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強心薬、DOBとMILどっちにしたら良い?

 強心薬の使い方は難しいですよね。強心薬が必要な場面を判断し、「ちゃんと効いているか」を判断するのは経験を要すると思います。過去に記事を書いていますので、ぜひ参照していただければと思います。

 では、強心薬が必要な場面が判断できたとします。
 次に、強心薬のうち、β刺激薬(ドブタミン)を優先すべきか、PDE-3阻害薬(ミルリノンやオルプリノン)を優先すべきか、悩みますよね。

 今日は、その話をします。

結論からいえば、まずドブタミン(DOB)を使い慣れろ

 いろいろ考えることが多いミルリノン(MIL)に比べると、DOBはシンプルな強心薬として使いやすいです。

 MILだと血圧が下がってしまったり、腎機能が悪い症例では投与量の調整が必要になったりします。また、希釈の仕方も病院によって差があったりします。

 キットのシリンジ製剤(ドブポン®シリンジ)のあるドブタミンをベースに使い慣れましょう。これなら、手間をかけずに「とってきてシリンジポンプにガチャンとはめるだけで開始できます。生食で希釈したり、シリンジに吸ったり、といった作業(特に急いでいるときにやりたくない作業ですね)がなく簡便です。

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 そして、ドブタミンだけでは間に合わない症例で、ミルリノンを「併用」します

 ある程度慣れたら、「ミルリノンの方が良さそう」なシチュエーションを知り、少しずつ試して覚えていくことをオススメします。以下に、思いつきで5場面ほど挙げてみました。

ミルリノン(MIL)を優先すべき場面

① 心腎連関などで腎機能が悪い心不全で「長く効かせたい」
 かなり心不全が進行している症例です。QOLを向上させてあげ(それこそ太く短く、余生を過ごしてほしい患者さんに)る必要がある症例です。
 退院してからも効果が持続するように、「長く効かせる」ために、わざと腎機能が悪い患者にMILを投与します。

② 虚血性心疾患がありそうで、DOBより「虚血リスクをおさえたい」
 強心薬である以上、MILもDOBも心筋酸素消費量は増やします。が、末梢血管抵抗を減らす(後負荷を下げる)MILの方が心筋酸素消費量の増加は「控えめ」だと予想されます。典型的なカテコラミンではないという点から、MILの方が心筋への負荷がマシだと思われているようにも思われます(感覚的なものだと思いますが)。
 強心薬は、虚血性心疾患がないとわかっていれば割と「安心」して使えます。ですが、例えば左前下行枝(LAD)に90%狭窄がある(のに、それに気づかずに)症例で強心薬を使うと致死的イベントを起こす可能性があります。そうと分かっていても「強心薬が必要」ならDOBよりMILを優先しても良いと思います。
(※多分、そんな症例では強心薬より、IABP留置してLADへPCIする方が優先だと思いますが)。

 そういう意味でも、過去(直近であればあるほど良い)にCAGが施行されているかどうか、というのは「非常に重要」なデータになります。

③ 頻脈性心房細動による心不全でEFが悪い
 あと、「DOBより頻脈化しにくい」効果に期待できる場面としては、「頻脈性心房細動による心不全で、エコーでLVEFが悪い」みたいなケースですね。「レートは上げたくないけどEFが悪いので年のために強心薬は使っておきたい」みたいなケースです。DOBだと如実にAFがさらにrapid化してしまいますので、MILにしておきたいですね。
 でも、個人的にそんな場面に、MILよりも先にみなさんに思いついてほしい薬剤があります。

 わかりますか?心収縮能を上げつつ、レートをおさえてくれる薬剤。

 そう、いまはあまり見かけなくなった「ジギタリス」ですね。こちらも腎機能が悪いと使いにくいですが、「ジゴシン1Aだけワンショット&継続投与しない」さえ守れば、非常に頼りになります。抗菌薬のように初回投与では腎機能に注意しなくて良いです(継続で投与する場合には慎重に使ってください)。

④ 高血圧性肺水腫だけど、心機能が悪く降圧だけでは不安
 これは強心薬としてではなく、「降圧」をしたいときの話です。いわゆる典型的な高血圧性の肺水腫の症例ですね。
 通常の降圧薬ではちょっと不安で、心機能をサポートしながら降圧したい、という場面でMILは有用です。
 が、ニトログリセリンなどのように、MILを増やせば増やすほど血圧が下がるとは考えないほうが良いです(用量を増やすほど、心臓にもムチを打つわけですから)。「MILだけで血圧を下げようとしない」という気持ちは大事だと思います。

⑤ 純粋に、「DOBをこれ以上増やしたくない」ときに併用
 やはり、ドブタミンは低流量であれば比較的安全ですが、高流量で使用すればするほど、PVCが頻発したり、ベースのHRが上がってきます。これは患者のベッドサイドモニターを見ていれば体感で分かるレベルだと思います。だからこそ、こういった反応が出そうになる前に、「少量のMIL」を併用するのです。DOBとMILは相乗効果が期待できるうえ、「併用したほうが頻脈やPVC頻発が少ない」イメージがありますし、教科書的にもDOB高流量にする前に併用することが一般的です。幸い、この2種類の薬剤は「同一ルートからの投与が可能」で、ルートを追加しなくて良いのもメリットじゃないかなあと個人的に思っています。



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