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精神科医からの宿題

先日の診察で、かかりつけの精神科医に一つの宿題を出された。

「不安のメリットはなんでしょう?」

次の診察までに考えておいてください、と。

その一言を受けてからというもの、この「不安」という感情について改めて向き合い、頭の中で何度も問いかけている。

普段、不安はただただ辛く、邪魔なものとして扱ってきた。

しかし、もし「メリット」を見出すことができれば、少しは不安との付き合い方が変わるのだろうか。

そんな思いで、これを書きながら考えを整理してみたい。

「不安は悪いもの」という思い込み

まず、「不安」という感情をどう捉えてきたかを振り返ってみる。

私はこれまで、不安に悩まされることが多かった。

そのせいで動けなくなったり、物事を悲観的に捉えすぎて必要以上に自分を追い詰めたりしてきた。

不安に対して抱くイメージは、ネガティブなものばかりだ。

「不安は消えればいいのに」
「不安なんて私に必要ない」

そんな風に考えることも多かった。

けれども、精神科医の「不安のメリットは?」という質問を受けて、ふと立ち止まって考えさせられた。

不安がただの「悪者」だと思っている限り、この感情と向き合うことができないのではないか、と。

不安の正体を探る

そもそも、不安とは何だろう。

心理学的には、不安は「未来に対する漠然とした恐れ」や「危険を予期する感情」だとされる。

それは、私たちが身を守るための自然な反応でもある。

危険を察知し、回避しようとすることで、生存率を高める役割を果たしてきた。

例えば、原始時代の人間が危険を予測せずに何も恐れなかったら、猛獣に襲われたり毒のある植物を食べたりして命を落としてしまったかもしれない。

つまり、不安は私たちの先祖が生き延びるために必要不可欠な感情だったのだ。

現代でも、不安はある種の「警告装置」として働いている。

不安が教えてくれること

不安がメリットとして機能する瞬間は、意外と日常の中にも隠れているのかもしれない。

たとえば、以下のようなケースがある。

準備を促す力

試験やプレゼンの前に不安を感じることがある。この不安は決して楽しいものではないが、そのおかげで「勉強しなきゃ」「しっかり準備しよう」と思い、結果として良いパフォーマンスにつながることがある。

つまり、不安が行動を起こす原動力になる場合があるのだ。

リスクを回避させる力

夜道を一人で歩くとき、不安を感じるのは自然なことだ。

この不安があるおかげで、慎重に行動し、危険を回避するための対策を取ることができる。

不安がなければ、無防備に行動してしまい、危険にさらされるリスクが高まるだろう。

自分の価値観に気づくきっかけ

不安は時に、自分が何を大切にしているかを教えてくれる。

例えば、大切な人との関係に不安を感じるとき、それはその人との関係を失いたくないからこそ湧き上がる感情だ。

不安を通じて、自分にとって重要なものを再確認できるのかもしれない。

不安との付き合い方を変える

こうして考えると、不安は必ずしも「悪」ではないように思えてくる。

不安には、私たちを守り、行動を促し、気づきを与える役割がある。

ただし、その不安が過剰になると、むしろ私たちの行動を制限し、日常生活に支障をきたしてしまうこともある。

そこで必要なのは、「不安をなくす」ことではなく、「不安と上手に付き合う」ことなのかもしれない。

例えば、不安を感じたとき、その原因を冷静に分析してみる。

何に対して不安を感じているのか?その不安は現実的なものなのか?解決できるものなのか?

こうした問いを自分に投げかけるだけでも、不安に飲み込まれることを防ぐことができる。

また、すべての不安に意味があるわけではないということも忘れてはいけない。

中には、ただの思い込みや過剰な心配から生じる不安もある。

こうした不安は「また考えすぎているな」と受け流すことで、少しずつ自分の中でコントロールできるようになるのではないだろうか。

私にとっての不安のメリット

精神科医から出された宿題を通じて、不安のメリットについて考える時間を持てたのは良い機会だった。

私にとって、不安のメリットとは以下のようなものだと感じる。

自分を守るシグナルとして機能する

不安は危険やリスクを知らせてくれる「警告装置」だ。

そのおかげで、慎重な行動を取ることができる。

行動を促すモチベーションになる

不安があるからこそ、準備をする。

完璧でなくても、努力をするきっかけを与えてくれる感情だ。

自分の大切なものを再確認させてくれる

不安を感じることで、自分が本当に何を守りたいのか、何に価値を置いているのかに気づくことができる。

おわりに

「不安のメリットはなんでしょう?」という問いに対して、完璧な答えを見つけられたわけではない。

それでも、不安をただ否定的に捉えるのではなく、その役割や意義について考えることで、不安への見方が少し変わったように思う。

不安は辛いし、できれば感じたくないと思うことも多い。

それでも、この感情が私たちに何かを教えてくれる存在だとすれば、不安もまた人生の一部として受け入れることができるのかもしれない。

次の診察では、こうした考えを先生に伝えてみようと思う。

そして、「不安」という感情と少しでも上手に付き合っていけるようになりたいと願っている。

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