【書評】ビヨンド5Gが描く未来(著者:山中直明)
まえがき
「5G」「6G」ってみなさん聴いたことありますか?5G(ファイブジー)は、スマートフォンが5G対応!とか謳ってるので、聴いたことはあると思います。今日は、この5Gという新しい無線通信が広がることによって、どんな社会が訪れるかについて書かれた本を紹介します。5Gの技術書ではありません。
読者の中に、この「G」のことを、データ量(パケット量)と勘違いしていて、5G(ゴギガ)使えるプランと思っている人もいたり、WiFi(無線LAN)の5Gを見て、5G対応と思ってる人もいるかもです。後者は5GHz帯の電波を使ったWiFiのことで全く違う話です。本書で扱われている、5GのGはGeneration(世代)のGを取ったもので、第5世代の通信方式を使ったスマートフォンが5G対応スマートフォンとして販売されています。
第5世代とは?
私が大学生時代が第2世代と言われる時代で、ちょうど大学院に行く頃(2001年)くらいに、第3世代(FOMA)が登場しました。第4世代(4G/LTE)は2010〜2012年あたり、そして、2020年から第5世代(5G)の通信サービスが始まりました。こうしてみると、携帯電話の通信規格は、10年に一度大きく進化していることがわかります。
本書の内容をざっくり
本書は、下記の示すような章構成となっていて、5Gとはどういうものか、それが普及すると社会がどうかわるのかについて説明がなされていて、無線通信に関する知識がない方でもざっくりこの先20年を俯瞰することができるようになっています。
第1章:2030年に向けて何を実現すべきか
第2章:5Gとはなにか?(何ができるのか、何が変わるのか)
第3章:ローカル5Gで加速するDX
第4章:自動運転の最前線
第5章:映像配信の大転換
第6章:メディカルヘルスケアは5Gの激戦地に
第7章:スマートエネルギー社会の近未来
第8章:デジタルツインによる問題解決
第9章:ビヨンド5Gの最前線へ
第1章
2030年にどんな社会になっているかを簡単に俯瞰。よく考えたらあと8年後なので、割とリアリティの高い話が書かれてます。持続可能で、全地球人が幸福になるためには?
第2章
アプリケーションに応じて、高速・大容量 / 超多数端末 / 超高信頼・低遅延、な世界を実現する5Gの技術に関する説明。その世界におけるプラットフォーマーや産業構造の変化を予想。
第3章
WiFiのように利用者が基地局を設置して、その場所だけで使うローカル5Gの説明。ローカル5Gを使うことで、産業におけるDXの可能性を示唆。
第4章
5G活用の大本命でもある自動運転について、著者らが実施している実証実験にも触れながら解説。新たなデータビジネスの可能性も。
第5章
Youtubeなどで映像配信の民主化が進んだが、それが5Gによってさらに同進化していくかを予想。
第6章
ウェアラブルが普及した未来のヘルスケアについて言及。ちょっとページ数少なめで、5Gとの関係も薄め?
第7章
地域での電力マネジメントを仮想化するEVNO(Energy Virtual Network Operator)を土台に、5Gによってさまざまな電源の情報がつながった世界を予想。
第8章
デジタルツインとマルチエージェントシステムが5Gの活用で、さらにどう進化していくかを予想
第9章
ビヨンド5G推進戦略懇談会で策定されたビジョンの共有。現状と技術課題。未来予測に基づくバックキャスト型社会の到来。
私の書評
本書は、5Gが何かよくわからない、それが広がって何が変わるのかわからいない(単に速くなるの?くらいのイメージしかない)人にとっては、オススメの本です。多数の事例を交えながら、それが5Gによってどのように変わっていくのか、さらに社会にどういう変化を与えるのかという切り口でまとめられているため、身近な問題として理解ができると思います。文章も平易に書かれていて、コラムもたくさんあって、あっという間に読み終えることができます。
特に学生の皆さんは、社会に出て、我社では5Gを活用したスマート社会を目指すぞ!みたいな上司に出くわしたときに、一定の知識を持っているふりができます(笑)就職活動においても、5Gが広がったときにどんな会社が大きくなっている(反対に衰退している)かを予想して、就職先を選ぶのが良いでしょう。
なお、5Gの専門知識を深めたい人には向いていない本です。あしからず。