「春」の雰囲気を纏ったワイン
今にもスキップをしそうな
ワクワク感を控えめに発しながら
テイスティングカウンターへ歩み寄る女性は
緊張感のあるロングの黒髪が印象的で
どこか儚げだけれど一本筋が通っている雰囲気
「こんにちは」
「こんにちは、いらっしゃいませ」
「なんか、フランスみたいな雰囲気ですね」
「あ、わかりますか？
南仏のイメージで設計したんですよ(^^)」
真実を知りたい
ワインのメッセージを全て受け取りたい
そんな思いが伝わってくる
真っ直ぐな黒い瞳を私に向けて
「おすすめのワインはどれですか？」
彼女はワインに向き合う準備が
充分に出来ているといった面持ち
迷わず
「アルバリーニョ4種 飲み比べ」を提案
畑の場所、醸造方法などが異なる4つのワイン
満足そうにニッコリ微笑んで
テイスティングをスタート
グラスを右手で持って
鼻の右側で斜めに傾け香りをとる
顔の正面ではなく 右側
ときおり
グルグルとグラスを回しては
鼻の右側で斜めに傾け香りをとる
その姿は「〇〇道」の作法という感じ
ワインのプロではないけれど
何かクリエイティブな仕事をしている
信念のある「職人」としての自覚を持ったひと
そんな雰囲気を感じたので
「ワインと関わりのあるお仕事ですか？」
こんな風に敢えて質問をするのが 私流
「いえいえ 全然全然！」
「ワインはお好きなんですね
クリエイティブなお仕事をされてる感じ」
ドライバー役のご友人が
「この人書道家で 結構有名なんですよ」
「そうなんですね なるほど」
「実は 私の娘が習っていて
私はその母なんですけど仲良くなって(^^)」
「私たち似てるんですけど 全然違ってて」
と、書道家の彼女。
「きっと気が合うんですね
お互い通じ合う感じで」
「そうなんですよー」
「でも興味の対象とか性質は違ってるから
お互いに補い合ってる感じがします」
「そうそうww」
こんな会話をしつつ
しっかりとテイスティングをしている
この集中力は「書」のなせる技だろう
彼女の中で繰り広げられた
ワインとの対話から
紡ぎ出された言葉たち
「ふんわり広がる感じ」↓
「いろんな味とか香りがあって複雑」↓
「複雑さが調和している」↓
「春のイメージ」これがキーワード！
書道家だけではない
彼女の持つ素養か体験がありそう
店内の雰囲気に
フランスを感じていらしたので
「フランスにもいらっしゃったんですか？」
「あ、実はパティシエもしてまして…（照）」
「そうですか！すごいですね なるほど」
「なるほど？」
「表現の行間に、
書の世界以外の感性を感じたので(^^)」
ちょっと照れながら
でも嬉しそうに控えめな笑顔から
彼女の人となりの一端が見える
そこへ、ワインの醸し人が偶然登場！
折角なので、お互いを紹介する
すると、彼女は待ってましたとばかりに
「あ、あの、質問してもいいですか？」
「どうぞ」
「ワイン造りで一番大切にしていることは
何ですか？」
「うーん、難しいですね」
「そ、そうですよね 全部ですか、やっぱり」
「全部ですね
まぁ、僕らは天候のことは
コントロール出来ないですしね」
「じゃあ、もしも天候もいろんなことの
コンディションが良くない条件だったら
何が一番大切になりますか？」
「出来得ること全てですね。
全てを受け入れてやっていくしかない。」
「おぉ、やっぱりそうか（と呟いてから）
お忙しいのに、ありがとうございました！」
「どうも、いろいろ飲んでいって下さい」
暫くグラスを見つめていた彼女
「やっぱりそうなんですよね
この中に全てが入っているんですよね…
なんかその思いがすごい伝わってきて
泣けてきました」
「すみません この人すぐ泣くんですよ
昨日も紙の職人さんの所に行ったんですけど
そこでも感動して泣いてて」
折しも この日は満月
浄化の日だものね
泣くのは ある意味必然かも
全身全霊で向き合う姿勢は
彼女自身の職人としての感性そのもの
だからきっと 魂が震えたのでしょう
こんな風に真剣に
私たちのワインと向き合って
テイスティングしてくれた彼女との時間は
私自身にとっても 貴重な体験でした
「アルバリーニョ4種テイスティングセット」
それぞれのワインに春・夏・秋・冬と
タイトルをつけてくれました
＊「アルバリーニョ」フェルミエ自社畑産
スペイン原産の高級白ワイン品種
「海のワイン」とも言われている
彼女のお気に入りは「春」を感じた
「アルバリーニョ 2019」（写真真ん中）
柔らかな花やオレンジの皮の香り
春の芽生を感じる酸味が爽やか
穏やかな余韻が春の風のように心地いい
お家でもゆっくりと愛でてくださいね！
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