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驚くほど楽しい!日本の文化コンボ〜発酵茶事やってみた その2
今回はなによりまず、先月(2023年7月)に発売されたばかりのこちらの書籍をご紹介させてください。
『オッス!食国(おすくに) 美味しいにっぽん』
ヤバすぎるほど面白かった!発酵デザイナー小倉ヒラクさんの新著 #オッス食国 。知的興奮で鼻血出そうになりつつ読了。食(お)すことで治(お)すという日本の統治システム、神道と仏教の食への影響、グローバルをローカル化して再度グローバルにする日本の魔改造能力 等々、心とお腹に深く響く快著! pic.twitter.com/8ewXCVi9BM
— 野中健吾 (@winebaizou) July 23, 2023
可愛らしい装丁(実は彼もれっきとした神様なのですが)のように親しみある読みやすい文章ながら、扱っている内容の骨太なこと!目から鱗のような内容がありつつも、そのどれもについて日本人として長年この地で色々と食してきたこの身が「めちゃくちゃ本質に刺さってるなー」と感じてしまう。
もうこれは日本にゆかりがあって食いしん坊を自認する人は全員読むべき!
(いやマジで)
そんな本なのです。
この本の著者である発酵デザイナーの小倉ヒラクさんがオーナーの発酵デパートメントさんには僕も普段からお世話になっており、先日のnote記事
のお料理も発酵デパートメントさんの商品なくしては成立しませんでした🙏
・・・とまあ、常日頃からヒラクさんには影に日向にお世話になっている僕なわけなんですが、なんとこの度、ヒラクさんをお招きしての発酵茶事が2023/8/5の「発酵の日」に実現しました!!
(上記の記事がきっかけなんですが、いや〜人生ホントわからんもんです)
今から思い返しても情緒がヤバいんですが・・・
それ以上にとても楽しい場でした(^^)。
というわけで、今回はその当日、ヒラクさんと数名のお客様をどのようにお迎えしたのかのレポートです。
※場所は前回の茶事と同じく、茶室「凱風軒」です。
茶事(ちゃじ)とは?
茶の湯における正式なもてなしの場で、お菓子とお茶だけでなく料理(懐石)やお酒まで出ます。炭を注ぎ足すといった小イベントも挟みつつの4時間コース!
亭主(ホスト)が正客(しょうきゃく:メインゲスト)と連客(お連れの方々)を迎え、自ら設定したテーマに沿った様々な趣向により「マイワールドにようこそ」とばかりに独自の世界観にいざなう面もあります。
現代アート的にいうならば五感をフル活用してのインスタレーション(空間そのものを使ってのアート表現)とも言えるでしょう。
今回は亭主が僕、正客がヒラクさん、という形での茶事となります。
発酵と茶の湯
僕が「発酵」という現象と現代における茶の湯をどう結びつけているのかは前回の発酵茶事の記事でも述べさせて頂きましたが、今回はそれに加えて『オッス!食国』を通じて自分の実感として強まった「日本において過去から今に続く、歴史と文化としての発酵」という意味合いも加えてみたいなと思いました。
それは、米を中心とした作物とそれを生み出す風土のありがたさへの畏敬であり、身近なものを「よく見て、意義を見つめ直す」ことでもあり、先人の尽力と連なりによってこそある今を感じることでもあります。僕にとってこういった感覚はまさに茶の湯にも通ずるところであるからです。
そして何より、そういった場にヒラクさんをお迎えすることで、多少なりとも普段お世話になっていることへの御礼とお返しになるかとも思いました。
・・と、前口上はこの辺りにして、実際どのようなことをしたかについて述べていきましょう。
寄付(よりつき):発酵をテーマにAIが描いた絵
前回の発酵茶事では床の間に掛けたものを今回は寄付(よりつき:客が茶室に入る前の待合室)に掛けさせて頂きました。
書籍『メタファーとしての発酵』のタイトルをキーワードに、色々と工夫しながらAIに画像生成させたものです。色紙をかけた掛軸の生地は阿波の藍染(あいぞめ)です。藍も発酵させて染めるものということで今回のテーマに合わせています。
前回の記事で触れていたものの現物をご覧頂きつつ、初めて見る方には「何ですかねこれ?」とネタにして頂ければなと思っていましたが、皆様の盛り上がる会話が僕のいる水屋(スタッフ用の部屋)にも伝わってきて、その目論みは達成できたようです。
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そして、頃合いを見て半東(はんとう:スタッフの意味)がお客様を茶室へとご案内し席入り(入室)となります。
書院:「亀ノ尾」と『オッス!食国』と空也上人
さて、茶室でまず語るべきは床の間なのですが、その前に床の間のかたわらにある書院のことをば。
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書籍『オッス!食国』を中心に、左には淡路島のあめつち農園さんによる亀さん。これは我が家の注連縄(しめなわ)として昨年末に発酵デパートメントさんで求めたもの。尻尾に使われている米「亀ノ尾」は、名前そのままのめでたさだけでなく、ササニシキやコシヒカリなど現在の多くの食用米の源流です。『オッス!食国』でも主要テーマである「米」=神道における食の恵みのシンボルを表すものとして置かせて頂きました。
右にはイSム(イスム)さんによる空也上人像。日本の食における神道と仏教の影響は『オッス!食国』のテーマの一つでもあるので、その意を込めて。
床の間:本藍染め麻風呂敷(群雲)と氷柱
茶席において、床の間とは亭主(ホスト)の想いやその場のテーマを表す最も重要な場所です。今回はこちらのようにしつらえました。
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今回のために染めて頂いたPINTさんの本藍染め麻風呂敷(群雲)を少し畳んで掛け、その下には桶に入った氷柱を配しました。
のれんのような見た目で歓迎の意を、涼やかな藍色の麻生地と氷柱で夏の最中にも涼を感じて頂ければ・・・というのがパッと見た際の意図です。
ですが今回は「発酵茶事」ですので、それに関する想いとテーマがあります。
●群雲(むらくも)をどのようにとらえるか?
本藍染めを使ったのは寄付の掛物と同じく「藍は発酵させて染めるもの」だからということになりますが、今回はその意匠である群雲(むらくも)にいくつか想いを込めました。
まず1つは、デザイン的に微生物たちが頑張って活動している発酵の様子をとらえた顕微鏡写真のような感じがあっていいよね!という点。
(ここは発酵好きでないと刺さりにくいツボかと思いますが(^^;)ヒラクさんにも「いいね!」と言って頂いたので満足)
2つめは少し説明が必要です。
月に叢雲花に風(つきにむらくもはなにかぜ)
という言葉があります。
意味としては、「綺麗な月を見ていたら群がるような雲に隠されてしまった、咲いた花(桜)を愛でていたら風で散ってしまった」ということで、意味としてはいわゆる「好事魔多し」を指すものです。
つまり、雲をネガティブなものととらえている言葉なわけです。
対して、わび茶の祖と言われる村田珠光の言葉に
月も雲間のなきは嫌にて候(つきもくもまのなきはいやにてそうろう)
というものがあります。つまり、「ただ月があるだけじゃなくて、雲がかかってその間から月が見えるくらいが風情があっていいよね」と言っています。こちらは雲をむしろポジティブにとらえています。
このように、物事というものはとらえ方次第でどのようにも感じます。
考えてみると、そもそも発酵と腐敗の違いも「人間の役に立つかどうか」です。また、同じ漬物のつかり具合だって人の好みによって美味しいかそうでないかは意見が分かれるでしょう。ある状態を一面的に判断せず、色々な面から見つめて活用してきたからこそ、豊かで多様な発酵文化が今あります。
そのような、「問いをもって物事を見つめ直す」というスタンスに、僕は発酵と茶の湯に通ずるものを感じるのです。その想いをこの「群雲(むらくも)」という意匠を示す言葉に込めさせて頂きました。
●寿司桶に入れた氷柱
現代人の僕らはお寿司と聞くと、酢飯に新鮮な魚介を載せた「握り寿司」を思い浮かべますが、寿司の原型は塩と米で魚を発酵させる「魚の漬物」でした。その形を今に残す「フナのなれずし(鮒寿司)」がある琵琶湖のほとり近江八幡の三輪神社では、「ドジョウのなれずし」が神饌(しんせん:神への捧げ物)として現在も毎年作られていることが『オッス!食国』でも紹介されています。
こういった、寿司に連なる「発酵」「神饌」という文脈に、古代では猛暑の中では大変貴重なものであったろう氷柱を「本日のお客さまに捧げる」といったイメージを重ねてこの趣向としました。
※寿司桶を見て「これは神饌ですね!」とまで読み取ってくださったヒラクさん、さすがでした。
料理(懐石):発酵めちゃ盛り
さて、床の間などについてのやり取りが終わると料理(懐石)となります。
今回は僕と同じく岡田宗凱先生の元で茶の湯を学ばれている大先輩の高田大雅(タイガ)さんにお願いしました。フーディスト・リンクというケータリングの会社を営むプロの料理人でもあるタイガさんに、
「できれば発酵デパートメントさんの食材を使って頂けると嬉しいです🙏」
とお願いしたところ、ほぼ全ての皿に使ってくださって感激(T ^ T)。
おかげさまで、皆様に口福な発酵を味わっていただくことができました。
※以下の料理に使われている発酵系の食材(調味料含む)は全て発酵デパートメントさんで購入しました。
●折敷(おしき):味噌をはじめ発酵調味料の数々
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飯(白米)に汁、そして向付(むこうづけ)と呼ばれるお刺身という、懐石ではスタンダードな構成。
ですが、中身は発酵てんこ盛りです!
汁: 蓬麩の上に和辛子マスタードを載せました。
味噌は、カクキューさんの八丁味噌に京丹波白味噌をブレンド。
向付:帆立に、発酵デパートメントさんオリジナル調味料のみりんとす、
そして青森の唐辛子「清水森ナンバ」を使った一升漬けを添えて。
●酒:稲とリンゴとホップ(稲とアガベ)
以下は7月初頭の投稿ですが、実はこの時点で「次の発酵茶事にはこのお酒使おう!」と決めてました。
#発酵デパートメント さんの角打ち(店内購入)にて #稲とアガベ さんの新作「稲とリンゴとホップ」を。
— 野中健吾 (@winebaizou) July 2, 2023
さらりと飲めるお酒🌟ほんのり赤みにときめきつつ、味わいにリンゴはでしゃばらず。でも確実にリンゴは活きていて米とポップとの調和になごむ😊これを生む男鹿という土地に伺ってみたくなる味。 pic.twitter.com/cyn1EQHPpG
僕は自他共に認める酒好きですが、大学では有機化学を学んでいた身としてのお酒の魅力を語ると「親油性を持つアルコールと水の混合物であること」となります。つまり、水に溶けるもの、油に溶けるもの(香気成分など)を両方豊かに内包しているものが酒なのです。
そして『オッス!食国』を読んで、酒とはまさにその土地の風土や作物の恵みそのものをも内包しうるものなのだなあ、という想いを新たにしました。
そしてこの発酵茶事と同じ、古きに感謝しての新しい価値への挑戦という「稲とアガベ」さんのスタンスから作られたこのお酒は、今回の発酵茶事にドンピシャのお酒!
初めて飲むお客様にも大変美味しく喜んでいただけました(^^)。
【稲とアガベPV】
— 岡住修兵|稲とアガベ|男鹿まち企画|代表 (@OkazumiSakehei) August 12, 2023
こんな会社です。 pic.twitter.com/gdyppKJu8J
●ノンアルコール:KOJI CLEAR(コージクリア)
お酒が飲めない方向けに、ノンアルコールドリンクもご用意。
詳しくは発酵デパートメントさんの商品ページをご覧頂ければと思うのですが、透明感のある中に米こうじの魅力が満載の不思議で素敵な飲み物です。
初めて飲んだ時の驚きをお客様にもご経験頂けたようでした。
●煮物椀:海老真薯(龍野本仕込うすくちしょうゆ)
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煮物椀というのは茶事の懐石におけるメインディッシュにあたります。
今回は海老の真薯(しんじょ)に万願寺とうがらしとミョウガを載せたもの。
味付けには「龍野本仕込うすくちしょうゆ」を使いました。
●焼物:銀鱈(みりん粕)
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今回はみりん粕(みりんを醸造した際の副産物)に漬けた銀鱈を使用。
みりん粕をペーストにしたこの食材は、ほんのり甘旨くて色んなものにコクを与えてくれます。
●強肴:鶏水晶(酒粕マーラーオイル)
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強肴(しいざかな)はお出ししない場合もありますが、今回は酒粕マーラー(麻辣)オイルを添えて鶏水晶を。
●預鉢:野菜のあえもの(しそ巻梅漬)
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胡瓜などの野菜と一緒に、しそ巻梅漬(梅干しをしそで巻いたもの)をあえました。
●小吸物:純胡椒
小吸物(こずいもの)とは別名「箸洗い」とも言いまして、料理がひとしきり終わると箸を洗うために出される蓋つきの小さな器に入った吸物です。口中のリセットの意味合いもあり、ほぼ味のないもの(松の実を入れただけのお湯など)が出されます。今回はそのままで食べられる枝付き粒胡椒が瓶詰めになっている「純胡椒」を入れてお出ししました。
📢純胡椒の新しい取扱店のお知らせです
— 純胡椒・仙人スパイス (@senninspice) August 11, 2023
東京都下北沢にある"発酵デパートメント"さんで純胡椒の販売が始まりました@DepartmentHakko
各地から集まった個性豊かな調味料や加工食品、甘酒やお酒などが500点以上集うオールアバウト発酵のお店
現在はHOT調味料フェアだそうです#発酵デパートメント pic.twitter.com/WeHO5KtfMB
●八寸:味噌焼山芋 チーズ(八丁味噌/みりん粕)
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小吸物の後は、酒のおつまみとして八寸と呼ばれる2品(精進となまぐさ)が出されます。今回は山芋に八丁味噌を塗って焼いたものと、みりん粕を塗ったチーズを。特に後者は、チーズの濃さがみりん粕に包まれて程よくまった〜りとしたお味で、個人的にも「いいね!」をつけたい逸品でした。
●香物:沢庵(酸味の出たたくあん)
最後に出るのが香物(こうのもの)、つまりお漬物です。
数種類出ることもありますが、必ず沢庵は出ます。それを箸でつまんで、お湯を入れたお椀を清めて食事を終えるためです。
こちらには、しっかりと漬けた古漬けの商品である「酸味の出たたくあん」を使わせて頂きました。
懐石は以上となります。
それぞれのお皿で使われている発酵食品についてヒラクさんが都度ご説明などもしてくださり、皆様美味しく楽しく過ごして頂けました(^^)。
めでたしめでたし・・・・
と言いたくなりますが、ここで終わってしまってはいけません。
なぜならば、これは茶事(ちゃじ)です。
名前の通り、皆さんは食事をするためではなく、お茶をするためにいらしているのです。
そう、本番はここからなのです。
この頃になると、茶事が始まった際に炭火にかけておいた釜の水が、いい感じに沸いてきています。そこに最後のブーストをかけるために、燃料である
炭を追加する「炭点前(すみでまえ)」というものをします。
これにていわば前半戦が終了。
ここからいよいよ、お茶を点ててお出しする後半戦に突入です。
主菓子:田んぼのパンケーキ(生の百花ハチミツ)
お茶を点てる際は、まずお菓子を先にお出しします。
茶事の際は「濃茶(こいちゃ)」という非常に濃厚なお茶がメインディッシュとなります。コーヒーで言うエスプレッソ、あるいは風味と味わいの豊かさと口当たりからするとカレーのようとも言える、とにかく美味しさもパンチもあるものです。
そういったお茶の前にお出しするお菓子はやはり味わいがしっかりしてボリュームもある、和菓子屋さんの「上生菓子」が定番となります。
しかし、今回は「発酵」茶事としての趣向をと考えまして、こちらのパンケーキをお出ししました。
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これにもちゃんとした意図やテーマがありますのでご説明します。
●お米や発酵関連の材料だけで作る
使ったのは発酵デパートメントさんの「田んぼのパンケーキミックス」。米や糀(こうじ)を材料にしたもので、ここに豆乳とこぼれ梅(みりん粕)を加えて焼き上げました。米は『オッス!食国』にもあるように古来より日本という国の主食であり、豆乳の元である大豆も納豆や醤油など身近な発酵食品の材料です。それらへのリスペクトも込めました。
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●利休が好んだ「ふの焼」
わび茶を大成した千利休が数多くの茶会で出していたお菓子に「ふの焼」というものがあります。水でといた小麦粉を薄く焼いて味噌などをクルクルと細く巻いたりする、現代でのクレープのようなものです。
今回のパンケーキも製法は似たようなもので、材料は米・大豆(豆乳)・糀=味噌の原料です。・・・というわけで、今回のパンケーキは利休の「ふの焼」のオマージュでもあります。
●「百花」の蜂蜜
パンケーキとなれば、やはりハチミツが必要かなと。
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こちらは三島で農業をされているフードカルチャー・ルネサンスさんによる百花ハチミツ。百花、つまり野山にある多種多様なその季節の花からミツバチたちが集めてきたもので、加工を加えていない生のハチミツです。
その香りと味わいには複雑な風味と味わいがありつつ、さらりと流れるように口中に広がります。まさに華やかな花手水(はなちょうず)のよう。
そんなハチミツを「花」の盃から木さじでパンケーキに注いで頂きました。
さて、主菓子の後は中立(なかだち:休憩)を挟み、床の間の内容を掛軸から花に入れ替えます。
茶花: 米+花=?
通常であればここで季節の生花を入れた花器を床の間に置くのですが、今回は「発酵茶事」です。
発酵茶事にふさわしい花とはなんだろう・・・
と考えたとき、それは糀(こうじ)ではないかと思いました。
蒸した米にコウジカビが繁殖し白いモコモコになった様子を「米の花」と呼んだ先人の感性にはグッとくるものがあります。
というわけで、床の間はこのようになりました。
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書院にあった亀ノ尾と、先ほどのハチミツを供した「花」の盃を並べ、綿で糀(こうじ)を模してみました。
そして少し引いて全体を見ると、滝から流れ落ちている大量の水。そうすると綿は水しぶきや霧にも見えてきます。高山の滝であれば雲かもしれません。
亀は滝壷で遊んでいるようにも、雲や舞い散る花の中で空中を浮かぶ神獣にも見れます。そこはご覧になられた方の想像力のままに自由自在です。
濃茶
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いよいよ茶事のメインとなる濃茶(こいちゃ)です。
たっぷりのお抹茶に対して、比較的少なめのお湯で練り上げていきます。
この時は何も言わずとも皆が無言になり、
茶筅のシャッシャという音
湯の沸く音
細かな衣ずれの音
そういった、なんの意図も無い自然な音だけの世界になります。
とても心落ち着くひとときです。
今回はいつも以上にできばえはドキドキしましたが、「とてもまろやかで、旨さだけでなく甘さすら感じる美味しさでした!」と濃茶が初めての方から言っても頂き、亭主としての役割を果たせた気分でした(^^)。
※この時には心の底から達成感を感じました、いやホントに。
干菓子:東光スノーボールと作りたて和三盆菓子 (with 一休寺納豆)
メインの山場である濃茶が済むと、亭主も客もリラックスして「まあ最後にもう一服どうぞ」ということで薄茶(一般的なイメージの、薄めのお茶)を点てます。
しかし、お茶の前にはお菓子がつきものですので、ここでも干菓子(ひがし)と呼ばれる水気のないものをまずお出しします。
通常であれば落雁や砂糖菓子といったものになるのですが、何しろこれは「発酵」茶事です。最後までテーマをやり切りますよー。
今回は発酵にちなんだお菓子を2つ一緒にお出ししました。
1つは冷やした「東光 酒粕スノーボール」を。
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もう1つは、阿波の和三盆のみをその場で型に入れ押し固めた、口の中ではらりと粉雪のようにほどける和菓子。中には刻んだ一休寺納豆を入れて旨味とコクを出しています。
※信楽「まさんど窯」の主である陶芸家の平金さんに教わったものをアレンジさせて頂きました🙏
これら2つの菓子で涼味を感じて頂いてから、最後に皆様それぞれに薄茶を一服差し上げました。
その後はご感想含めて色々と歓談させて頂きましたが、ヒラクさんをはじめお客さま皆様から
「とても美味しく楽しかったです」
「お茶ってこんなに自由でワクワクするものなんですね」
といったお言葉を頂き、心底嬉しく思いました。
そうなんです。お茶ってめっちゃワクワクして楽しいものなんですよ!
今回、ヒラクさんや皆様にお楽しみ頂けたのは本当に嬉しいことなのですが、一番楽しんでいたのは他ならぬ僕自身です(^^)。
この度の場は、僕にとってまさに皆様と「お茶」することができた、かけがえのないものでした。
まとめ:2度目の「発酵」茶事を振り返って
ここまで長〜い記事をお読みくださり、ありがとうございます。
前回やった発酵茶事の記事の最後に
「また是非、こういった試みをしていきたいなと思います。」
と書きましたが、まさかそこから2ヶ月も経たないうちに、さらには普段からお世話になり、またその著作や活動から僕自身が大ファンである小倉ヒラクさんを正客(しょうきゃく:茶事におけるメインゲスト)としてお迎えして2回目を行うことになろうとは・・・本当に夢にも思いませんでした。
こうして長い記事を書き終えようとしている今でも、どこか夢見心地のようなふわふわとした高揚感があります。
しかし、同時にしっかりと地に足をつけて感じられる達成感もあります。『オッス!食国』で高まった発酵や日本の食への想いをそのままぶつけて具現化できた今回の発酵茶事は、個人的にもとても大きな糧となりました。
タイトルに「日本の文化コンボ」とつけましたが、まさに発酵と茶の湯のコンボ(コンビネーション)だったなあ、と思います。
コラボ(コラボレーション)というよりも、格闘ゲームのコンボのように、発酵と茶の湯にまつわるモノの見方や歴史に育まれた文化性、様々なものが絡まり合いながら連続ラッシュで畳み掛けてくるような、そんな貴重な経験でした。
今回、正客としてお越しくださったヒラクさん、ご連客の方々。
普段のご指導から準備・当日まで御支援を賜りました岡田宗凱先生。
当日サポートしてくださった同門の先輩・後輩の方々。
今回このような場が持てましたのも、皆様のおかげです。心より御礼申し上げます。
今後、ますます発酵に茶の湯に励んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
野中健吾 九拝
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