『遠野物語』評(下、参)
ー河童
柳田国男著『遠野物語』を通じて知ったのは、岩手県遠野市を中心に一部の地域で崇められている神さま、オシラサマについてだけではない。お馴染みの河童も、これまで知らなかったことがたくさんあると気付かされた。もう少し早く知っていれば、幾らか周囲にも話題を提供できたのにと悔やむばかりだが、もはや後の祭り。この先の生活の彩りに活かしたい。
「面の色赤き」
カッパと言って思い浮かべるのはやはり緑色。カッパをモデルにしたキャラクターは、体色を緑に描かれている場合が圧倒的に多い。ところが『遠野物語』を読んで以来、認識を変えた。この作品によると、「外の地にては河童の顔は青しというようなれど、遠野の河童は面の色赤きなり」という。そう、遠野のカッパは赤いのだ。
慌ててウィキペディアを見てみると、「全身は緑色または赤色」とある。まさか知らなかったのは自分だけかと不安になったが、それはそれ。認識をあらためるだけだ。この作品のおかげである。カッパをブランドキャラクターに採用している日本酒製造大手の黄桜は面白い。緑、白、橙とさまざまな体色のカッパがいて目を楽しませてくれる。
遠野のカッパはどうして赤いのかー。ある個人ブログによると、評論家の西舘代志子(西舘好子)は、この理由について、次のように自分なりの見解を話していたようだ:
実に重い解釈だ。ただ、あながち外れてもいなさそう。『遠野物語』には"デンデラ野"という姥捨ての話もあり、間引きを思い起こされるものが多くある。そのため、もしやカッパも、と思わざるを得ない。
カワウソ
カッパのミイラやら骨やら、今なお、伝えられているものが少なくない。好奇心をくすぐられるが、インターネットによると、多くは江戸時代のミイラ造形師が、ほかの動物の一部を組み合わせて作ったらしい。エイやサル、それにフクロウがよく使われたとか。怪異が実在した証拠ではないかと、ときめいてワクワクした気持ちを返してもらいたい。
よくあるカッパの手首のミイラは、たいていニホンカワウソの手首らしい。