腰椎のフラットバック(Flat Back)のリアライメントを行うには、筋膜、神経、運動連鎖の3つの観点を統合したアプローチが有効です。それぞれの観点からの評価と治療法を以下に説明します。

1. 筋膜の観点からのアプローチ

フラットバックは、腰椎前弯が減少し、骨盤の後傾や体幹筋の不均衡が原因で起こります。筋膜の不均衡を整えることで、リアライメントを促進します。

① 評価

• 短縮または過緊張している筋膜:
• 腰背筋膜(多裂筋、脊柱起立筋):過剰に緊張し、腰椎の伸展を制限。
• ハムストリングス:骨盤を後傾させる原因。
• 腸腰筋や大腿直筋:骨盤の前傾不足に関連。
• 弱化または機能低下している筋群:
• 腹横筋:体幹の安定性不足。
• 殿筋群(大殿筋、中殿筋):骨盤の支持能力低下。

② 介入方法

筋膜リリース

• 腰背筋膜リリース:
• 患者を側臥位または四つ這いにさせ、腰背筋膜に圧を加えてリリース。
• フォームローラーや徒手療法を使用。
• ハムストリングスリリース:
• 仰臥位で膝を軽く屈曲させた状態で、ハムストリングスを伸張しながらリリース。
• フォームローラーやマッサージボールを使用。

筋膜ストレッチ

• 腰椎伸展ストレッチ(腰椎の可動性を高める):
1. 患者を仰臥位にし、膝を軽く屈曲。
2. 腰部を緩やかに伸ばし、反りを作る。
• 腸腰筋ストレッチ(骨盤前傾を促す):
1. 片膝立ち姿勢をとり、後ろ脚側の腸腰筋を伸ばす。
2. 腰を軽く反らしながら骨盤を前方へ押し出す。

2. 神経の観点からのアプローチ

神経系の緊張や滑走性の低下がある場合、運動の自由度が制限され、フラットバックの改善が難しくなります。神経系の正常化を図ることが重要です。

① 評価

• 坐骨神経の緊張評価:
• **SLRテスト(Straight Leg Raise Test)**を行い、神経滑走性や可動域の制限を確認。
• 腰椎神経根の圧迫:
• 圧迫がある場合、関連する筋群の筋力低下や痛みを評価。

② 介入方法

神経モビライゼーション

• 坐骨神経のモビライゼーション:
1. 仰臥位で、脚を持ち上げた状態で膝を屈曲と伸展。
2. 同時に足関節の背屈と底屈を組み合わせ、神経滑走を促進。
• 脊髄神経根のモビライゼーション:
• 四つ這いまたはキャット&カウポーズで、脊柱全体を屈曲と伸展させ、腰椎の動きを改善。

体幹深部筋の再活性化

• 腹横筋や多裂筋など、神経入力が低下している深層筋をターゲットにする。
• 腹横筋の再活性化エクササイズ:
1. 仰臥位で膝を立てた状態。
2. お腹を軽く引き締め、骨盤底筋を同時に収縮。

3. 運動連鎖の観点からのアプローチ

フラットバックでは、骨盤、腰椎、胸椎の連鎖的な動きの崩れが問題となります。運動連鎖全体を評価し、機能改善を目指します。

① 評価

• 骨盤-腰椎-胸椎の連鎖動作の観察:
• スクワットやヒップヒンジ動作で、骨盤の後傾や腰椎の屈曲パターンを確認。
• 立位体前屈テスト:
• 腰椎が適切に可動していない場合、全体の動作パターンに偏りがある。

② 介入方法

骨盤と腰椎の連動トレーニング

• ペルビックティルト(Pelvic Tilt):
1. 仰臥位で骨盤を前後に傾ける動作を練習。
2. 腰椎の前弯と後弯を意識的に強調。
• キャット&カウ(Cat & Cow):
• 四つ這い姿勢で、骨盤と腰椎の動きを連動させて柔軟性を向上。

全身の運動連鎖改善エクササイズ

• ヒップヒンジトレーニング:
• 立位で骨盤を前傾させながら、腰椎を自然な前弯位に保つ。
• デッドリフトの軽いバリエーションを用いる。
• スクワットのフォーム修正:
• 骨盤が後傾しすぎないように意識し、股関節と膝の適切な動きを誘導。

4. 統合的なアプローチの流れ

1. 筋膜のリリースとストレッチ:
• 短縮している筋群(腰背筋膜、ハムストリングス)のリリースとストレッチを行う。
• 骨盤前傾を促す腸腰筋ストレッチを追加。
2. 神経滑走性の改善:
• 坐骨神経や脊柱神経根のモビライゼーションで神経系の緊張を緩和。
• 深層筋の再活性化を行い、神経筋の連携を強化。
3. 運動連鎖を改善するトレーニング:
• 骨盤と腰椎、胸椎の連動を促す運動を取り入れ、自然な腰椎前弯を再構築。
• スクワットやヒップヒンジのフォームを調整し、日常動作やスポーツ動作に適用。

これらのアプローチを組み合わせることで、腰椎のフラットバックに対するリアライメントを効果的に行うことができます。評価と治療を反復しながら、改善を確認することが重要です。

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