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イグレットの恋・道化師のなみだ【詩】


イグレットは恋をした
してはいけない恋だった


戒律厳しき天空より 
ささくれて下界をのぞいたら
世にも不思議な青年に 
瞳の奥の宝石が 
 カタリと動き
  コトリと傾き
   カチリとはまった

ささやく風 どよめく体液 縦横無尽な白うさぎ


青年は衣装ふくを脱ぐ
仮面を外す

外した仮面のその下に
消えぬなみだの痕ひとつ
衣装も仮面も仮の殻
鎖骨の奥の宝石が
 グルリと動き
  ドクリと刺さり
   ヌルリと消えた 

風知らず 血潮も知らず 縦横無尽な空虚心


ねえ ママ
お昼休みにね お空からね 女の人が降りてきたの
真っ白な大きな羽根をもってたの

でもね ママ
その真っ白がね ねずみ色になってね 
とうとう 真っ黒になっちゃったの

どうしちゃったんだろう
ねえ ママ 聴いてる?


天空いちの純白は
濡羽色ぬればいろへと変わり果て
かなしみ暮るるイグレット
瞳の奥の宝石は
 トクリと緩み
  ジワリと潤み
   ホロリと落ちた

陸風海風 慟哭ひとつ 縦横無尽なホトトギス


橘鶫さん作品



真の泪は仮面の真下
黒白格子の衣装と帽子
リアルを欺く青年ひとり

さあさこちらにきてごらん
おまえの泪を吸ってやる


ねえね ママ
ほらあれ あそこ
ピエロのとなりの 羽根のひと

ねえね ママ
この前の 真っ黒な羽根のひとだよ
ほんとだよ

ふたりは仲良しなのかなあ?
ねえ ママ 聴いてる?


イグレットのなみだを吸った道化師は
欺くリアルに欺かれ

そして愛を知った

初めて知った愛だった



      ・・・・・

今回は、橘鶫さんが以前、期間限定で公開され、その際にダウンロードした(ご許可はいただいています)堕天使の作品で、詩を書かせていただきました。

この詩ができるまでの経緯を少しだけ、以下に記します。


この六月に詠んだ、道化師の句。


鶫ちゃんは、毎回、私の句を読んでくださり、的確なアドバイスをくださいます。
そして、このときは、以下のような句の変遷がありました。


道化師の脱け殻ひとつ水中花 (紫乃元句)
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道化師の仮面をひとつ水中花 (鶫ちゃん推敲案)
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道化師の白き仮面や水中花  (紫乃)
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道化師の仮面の傷や水中花  (鶫ちゃん推敲案)
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道化師の仮面のなみだ水中花 (紫乃)
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道化師の泪の痕や水中花   (鶫ちゃん推敲案)


最後、なみだ・泪と、季語の水中花とは、近すぎるかも、もう少し推敲する、という流れになったのですが、推敲句ができる前に、今回のこちらの詩が浮かんでしまったということです。

詩としては、ちょっと安易というか、ベタというか、図った感がありありなのですが(笑)このお遊びのようなリフレイン・韻を作るのが大好きなもので、自己満足と、句のやりとりの記念のために、公開することにします。


本当は、六月下旬にはできていたのですが、ちょっとだけ手直しをして、本日の公開となりました。
イグレットという名前は、白鷺のことで、鶫ちゃんに「女の子の名前だと何がいい?」と伺って、いくつか候補をいただいた中から選びました。

ということで、ずいぶん遅くなってしまいすみません、鶫ちゃん。



やはりコラボは楽しいです🎶

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卯月紫乃
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