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#社会保障
【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[Introduction]
編集部(川崎隆司)
「失われた30年」
〝平成〟という時代を総括するときにしばしば用いられるこの言葉にはどこか、〝昭和〟という時代を礼賛する響きがある。
たしかに、敗戦後の焼け跡から国を再興し、経済面では、世界首位の米国に肉薄した輝かしい時代だった。そして、バブル崩壊によりその輝きが手からすり抜ける悔しさを味わった時代でもあった。
高度経済成長期の幻想を追い求め続けた「平成」が終わり、
介護職員が足りない! 今こそ必要な「発想の転換」|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-1]
Wedge編集部(濱崎陽平・吉田 哲)
介護業界の担い手不足が加速する。賃金上昇だけが解ではない。
高齢化社会が直面する難題の象徴が、介護だ。だが、業界全体で人手不足の問題を抱え、今はそれに輪をかけて新型コロナウイルス対策にも追われるなど、悲鳴を上げている。最前線の現場を担うキーマンたちの声から、解決の処方箋を探った。
「水際対策に人も時間も割いている。絶対にクラスターは発生させられない」
新型コロナが加速させた人口減少〝成長神話〟をリセットせよ|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-2]
森田 朗(東京大学名誉教授)
2008年(総務省統計)をピークに減少に転じたわが国の人口は、その後も減少を続け、その速度は多くの国民の想定を超えて加速しつつある。それは、昨年からの新型コロナウイルス感染症の拡大によって、さらに非連続的なカーブを描いて急減する兆候を示している。
出生数は、16年に100万人を切って以来減少を続けてきたが、19年は86万人台にまで減少した。他方、死亡数は増加を
「医療」から「介護」への転換期 〝高コスト体質〟からの脱却を|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-3]
土居丈朗(慶應義塾大学経済学部教授)
政府が2018年5月に公表した将来見通しによれば、18年度の時点で年間約122兆円(国民1人当たり約96万円)にのぼる社会保障給付費が、25年度には約140兆円(国民1人当たり約114万円)に達するという。さらに、わが国で高齢者人口がピークを迎えるとされる40年度には約190兆円にまで跳ね上がることも示されている。
この社会保障給付費の将来見通しは、人
「男性を家庭に返す」これが日本の少子化対策の第一歩|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-4]
山口慎太郎(東京大学大学院経済学研究科教授)
少子化対策は社会の構成員であるわれわれ全員の利益につながりうる。エビデンスに基づき、「子育てにおける男女平等」を目指した政策的介入が必要だ。
2月22日、厚生労働省が発表した人口動態統計速報によれば、2020年の出生数は前年比2.9%減の87万2683人と過去最少であり、19年に続いて2年連続で90万人を下回った。期間合計特殊出生率は1971年~
「人口減少悲観論」を乗り越え 希望を持てる社会を描け|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-5]
鬼頭 宏(上智大学経済学部名誉教授)
日本の人口が減少を続けている。
新しい将来推計は、昨年行われた国勢調査に基づいてこれから公表されるが、2017年の推計では日本の総人口は53年に1億人を下回り、(推計の最終年度である)65年には8800万人程度になるとしている。高度経済成長前の1950年代前半の水準である。我々にとって「未曾有」の人口減少であり、労働力不足、高齢化、地方消滅など、危機感
分水嶺に立つ社会保障制度 こうすれば甦る|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-6]
島澤 諭(中部圏社会経済研究所研究部長)
日本の社会保障制度は、経済も人口も右肩上がりの高度経済成長期に制度設計された国民皆保険・皆年金を中核とする。公的年金や医療、介護など主に保険料で財源を賄う社会保険と、税金で財源を賄う公的扶助(生活保護)を組み合わせることで、個人が抱えきれないリスクを社会全体で管理している。
一方で、社会保障制度は矛盾の塊ともいえる。「医療保険」は医療サービスが受け
お金だけが支えじゃない 高齢者はもっと活躍できる|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[COLUMN]
編集部(吉田 哲・川崎隆司)
高齢者を支えるのは金銭的制度だけではない。仕事にボランティアと、社会とのつながりを作ることが地域社会の円滑な運営にもつながる。
「お金の問題じゃない。趣味の絵を描くより、モノづくりの現場の方がよっぽど面白い」。企業OBと中小企業との交流会に参加した石井彪さん(78歳)は力強く語った。
自らのスキルを買われた企業OBが中小企業で働くケースが増えている。中小企業が
「国家 対 国民」の対立意識やめ 真の社会保障を実現しよう|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-7]
西村周三(京都先端科学大学経済経営学部教授)
近年、日本の政策において〝ナッジ〟という手法が注目されている。「行動経済学」の知見に基づくこの手法は、補助金、税制、規制といった政府主導の従来的政策手法とは一味違う。少しの工夫や仕組みで、我々個人にとっての賢い選択を支援し、結果として、社会全体にとってより良い方向に導こうとする「国民主導型」の政策手法といえる。
個人と政策をつなぐ「行動経済学」