

〇呼吸鎖、酸化的リン酸化、電子伝達系って?

この3つをしっかり区別できていますか?

植物細胞では少量のミトコンドリアが、動物細胞では豊富なミトコンドリアが存在します。ミトコンドリアは太古の細菌、αプロテオ細菌の遺残だと言われています。ミトコンドリアでは水素イオンの流れを利用してエネルギー(ATP)が産生されていますが、そこで使われている仕組みがこの3つです。

呼吸鎖とは水素イオンと電子を輸送するシステムのこと、酸化的リン酸化とは水素イオンを使ってATPを合成するシステムのことであり、この2つを合わせて電子伝達系と呼びます。

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〇感想

植物も動物も水素イオンの流れを利用してエネルギー産生しているという視点は初めてで面白かったです。反応①、②を司る葉緑体、ミトコンドリアはともに太古の時代の細菌ですが、これらの細菌が生きる海は酸性だったということなのでしょうか…?

次回は、第2章で動物細胞のエネルギー産生に焦点を当てて、グルコースが解糖系、TCA cycle、電子伝達系を経てATP産生につながる流れを見てみましょう。TCA cycleがなぜ存在するのか説明できますか?

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