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「人口減少悲観論」を乗り越え 希望を持てる社会を描け|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-5]

鬼頭 宏(上智大学経済学部名誉教授)

縄文時代から現代にかけて、日本は4度の人口減退期を経験してきた。人口減少を悲観するばかりではなく、今、我々に求められる意識改革とは。

 日本の人口が減少を続けている。

 新しい将来推計は、昨年行われた国勢調査に基づいてこれから公表されるが、2017年の推計では日本の総人口は53年に1億人を下回り、(推計の最終年度である)65年には8800万人程度になるとしている。高度経済成長前の1950年代前半の水準である。我々にとって「未曾有」の人口減少であり、労働力不足、高齢化、地方消滅など、危機感、悲壮感が漂う状況にある。少子化対策、外国人労働力導入、インバウンドの増加など、国を挙げて人口減少への取り組みに必死である。

 しかしここは冷静に、〝人口減少〟について考える必要がある。なぜなら先人たちは、歴史上、何度も人口が減退する時代を経験してきたからだ。人口減少の正体を歴史に学ぶことによって、無駄な努力を避け、ひいては人口を安定させ、人口規模に見合う豊かさを享受することができるのではないだろうか。

 日本の人口は過去1万年間、増加し続けたのではない。大きく増加する時期と、それに続く減退期を交互に繰り返してきたのだ。増加局面は縄文時代前半、弥生から平安時代、室町から江戸時代前期、そして幕末・明治初期から平成期である。これに対して縄文時代後半、平安・鎌倉時代、江戸時代後半、21世紀が人口の減少局面に当たる。この人口波動を生んだのは、気候変動や疫病などの環境変化だけではなかった。人口の波動は例外なく社会・経済の変動と深く結びついていた。現代日本で起きている人口学的な変化は、

①人口の都市集中
②核家族化と単独世帯の増加
③長寿
④晩婚化
⑤少産

である。これらはいずれも産業社会の発展と結びついている。翻って前近代社会の人口学的な特徴は、

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