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Dive into the BLUE
ーオレとアチキの西方漫遊記(14)
予定の1時間遅れで安居渓谷(高知県仁淀川町)に到着したわが夫婦。「ポンコツナビゲーター(※)」こと、奥さんの珍ナビのおかげで、曲がりくねった山道で方向転換すること複数回。幾分神経を擦り減らしたものの、「仁淀ブルー」に飛び込む魅力には及ばない。水晶淵に程近い駐車スペースにクルマを止めるや、我先に目的地につながる遊歩道に向かう。にこ淵(同いの町)で泳げなかった無念を晴らすべく、夫婦揃ってやる気満々だ。
前回のお話:「ポンコツナビゲーター」/これまでのお話:「INDEX」
水晶淵
シュノーケリングセットを持ち出し、クルマのドアをロックすると、水晶淵に向かう遊歩道の入り口で奥さんが顔だけこちらを向けて待っていた。早くしろと言わんばかりの無言のプレッシャー。今回は奥さんが主役とお経のように繰り返し、小走りで向かう。
やがて見えてきた水晶淵。水は透明で青く澄み、文字通りの仁淀ブルーだ。もうちょっと気の利いたことが口をつけば良かったが、残念ながら十人並みの言葉しか出てこない。エメラルドグリーンに近かったにこ淵に比べてやや青が濃い。"アクアマリンブルー"とでもいうべきか。
水辺に近づくにつれて透明度の高さが一段と鮮明になる。底にある大小さまざまな石まではっきり見えた。魚は見当たらず。江戸時代に「寛政の改革」を主導した松平定信について、皮肉交じりに評したことで知られる歌の一節が思い浮かぶ:「水清ければ魚棲まず」
砂防ダム
水晶淵の周囲は人影もまばら。すでに水着も着ている。そして目の前には仁淀ブルー。このタイミングを逃す手はない。シャツを脱いでラッシュガードに着替えようと振り返ったとき、そう遠くない先に滝らしきものが見えた。目を凝らす。堰だろうか。
こちらの様子を伺っていた奥さんにあれは何かと尋ねてみる。どうやら砂防ダムらしい。こちらから見る限り、高さは4−5mといったところか。あそこから飛び込んだら爽快だなと不意に閃く。「先にあっちに行ってみようか」と奥さんに声をかけ、岩場に足をかけた。
「Dive into the BLUE」ー。その瞬間は確実に迫っていた。(続く)
(写真〈上から順に〉:"アクアマリンブルー"の水晶淵=りす、寛政の改革を主導した松平定信=イラストAC)
関連リンク(前回の話):
「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:
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