マガジンのカバー画像

ゆる登山本の話

5
「東京近郊ゆる登山」をはじめとする、西野が手がけた山ガール向けガイドブック関連のウラ話です。
運営しているクリエイター

記事一覧

1999年:ゆる登山前夜(5)

 1998年秋の北海道から帰ってきて、私は無性に山に登りたくなりました。

それまでは「北海道で山を歩く」だけでよかったのです。でも、もしかしたら北海道じゃなくても…関東近郊の普通の山でも楽しいのかもしれない。でも、何から始めたらいいんだろう。

たまたま、当時勤めていた会社に、学生時代にちょっとだけ山を歩いていたという先輩がいました。わらをもすがる思いで相談したら、彼が仕事関係で親しくしている方

もっとみる

棚からぼた餅:ゆる登山前夜(1)

2010年4月、実業之日本社より初めての著書「東京近郊ゆる登山」発行。

山ガールをターゲットにした、登山のガイドブックです。全く無名のフリーライターが書いた本にもかかわらず、多くの初心者たちに手に取ってもらっています。ありがたいことです。

この本は貴女が持ち込んだ企画ですか?

よく聞かれるのですが、残念ながら違います。

2009年の夏のこと。旅行ガイドブックの仕事でお世話になっている編集者

もっとみる

敵は思い込み。ゆる登山前夜(2)

「富士山はゴールの山じゃないんですよ」

女子向けの登山ガイドブックを立ち上げたとき。I氏と私の初めのコンセプトは「高尾山から始まり、富士山を目指す」みたいな本でした。簡単に登れる山からステップアップしていき、ゴールは富士山。

ところが。この本でイラストを描いていただく、鈴木みきさんと話をしているとき、あっけなく言われました。富士山は高い目標とかじゃなく、登りたいと思ったら登ってしまう山。初めて

もっとみる
行きたくなるように:ゆる登山前夜(3)

行きたくなるように:ゆる登山前夜(3)

読んだ人に「ここに行きたい」と思わせるようなコースガイドを。

それが、編集I氏からの唯一、かつ最大の注文でした。

先にも書きましたが、それまでのガイドブックというのは、●●駅から右に進み、信号を渡って登山道へとか、斜面を直登とかトラバースとか、山頂からは●●山や××山が見えて…など、いってみれば「道案内」ですよね。

そうではなく、たとえばここからこんな景色が見えるとか、木漏れ日がキラキラする

もっとみる

1998年9月:ゆる登山前夜(4)

いつから山を始めたのですか?とよく聞かれます。

両親や身近な人が山好きだったわけでも、大学で山岳部だったわけでもありません。山に登ろう、と思ったのは1998年9月のこと。

当時の私は山好きではなく、「北海道が好きな旅人」でした。ユースホステルを利用してひとりたびをする人。自然豊かな地の宿に泊まり、泊まった人どうしで山や自然散策に出かけるのが好きでした。登山は旅でするイベントのひとつでしかなく、

もっとみる