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ほぼ全てのアルバムを聴いたけど一番好きな作品かもしれない。
何かをしながら流すBGMは最近ずっとこれ。note書いてる時もずっと流している。やっぱりRadioheadかっこいいよな!他のバンドには到底出す事が出来ない世界観だと思う。
Ok computerやThe Bends等、Radioheadのアルバムのフェイバリットに挙げられる作品はあるけど、このアルバムは好きだけど一番ではないなっていう人は多いと思う。
なんというかかなり異色の作品である事が先ず第一。そもそもこれはロックと呼べるのか?という疑問が生まれる。折角成し遂げたロックバンドとしての功績を、たった一枚のアルバムでぶっ壊して見せた。KID Aの異色さ...。不気味さ。
トム・ヨークがこのアルバムを語る際に、今までのイケていたロックバンドRadiohead。それをクソだと全否定した彼の異端さ。僕はあの発言を聴いて「この人はマジで生けるロックだ」そう思った。そしてこのアルバムの第一曲目を飾る超異端作 Everything in it's Right Place で僕は完全にハートを射抜かれました。
ドラマアリソン・デュボアのオープニング曲に使われた事によって、Radioheadを知らない層の人たちも聞いたことがあるって人は多いかと思います。
すべてのものはあるべき場所にという意味合いがあるこの曲。すべてのものはあるべき場所に、全てが歪んでいようともそこにあるという深い意味に聞こえる。バンドの状態、トム・ヨークの鬱病気味の精神状態。例え歪んでいたとしても、全てはあるべき場所にという彼らなりのメッセージなのだろうか?
僕はこの曲を聴くと毎回ゾクゾクしてしまいます!そうこういう音が聴きたかった。全編エレクトロニクスのあるまじきロックの姿。でも僕はこういう姿勢が見たかった。ロックという枠をブチ壊し、時にタブーを犯し、そして自らの怒りや苦しみをぶつける。それが一曲目からヒシヒシと感じることが出来たんですよ。
タイトルトラックのKid A。オルゴールの不協和音に誘われて、トムの倦怠感のある潰れた歌声。不気味で美しくてその旋律に耳を奪われてしまいます。これぞまさにロックアンビエント!次世代のロックの姿です。そしてこの曲もメディアに対する批判的な曲。怒りをぶつけているのです。
こちらにこの曲を詳しく考案している方の記事があります。
意味のない言葉、社交辞令。棒の先をついた人物と腹話術師。物言えぬ立場の人間に対し、メディアが好き放題に語る姿を揶揄した一説だと記事の方は語ります。
まさにトム・ヨーク、Radioheadが直面していた問題ですよね。「今までの功績などクソ喰らえ」すべてのロック業界、マスメディア、そして自分自らにも中指を突き立てるそんな意味合いがあるのかもしれません。
The National Anthemはこのアルバムの中で、唯一のロック色が強いです。ですが飽くまでも形だけでロックファンからすればこれはロックではない!!と騒ぐでしょう。きっと彼らなりの反抗心でしょうね。しかもこれを国歌だと歌っているんですから。
トム・ヨークが直面した問題。それは自分だけが感じる心の闇だと信じていた。自分だけが取り残された世界。でも周りを見渡せば人々は行き交う道を歩く理由を考える。世界は広くそして狭い。人々は皆同じ場所に集まり、身を寄せ合っている。そうなのだこの国家こそ歪んでいる世界なのだ!と彼らはこの国歌を馬鹿でかい会場で毎日群衆へ向けて叫んでいるという事です。これをロックと呼ばずになんて呼ぶんだという話しですよ!
How to Disappear Completry=どうやって完全に消え去る事が出来るだろうか。
ロックとアンビエントの融合。ギターのスライドの音とバックで流れるストリングスがまるで自分の身体を浮かせて、消え去っていくような静けさに包まれます。静粛な彼らなりのバラードです。これもまた、Radioheadでの活動を、今までの功績を否定するような。自分はここにはいない、何も起こっていない。自分は飛び去って好きな場所へ行くという。完全に現実逃避の歌ですね。
これぞまさにロック業界の闇。一気にスターダムにのし上がり、そして周りには知りもしない人間がついて回る。そして孤独になり、全てを投げ出したくなる。誰もが夢見るロックスターの姿が赤裸々に明かされていくような曲です。トム・ヨークという人間が如何に繊細な男なのかがわかります。
treefingersでは、もはや身体は完全に消えかかってゆきます。実態すらも掴めぬまま、浮遊し夢に堕ちる。意識も朦朧としながら、起きているのか、眠っているのかもわからない。だけど目の前に広がる世界は、全てを包み込んでゆく。全てを預け、全てを投げ捨て、ただひたすらその音に身を委ねていく。
Optimistic=楽観的という意味。ですが歌詞を見ればそれがそんな明るいものではないと気が付きます。大量消費社会への批判。ハゲタカや大きな魚が弱いものを食い潰す、恐竜というのは大手企業の姿。この世の中はそういった序列の中で生きている。そしてOptimistic。楽観者はその実態を知らずに、加担し続ける人達を揶揄する言葉です。どんだけ努力をしようと、頑張ろうと大量消費の大きさに飲まれ続ける。その社会から逃れる事が出来ない楽観主義者を歌った曲です。いやぁ深いですね…。
宙ぶらりんという意味のIn Limboは特徴的なイントロからスタートします。何処か陽気にも聞こえるギターの単音のリズム。何処となく異国の香りがします。忘却の彼方という意味合いもあるタイトルですが、何処となく地に足がつかない、ふわふわした危うさがある印象です。
こちらの方の考案で曲中に出て来る海という表現が情報社会を表しているのではないか?という考えを出しています。自分で受取りにいかなくても、情報は全て入ってくる。部屋にいながら自分は何でも受け取れてしまう。その便利さ故に、誰でもオンラインに繋がる時代。いつしかその世界が攻撃的なものになって、オフラインの方が居心地が良い環境になるという考案。ネット社会を揶揄する様な内容でしょうか?便利でありながら豊かではない、そういうメッセージが込められているように感じました。
idiotequeはイディオット(アホ、間抜け)という言葉と、ディスコティクを混ぜた造語です。Who's in the bunkerというのはシェルター。即ち核戦争を歌った曲でしょうか?化学兵器で人の命が落とされている現実で、安全な場所に身をおいて眺める人間へのアンチテーゼ。戦争というキッカケを作りながら、そのゲームを楽しんでさえもいるという内容なのかな?そいつらは人間が滅びるまで搾取し続ける。飲み込み続ける。最悪な巨大兵器をちらつかせ、恐怖に怯えさせる事によって…。トム・ヨーク節満載の歌詞です。本当に彼の歌はかっこいい!
打ち付けるスネアのサウンドで幕を開けるMorning bell。
こちらの作品は二つの解釈がされている様です。家に住み着いた亡霊という意味と離婚をテーマにしたという説と。
僕はどちらと解釈は出来ませんが、何処となく不気味な雰囲気が匂わされているので、前者説が強そうです。
身の回りの物が散乱しグチャグチャになる。危うい精神状態を歌っており、自暴自棄になりもう放っておいて欲しい、構わないで欲しいという主人公の願い。そうして蠢く何か、その足音を聞いている。聞こえてくる。もう精神状態もかなり危ない状況でしょうね。なにせ常に何者かもわからない影に追われ続けるんですから…。おかしくならないはずがないです。
スネアのロール音がリフレインされてとてもいい曲です。静粛で落ち着く曲で、まさかそういった意味合いがあるとは思えませんよね…。
ラストの曲 Mortion Picture Soundtrackはまさに映画のエンディングの様な感動的な雰囲気があります。ですがそんな単純なもので終わらせないトム・ヨーク。彼のシニカルさが前面に出まくっています。皮肉感たっぷりの曲ですw
現実と偽りの間で苦しみ続ける。当たりの良い言葉も意味を成さない。感動の映画も作り物に見える。現実なのか偽りなのかもわからない。自分が間違っているのか、世の中が間違っているのかもわからない。ただひたすら堕ちていく自分を描いています。人は何かの枠に入る事で安心をする。目先の快楽で心を埋めようとする。そういった物からの脱却、いや諦めというべきでしょうか…。とっても悲しいラストです…
僕はこの作品こそRadiohead史上最高傑作だと言いたいです。ロックを否定して、古参のファンが離れて、Radioheadどうなっちまったんだ?と言われてしまう問題作となりましたが、いやいやこれこそがRadioheadであり、本質なのでは?と思ってしまいます。Creepの成功で彼らは狂ってしまう。何処へ行ってもCreepを歌えと言われてしまう。そして彼らの名作であるOk Computerの世界的ヒット。そうして獲得したファンをさらにふるいにかける。言ってしまえば、本当のファンだけを残していく為彼らは試したのではないかなと。流行り廃りではない、本気のロック。本気の怒り、悲しみ、諦め、そして社会への反抗心。それこそがKid Aなのです。
僕はこれを語らずしてRadioheadは語れないとまでも思ってしまう程です!大好き過ぎてもはや何度聴いたのか覚えていませんwそれくらい毎日のように聴いたアルバムです!思い出の作品なんですよKid Aは。
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もしこのアルバムを聴いたことがないという方は、是非僕の記事を読んで聴いて見てください。一度では理解が出来なければ、何度も何度も繰り返し聴くことです。それこそ擦り切れるまで、そうする事でようやくこのアルバムの良さに気がつく事が出来るはずです。いやいや僕もそうでしたからw結構難しいアルバムなんですよ。それくらいこのアルバムのメッセージは強大だと言うことですね!
それではまた🎧🎧🎧🎧🎧🎧