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おうちビストロ 2025年2月 ~寒波の青空の下~

今月は寒かったですね。

寒波が居座って、大雪で大変な思いをされた方もいらっしゃるかと思います。
幼少の頃、日本海側で育ち、冬のどんよりした空やしんしんと降り続く雪の記憶が残っています。

それに対して、太平洋側の関東平野は、晴れて青空であることが多いです。
からっ風が寒いものの、雪かきは不要で、灰色の空に滅入ることもなく助かります。

ある週末、ふと思い立って都内にある縄文遺跡の公園へ行ってきました。
以前、のんてりさんがご紹介されていた西東京市の「下野谷遺跡」です。

南関東最大の集落遺跡の一部が公園になっています。
住宅街の中にあり、暖かな日差しが降り注ぐ静かな公園です。

5千年前に縄文人が暮らしていた下野谷遺跡
再現された竪穴住居

この日は竪穴住居が公開中で、中に入ることができました。
入口をくぐると、なかなか居心地が良さそう。

このあと、小さな子ども達がすたすたと入ってきて座っていました
竪穴住居がもうひとつ
詳しい説明パネルもある

説明パネルには、縄文時代にもちゃんと四季があったと書かれていました。
冬も現在のように、寒くても晴れる日が多かったのでしょうか。

その後は、すぐ横の石神井川沿いを歩き、東伏見稲荷神社や練馬区立の武蔵関公園にも足を伸ばしました。

東伏見稲荷神社

このあたりは小鳥が多くて、バードウォッチングをしている人もいました。
シジュウカラのような小さな白っぽい鳥が、木の枝にとまって鳴いているのが可愛かったです。

トータルで1万歩以上歩き、健康的な午後を過ごすことができました。

前置きが長くなりましたが、たくさん歩いたらお腹が減るということで、今月のおうちビストロのメニューはこちら!



ジンギスカンとシノンの赤

フランス在住の「chef ichi」さんが、年始にご家族とお友達と小旅行に出かけられたことをnoteにつづられていた。

この旅行の目的のひとつが、ロワール地方のワイナリーを巡ること。

chef ichiさんは、アンジュ・ソミュール地区を中心としたロワールワインのファンだそう。

旅の初め、ロワールにあるシノン城のそばの家族経営ワイナリーを訪れ、アットホームなワイナリーで試飲したり、ブドウ畑を散策されていた。

こちらのワイナリーの畑は「クロ・ド・エコー」といって、「シノン城から大声を出すと、石垣(クロ)に囲まれたこの畑にこだまする(エコー)ことから、この畑の名前がついたらしい」という面白い由来の名前。

あのジャンヌ・ダルクで有名な世界遺産のシノン城。
そこから声が届くくらいの距離のブドウ畑。
この畑は、かつてジャンヌ・ダルクの声も聴いたのだろうか。

そして、記事の最後にこうつづられている。

今回のように直接生産者や生産地を訪れ、造り手やそのドメーヌで働いてる人の表情や情熱を感じとることで、訪問先のワインの印象は強くなる。

また、実際ドメーヌを訪問できなくても、生産地域の自然環境や街の雰囲気を味わうだけでも、自宅や生産地域から離れた場所でワインを味わったときに、頭の中で訪問先の情景を想い浮かべる事ができるのは、ワインの味わいを左右する経験にもなる。

僕自身ワインは楽しく味わうことをモットーにしているが、それでもワインとなるブドウの産地を目の当たりにしてから、感情的にワインと共に時間に浸るのが好きな性格。

だから今回の旅の目的のように、自分の足で様々な生産地域を訪れ、生産者の言葉や物語に触れる時間は貴重な時間なのだと再確認させられた。

chef ichiさん「シノンの家族経営ワイナリー・クーリー・デュテイユ」より

これらの言葉に大いに賛同する。

私もワイナリーを巡るとき、そのブドウ畑やまわりの風景を見て、自宅へ戻ってからもその風景を思い出し、生産者の言葉を思い浮かべたりしながらワインをいただく。

すると、1本のワインが強い印象を与えてくれる。

ワインの香りをとり、口に含むと、現地の景色、ワイナリーの建物、ブドウが実る様子、生産者さんの面影、想いのこもった言葉、周辺の町並み、郷土料理や農産物、それらがフラッシュバックし、一瞬、時空を超えるような気がすることも。

ロワール地方のシノンのワイン。
随分前に飲んだことがあると思うが、chef ichiさんの記事を読んで、改めて味わってみたくなった。

エノテカで購入できたシノンワインがこちら。

PIERRE ET BERTRAND COULY CHINON LA HAUTE OLIVE 2018
ピエール・エ・ベルトラン・クーリー シノン・ラ・オート・オリーヴ 2018

生産者であるピエール・エ・ベルトラン・クーリーは、家系を遡ると15世紀からワイン造りに携わっていた由緒正しいワイナリーだそう。

品種はカベルネ・フラン100%。

シノンの肉料理を検索すると、塩豚を煮込んだ料理がある。
もう少し違う感じがいいかと思い、北フランスのモンサンミッシェルのあたりでは羊も食べられていることに思い当たる。
chef ichiさんは、旅の中盤でモンサンミッシェルにも行かれている。

ラム肉料理に決めて、スーパーで薄切り肉を購入。
玉ねぎと小松菜をカットして、ラム肉と甘めのタレに漬けておく。

その間に、ベーコンと玉ねぎ、白菜の軸をバターで炒めてから、水と白菜の葉を加え、煮込んでスープにする。

シノンワインは、シャルキュトリ=ハムやソーセージ、パテ等にも合うといわれているので、ベーコン風味のスープを用意した。

続いて、タレに漬けておいた肉ともやしを炒めてジンギスカン風に。
これらを盛り付けて完成。

ジンギスカンとベーコン白菜スープ

この料理とワインを合わせてみる。

濃い色調

色調は濃く、ダークチェリー、カシスの香り、スミレのような花の香り、やや土やハーブのニュアンス、果実味がしっかりしつつ、冷涼な地域らしい風味もある、やや重めのミドルボディ、アルコール度13.5%。
2018年ヴィンテージで熟成感もある。

エレガントでありつつも、東欧のワインのような土着感もありほっこりする印象も。

ジンギスカンの甘めのタレとダークチェリーの香り、ラム肉の風味とハーブのニュアンスなどが合って、ジンギスカン風のラム肉とよい相性。

ベーコンと白菜のスープは、ポタージュタイプにした方がワインの重さに合ったかもしれないが、ベーコンとバターの風味が効いていて悪くはない。

シノンワイン、想像以上によかった。

ロワールのカベルネ・フランは、少し前だとピーマンの青っぽい香りがするといわれたが、今回は熟した果実のアロマが豊かな印象だった。

また、長年のノウハウだろうか、バランスよくまとまっていて、よい熟成感がある。
家族で何代もワイナリーを続け、古城とともに歴史を積み重ねてきた長い時間が伝わってくるようにも感じた。

かつて、ボルドーやカリフォルニアのフルボディが好きだった頃もあるが、ここ数年は好みが徐々に軽めに移ってきており、ロワールの赤もいいと思った。


牡蠣いしる和え蕎麦とハイディワイナリーの赤

先月購入した輪島市のハイディワイナリーの赤を、どんな料理に合わせようか考え、能登で作れらた魚醤「いしる」を活用することに。

以前、ハイディワイナリーのロゼに「ホタルイカ」が合ったとご紹介した。
ハイディワイナリーのブドウは海沿いでつくられていて地域性を大事にしている。

いしるは地域によってイワシなどの青魚を原料とすることもあるが、手元にあるのはイカを原料としている。

いしる
(ラベルは、いしり)

鍋やスープに、いしるを加えると旨味が増す。
いかにも「イカ」という香りより、もう少し円味がある風味がして美味しい。
先月、石川県のアンテナショップで購入してから気に入って、少しずつ使っている。

スーパーでパックにたっぷり入ったお買い得な牡蠣があったので、それを購入してオイル漬けにする(11月にご紹介したレシピより)。
その時、醤油だけでなく、いしるも加えてみた。

フライパンで素焼きにしてから、醤油といしるを一回し
ガラス容器に入れ、
生姜、鷹の爪、太白のごま油を加えて保存

この牡蠣オイル漬けと蕎麦を組み合わせたくて調べてみると、石川県金沢市にある「発酵食大学」の和え蕎麦のレシピがヒットした。

上記のリンク先では、<和えタレ>として「いしる糀、レモン汁、蕎麦つゆ、オリーブオイルまたはごま油(白)、香菜の茎」を合わせるとあったが、手元にある材料でアレンジ。

「いしる、玉ねぎ糀(自家製)、お酢、蕎麦つゆ(佐々長)、オリーブオイル、長ネギ」を目分量で合わせた。

和えタレ

信州八割そばをゆでて冷水でしめ、タレと和えて、牡蠣などをのせて完成。

和えそば、牡蠣オイル漬け、小松菜、
菊芋醤油漬けのせ
(相変わらずラフな盛り付けだが)

和えそばは優しい味付けながら発酵調味料の旨味があり、牡蠣はいしると薬味の風味がプラスされてパンチがある。
交互に食べるととても美味しい。

では、ハイディワイナリーの赤「相承」と合わせてみよう。

相承 Sojo Cuvée Memorial 2020

色調は透明感のあるガーネット、カシス、ブルーベリーのような果実の香り、奥にミネラル感もあり、タンニンは軽めだが、余韻に渋みのニュアンス、程よい飲み応えがある。

品種はカベルネ・ソーヴィニヨン44%、メルロー30%、プティヴェルド26%。

いしる風味の牡蠣と、カシスのような赤い果実の香りのするワインがよく合う。
やはり、ハイディワイナリーのワインは、赤でも海の食材と相性がいい。

また、思いつきで作った、里芋、大根、厚揚げ、干し海老の中華風スープ煮も、ワインと合う。
このスープ煮にもいしるを入れた。

なお、和え蕎麦の上にのせた「菊芋の醤油漬け」は、梅ももあんずさんのレシピから。「菊芋の味噌漬け」も美味しい。

また、今回活用した自家製の「玉ねぎ糀」は、来月にでも改めてご紹介したい。

玉ねぎ糀 10日目


深大寺そばとニュージーランドの赤など

「蕎麦とワイン」の違う組み合わせも試した。
先日見つけた「深大寺そば」は、1番粉を中心に作られ、かつて献上品だったとのこと。

深大寺そば

めんつゆを少しのばして火にかけ、しめじとネギを入れてつけ汁をつくる。
深大寺そばをゆでて、冷水でしめて合わせてみる。

深大寺そばと温つけ汁

そばは更科タイプで白っぽく上品な味わい。
甘辛いつゆとしめじやネギの風味に調和する。

この料理に合わせたのは、先月ご紹介したエノテカお薦め「そばに合うワイン」のうち、ニュージーランドのピノ・ノワール。

シレーニ・エステーツ グランド・リザーヴ・プラトー・ピノ・ノワール 2022

ワインは、ダークチェリー、プラムの香り、ニュージーランドらしいハーバルな香り、土のアーシーなニュアンスもあり、タンニンは軽めのミディアムボディ。

上品な更科そばに合わせるには、ワインがやや重めだったが悪くない感じ。
この時、いただきものの「鰤のあら煮(真空パック入りを温めた)」があり、この鰤とニュージーランドの赤の方がよく合った。


また、エノテカお薦めの「そばに合うワイン」のうち、スペインのスパークリングワイン「プロジェクト4(クワトロ)」も後日開栓した。

4種類の品種をブレンドした プロジェクト4 2019

こちらはそばやガレットではなく、「TOKYO X」というブランド豚肉のソテーと、全粒粉パンと合わせた(写真ナシ)。

このスパークリングワインは、ややナッツのような香りがして、全粒粉パンと相性がよかった。
そば粉のガレットとも相性よさそう。

また、スペインワインは豚肉とも相性がいい。

「TOKYO X」は、肩ロースに塩コショウをつけ軽く小麦粉をはたいて、フライパンでバターとこんがり焼いてから取り出し、そのフライパンに醤油、マルサラ酒を加えてソースをつくり、焼いた肉にかけたらとても美味しかった。

「TOKYO X」は八王子などで飼育されているブランドポークで、脂身に甘味があって美味しいが希少。
東京のJAの店で、冷凍で販売されている。見かけたら是非!



🦪     🦪     🦪


今月のおうちビストロ、いかがでしたか。

これで、先月ご紹介したエノテカお薦め「そばに合うワイン」3種類をすべて試してみました。

感想としては、麺のそばにはつゆと相性のいい軽めの赤がよく、ニュージーランドのピノ・ノワールも悪くなかったですが、今回のハイディワイナリーの「相承」も結構いいと思います。
ハイディワイナリーの赤を購入されているEijyoさん、とこらぼさん、いかがでしょうか?!

そして、そば粉のガレットには、やはりオレンジワインが合わせやすいと思っています。

▼「蕎麦食推進」活動も3カ月目になりました

さて、このシリーズ「おうちビストロ」は来月で丸1年になります。
毎月書くのが定番化してきましたので、もう少し続けてみようと思っています。

今回もお読みいただきありがとうございました🍷

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