棚からぼた餅:ゆる登山前夜(1)

2010年4月、実業之日本社より初めての著書「東京近郊ゆる登山」発行。

山ガールをターゲットにした、登山のガイドブックです。全く無名のフリーライターが書いた本にもかかわらず、多くの初心者たちに手に取ってもらっています。ありがたいことです。

この本は貴女が持ち込んだ企画ですか?

よく聞かれるのですが、残念ながら違います。

2009年の夏のこと。旅行ガイドブックの仕事でお世話になっている編集者のI氏から「女子向けの登山ガイドブックを作りたい」と相談がありました。この年の春に昭文社から「東京近郊ミニハイク」という、画期的な登山のガイドブックが発売になりました。山に興味を持った女子たちの心をわしづかみにし、爆発的に売れた本です。おそらく、登山のガイドブックを作っている出版社ならどこでも、その市場で「二匹目のどじょう」を狙ったはず。

I氏が他の出版社の人と違っていたのは「ターゲット読者に近い世代の女性の著者」にあたりをつけたことでした。当時も登山のガイドブックは世の中に沢山出ていましたが、その著者は、ほぼ全員が登山ガイドや登山歴数十年の年配の登山者でした。彼らの書くガイド文は、昔から山をやっている人たちには理解できても、山の素養が全くない人には難しい。

実際、2010年の春に出た本の大半は、体裁は多少女子向けにしていても著者は昔ながらの方々、書いてある中身も昔ながらのテイストでした。だからこそ差をつけることができたのだと思います。…今はもう、女性が書く女性向けの登山ガイドブックも珍しくなく、それだけで売れる時代ではなくなってしまいましたが。

好きな山を歩いて原稿が書けるなんて、そんな嬉しい話を断るわけがない。

…そんなわけで、原稿かきを生業にはしていても、山に関してはただ好きなだけ、という素人山ヤの目の前に、甘くて大きなぼた餅が落ちて来たのでした。

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