五反田界隈
昨日の芸能人インタビューは、さまざまな医療的なボランティア活動でも活躍している俳優のAさんだった。所属事務所のプロフィールによると、身長160cmとあるが、いやいや私より確実に低い。ヒールのある靴の彼女、ぺたんこスニーカーの私、並ぶと目線が下がるのだ。痩せているから余計に小柄に見える。どうでもいいけれど、そんなに高く思わせたいのかなあ。
「それで……最短で仕上げはいつ頃になるでしょうか」と、年末の急なお仕事で、依頼主は帰り際に恐縮しながらおそるおそる言った。はい、覚悟していまっせ。
取材場所のホリプロの事務所は、五反田から、大崎から、品川から同じような距離にあるデザイン性の高い高層ビルの12階だった。山手線の大崎駅はあまりにも近代的になっていて、地図を見ただけでは迷子になりそうだから、慣れ親しんだ五反田駅から歩いた。10代のころ、池上線沿線に住んでいたから、五反田駅は懐かしい。少しも変わっていなかった。当時はおしゃれできれいだと思っていた東急のショップビルもちっとも変わらず、いやダサい感じは否めないが、中学生、高校生のころに見た風景だ。
懐かしい、懐かしいと言いながら、都内や近郊を何十年ぶりかで歩く機会が増えている。私の人生の最後の総まとめなのか。思い出をたどって歩く、これ、シニアのあるあるだ。だから若い人に言いたい。いろんな場所で、いろんなものを、できるだけたくさん見ておくことを勧める。全部が血となり肉となり、老いゆく終盤の人生を豊かにしてくれるはずだから。