見出し画像

プレゼンティーイズムを理解し「攻めの健康経営」へ

健康経営®の取組状況をチェックする「健康経営度調査」は、毎年12月ごろに実践レベルを評価した「フィードバックシート」の速報版が企業へ返送されてきます。翌3月にはこの評価結果を踏まえ、2022年度の健康優良銘柄や健康優良法人が選定される大切な評価です。

2022年度の調査票から大きな傾向を見ると、特に、従業員のパフォーマンス(生産性)に関する設問に関心が集まっているようすが見て取れます。
現在、健康経営の投資対効果を評価する指標をもとに、定量的測定ができるようになっています。そのひとつが「プレゼンティーイズム」です。

本記事では、プレゼンティーイズムとは何か、どのようにして評価するのかについて、基礎的な事項を整理します。
まもなく返送されるフィードバックシートを読み取り次年度の取組みに活かせるよう、準備しておきましょう。

プレゼンティーイズムは企業の体調不良センサー

はじめに、プレゼンティーイズムとは何か、なぜ起きるのかなど、全体像を押さえていきましょう。

プレゼンティーイズムとは

プレゼンティーイズムは、従業員が企業の生産性へ与える影響度を評価する指標のひとつで、心身に何らかの症状を抱えながら勤務につき、業務を遂行する能力や生産性が低下している状態をいいます。
出社はしているけれど仕事に集中できず、ミスや作業効率の低下など、健康関連でのコストが増えている状態です。

アブセンティーイズムとの違い

プレゼンティーイズムと似た評価指標に「アブセンティーイズム」があります。これは、病欠や病気休業など、心身の不調が見える形になって現れ、出社できていない状態をいいます。

勤怠管理で分かる形をとって健康関連コストを増大させているのがアブセンティーイズム、まだそこまで表に出ていないものの、業務パフォーマンスが下がって間接的に健康関連コストを増やしているのがプレゼンティーイズムといえます。

プレゼンティーイズムはなぜ起きるのか

このような不調はなぜ発生するのでしょうか。その背景として職場の環境や働き方が影響し、次のような心身の健康上の問題が生じていることが考えられます。

  • 運動器・感覚器障害:頭痛、腰痛、肩こり、眼精疲労など

  • メンタルヘルス不調:ストレス、ワーク・エンゲイジメント、うつ病など

  • 心身症:動機・息切れ、食欲不振、下痢など、ストレス性の内科疾患

  • 生活習慣病:肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、脳卒中、心臓病など

  • 感染症・アレルギー:風邪、インフルエンザ、花粉症など

健康経営オフィスの効果モデル
(出典:経済産業省『健康経営オフィスレポート』)

健康経営にプレゼンティーイズム対策が不可欠な理由

プレゼンティーイズムが健康経営度調査で注目されているのは、表向きには問題なく勤務しているようにみえても、業務効率に影響を与えて間接的に健康関連コストが生じている状態であり、経営全体でみた場合には、プレゼンティーイズムによる健康経営への影響が大きな課題となっているからです。

下の図は、WHO-HPQの指標(後述)によりプレゼンティーイズムを評価した健康関連コストの試算結果の内訳です。
明確に医療費がかかる部分やアブセンティーイズムといった直接的なコストより、プレゼンティーズムによる間接的コストのほうが圧倒的に多いことが見て取れます。
健康関連コストの実に4分の3以上、約78%も占めるプレゼンティーイズムは、健康関連コストの最大の原因となっているのです。

健康関連総コスト
(出典:経済産業省『企業の「健康経営」ガイドブック(改訂第1版)』)


プレゼンティーズムの場合、まだ勤務上の明確な問題になっていないからと手当の優先度を下げてしまいがちですが、そのままにしておくと健康経営上の大きな足かせになってしまいます。
医療費だけでなく、プレゼンティーズムを含めた健康関連コストを把握し、全体最適で取組みを進めていくのが、健康経営の基本的な姿勢です。

逆に言えば、プレゼンティーズムの段階でしっかりと手当していくことにより、未病のうちに課題を解決して職場の生産パフォーマンスを向上させる「攻めの健康経営」にもつながっていくといえるでしょう。

プレゼンティーイズムを評価する5つの指標

プレゼンティーイズムを客観的に測定するのは、医療費の場合のレセプトのように明確なデータがとれるわけではないため、何らかの調査が必要になります。かつては、時間内あたりの作業処理量など、実際の生産性の測定から評価していたこともありますが、現代の知識労働では限界があります。

このため、主に採用されているのが従業員の自記式質問票による調査です。回答時に従業員の主観が入るものの、質問票については一定の検証が進み、有力な方法が開発されています。
経済産業省の『企業の「健康経営」ガイドブック』では、主な指標として、次の5つが挙げられています。

WHO-HPQスケール

WHOで採用され、世界的に使用されている質問紙「WHO健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(ハーバードメディカルスクール作成)」を用いています。
評価は3項目で構成され、結果は絶対的プレゼンティーイズムと相対的プレゼンティーイズムの2つで表示されます。日本人の気質を考慮すると、健康関連コストの算出時には、相対的プレゼンティーイズムを用いるほうが良いとされています。

東大1項目版

東京大学のワーキンググループが作成したもので、アンケートの設問数を減らして負担軽減を図っています。プレゼンティーイズムの意味をそのまま反映させたアンケート1項目で評価します。

WLQ(Work Limitations Questionnaire)日本語版

アメリカのタフツ大学医学部が作成した質問項目です。「時間管理」「身体活動」「集中力・対人関係」「仕事の結果」の4つの尺度、25問で構成されています。

WFun(Wrok Functioning Impairment Scale)

産業医科大学が開発したもので、健康による労働機能障害の程度を測定する調査票です。7つの設問で構成され、合計得点で評価します。

QQmethod

はじめに健康問題の有無を確認した後、「有」の従業員に対し、健康問題の内容、症状がある期間、仕事の量、仕事の質の4つの設問で調査し、10段階評価で把握します。

回答・集計の負担が少ないデータ管理を

プレゼンティーイズムの測定は、従業員の自記質問票により行われるため、回答側にも集計側にもそれなりの負担がかかります。特に紙面で行った場合は、配布やとりまとめ集計、情報管理など運営側の負担が非常に大きくなります。
健康管理アプリなど、ICTを活用したプレゼンティーイズムの測定であれば、従業員も時間と場所の制約なく手軽に回答できますし、運営側としても、集計が自動で行え、経年の比較などの分析もデータ管理もしやすいため簡単になります。

WellGoではアプリやwebサイトを利用し、デジタルでプレゼンティーイズムの調査を実施し、健康経営に有効活用する総合的な健康管理システムの仕組み構築を支援します。
集計が非常に楽になり、回答する従業員も管理する担当者も、負担が軽減されます。
さらには、運動・食事・睡眠といった様々な健康管理データと統合し、従業員一人ひとりの生活に合わせたプレゼンティーイズム改善の仕組みもつくりやすくなるでしょう。

これまで取り組んできたプレゼンティーイズム対策を踏襲しながら、さらに一歩先を見据えた健康経営戦略に活かす方法など、総合的なご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。


※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?