バランスする楽と苦
ーオレとアチキの西方漫遊記(48)
奥さんの快気祝いを兼ねた旅行は、クリティカルなトラブルもなく進み、残すところ、東京の自宅に戻るばかりだ。これまで充実した時間を楽しんできたが、最後のゴールテープを切る直前に、"黄色い悪魔(※)"スズメバチに刺されるという"痛恨の一撃"をもらう。ここまで順調に来て、そのまま乗り切れないとは、どうにも詰めが甘い。その一方で、あらためて思い知ることもある:「楽と苦は常にバランスしている」
前回のお話:「続・黄色い悪魔」/これまでのお話:「INDEX」
幸運と不運
最後の宿泊地、静岡県伊東市にある義父の別宅。その風呂を占拠した黄色い悪魔たち。"駆逐"しきれなかった黄色い悪魔の残党に強烈な一撃をもらったが、本来、それを受ける確率が高かったのは、実のところ、先に風呂に入った奥さんだった。
そうした状況にもかかわらず、奥さんは無事。それどころか、風呂を存分に楽しんだらしい。奥さんによると、「コンタクトレンズもメガネも外していたので(黄色い悪魔の)生き残りがいたなど思いも寄らなかった」という。何という幸運。驚くよりほかはない。
逆に、奥さんの後に風呂に行ったこちらは、浴槽に浸かる前に不意を突かれ、目の前の湯を堪能することなく、早々に"撤退"する始末。まったくもって不運としか言いようがない。刺されなかった奥さんとの差について、当初は"持っている人"との差と感じていた。
当時の思いは、以下のページに詳しく書き留めている:
心境の変化
ただ、そんな思いは今、ほとんどない。黄色い悪魔に一撃をもらう運命が変えられない前提とするならば、持っている人は奥さんより、むしろ、こちらではないかという気持ちにまで変わっている。
ようやく退院した奥さんが、快気祝いを兼ねた旅行で、黄色い悪魔に一撃を浴び、再び不安になる状況は、あまりに悲しく、見ているこちらも辛い。文字通りの「泣きっ面に蜂」で、旅行に良くない記憶しか残らない。
ただ、そうした状況は避けられた。それは幸運に違いない。夫婦揃って痛い目に遭わない状況がベストだが、テレビ時代劇『水戸黄門』の主題歌にも「人生楽ありゃ苦もあるさ」とある。そして、こう続く。
涙の後には虹も出るーー。(続く)
(トップ写真:「苦楽はバランスする」とりす=フリー素材でりす作成)