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#02 ティーチングとコーチング……よく似ているけれど、実はまったく別物



~過去投稿はマガジンから~

#01 ではコーチという言葉の由来と、コーチングが定着するまでの歴史を簡単に述べてきました。

コーチングのもともとの意味が「大切な人を、その人が望む場所へ送り届けてあげること」なら、コーチングは「知識やスキルを教えてあげること」と理解する人がいるのではないかと思います。
 
しかし、コーチングは「教えてあげること」ではありません。
「教えてあげること」は「ティーチング」という別の言葉があります。

コーチングもティーチングも、目標達成へと導くために行われるという点では共通していますが、アプローチの仕方がまったく異なります。

ティーチングとは、まさに学校で先生が生徒に教えるように、知識やスキル、問題の解決方法を、一方的に教えることで目標達成を促します。

ティーチングの大きな特徴は、目標達成のために何をどうしたらよいかという答えは、「教える側にある」というスタンスをとるところです。
つまりビジネスシーンでのティーチングは、学校の授業と同じように、教える側からの一方的なコミュニケーションになりがちです。

学校を卒業したばかりの新入社員は、社員としての知識もスキルも不足しています。
自分に与えられた課題を行っていくうえでの知識もスキルも不足しているので、何をどうしてよいのかわからないのは当然です。
先輩や上司は新入社員に手本を見せ、一つ一つ仕事のやり方を教えてやらなければなりません。
まさにティーチングです。

連合艦隊司令長官であった山本五十六が遺した有名な言葉に「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」がありますが、
これはまさにティーチングをする側の心構えを説いたものといってよいでしょう。
 ちなみにこの言葉には続きがあり、「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」人材育成の当を得た言葉として大いに参考になります。

さて、一方コーチングは、「目標を達成するためにどうしたらよいかの答えは、相手の中にある」というスタンスをとります。
そのため、コーチングでは答えを教えないのです。

コーチと相手との双方向の対話(コミュニケーション)を重要視し、コーチが質問し、相手がそれに答えるという対話を重ねることをとおして、コーチが相手の中にある答えを引き出していきます。
私たちは時として、「頭ではわかっていても、行動できない」という状況に直面することがあります。
それを解決するための支援を行うことこそコーチングなのです。

別の言い方をすれば、コーチングとは、相手は自分の課題を実現するための知識も技能もあるが、「あれ?なぜうまくいかないのかな?」「こんなはずじゃない」などと、思い描くように事が運ばない時にサポートすることです。

つまり、コーチングとはコーチと相手との双方向のコミュニケーションであり、相手に質問をして気づきを促すことなのです。

コーチの質問に答えながら、自ら答えを発見するように導くことがコーチングの最大のポイントなので、コーチングの成否はコーチの「質問力」にかかっているといっても過言ではありません。

※本コンテンツはCOCORO 36号をもとに再構成しています

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著者プロフィール

小野仁美(おの ひとみ)

群馬県沼田市出身。株式会社リクルートに入社、就職情報誌の編集を担当。
株式会社東京ストレスマネジメントに転職し、ストレスマネジメントセミナーやコミュニケーションセミナー等を担当。
その後、新規事業部を立ち上げ事業部長として営業と運営に従事。
1999年、株式会社コーチ・トゥエンティワン設立に伴い取締役就任。
アメリカのコーチユニバーシティのマスターコーチに師事。
米国ICF認定のプロフェッショナルコーチの資格を取得後、2000年に独立。
株式会社ビューティアンドサポートを創業し代表取締役社長に就任。
経営者や管理職、起業家、医療従事者、各種専門家など個人向けのコーチングを多数実施。

企業内研修、企業内コーチの育成やエグゼクティブコーチング、ビジネスコーチングをはじめ、現在も多数担当。著書に『自分は自分で変えられる』(PHP研究所)、共著に『周りの人をハッピーにする!はげまし言葉ハンドブック』『コーチング一日一話 今日から始める「気づき」の365項目』(以上、PHP研究所)などがある。
株式会社ビューティアンドサポート取締役社長プロフェッショナルコーチ