セブン・ザ・ユース(試作)第01話 見えざる挑戦者

あらすじ
大学生アケボシは赤い眼鏡をかけると超能力を発揮し、地球侵略を企むエイリアンを圧倒的な強さで倒していく。また、彼の所属する怪現象調査サークル「ザ・ユース」は、キリヤ教授を中心とした卒業生エリートで構成された私設地球防衛軍であり、国家では対応不可能な怪事件に取り組む。時折、登場する高校教師ハタオリはうつ病を患い休職中で、その強い負のエネルギーはエイリアンに狙われる。震災で家族を亡くした、ザ・ユースのユリは、大学附属病院の外科医であるが、数々の怪事件を経てアケボシとの距離が近づいていく。この物語は幼いころ観た衝撃が強く、数十年にわたってくりかえし映像を見てきた「ウルトラセブン」へのオマージュである。

第01話 見えざる挑戦者

この瞬間も 地球は狙われている
邪悪なインベイドたちが
侵略の機をうかがっている

人生は長いのか短いのか
そうだ と答える人もいれば
ちがう と答える人もいる
生きようとする人もいれば
死のうとする人もいる
殺す人がいて 殺される人がいる
救う人がいて 救われる人がいる

喫煙はガンの原因だといわれるが
早死にする人もいれば
長生きする人もいる

なんなんだ命って
命ほど大切なものは
ないはずだろう
だとすれば 
なぜ争いが起きる

まちがっているのは
コムレイドか インベイドか
断を下すのは誰か

エイリアン・クールは
ヒューマン・アースに似ていた
文化や文明の観点からみてもだ
プラネット・クールにも
たしかに戦争と平和があったが
ヒューマンと同様に生活を享受していた
たったひとつをのぞいてはだけれど

ある夜 
仕事帰りの若者が運転する車が
警察官に止められた
若き公務員は自分の運命を想像する
酒を飲んでいたのだ
仕事を辞めなきゃならない
ほんの数年前だったら
辞めさせられることはなかった

しぶしぶ免許証を差し出した
瞬間 警官の姿が幽霊のように消えた
次の瞬間 若者も消されてしまい
軽自動車と自転車だけが残った

さらに老若ジェンダー問わず
たくさんのヒューマンが次々と消えた
あたかも神隠しに会ったかのように

この一連の怪事件は警察の手に負えず
その捜査は いつものように
T大学のキリヤ教授に任された

怪現象を専門とするキリヤは
すでに独自の捜査を始めていた
また アシスタントとして
ザ・ユースから5人のメンバーを選んだ
怪現象とヒューマンの関係を
科学的見地からトコトン調べることを目的とし
キリヤ自身が顧問を務めるサークル活動で
名前の由来は 若者を表すYOUTHで
YOU and the earTHとの掛け言葉となっている
そのメンバーはキリヤを入れて6人
卒業生の4人はいずれも優秀で
それなりの社会的地位にある

キリヤ 49歳 神奈川県出身
T大学教授
ザ・ユース顧問 富豪

フルタ 35歳 新潟県出身
弁護士
総合格闘技チャンピオン

ヤマベ 35歳 栃木県出身
T大学准教授
科学者 発明家

ソマ 35歳 福岡県出身
警察官
射撃競技チャンピオン

ユリ 35歳 宮城県出身
外科医
文武両道

yellow VW Beetle

フルタとソマは黄色いビートルで
現場周辺をパトロールしていた
とつぜん赤いジャンパーの若者が
両手をひろげて立ちはだかる

「せんぱい 
ここから先に行ってはいけません」
「せんぱいだと おまえ誰だ」
「僕はアケボシ T大の院生
ザ・ユースの新メンバーです」
「そのアケボシが なんで邪魔をする」
「命を救いたいからです」
「命だと 命が惜しくてだな」

そのとき1台のパトカーが
サイレンをまわしながら
通り過ぎていく

「ダメだよ 行っちゃダメだ」 

しかしパトカーは無視して進むと
やはり中にいた2人の警官が姿を消し
パトカーは電信柱に衝突した

フルタとソマはアケボシをビートルに乗せ
高尾山にある秘密のアジトにもどると
他のメンバーが帰りを待っていた

「アケボシくん」
ユリが話しかける
「2人を助けてくれてありがとう
お礼をしなくちゃね なにか欲しいものは」
「アース かな」
するとユリは微笑みながら
「心をこめて 美しい青いアースを
プレゼントします」

とつぜん
エイリアン・クールの
昆虫のような顔が
部屋のテレビのモニターに
おそはく その部屋だけではなく
アース中のスクリーンに映った

「エイリアン・クールです
申し訳ありませんが 我々はアースを
インベイドすることに決めました
本当はこんなことしたくはないのです

これまで 我々は あなたたちと
同じように暮らしてきました

ところが
謎の病がプラネット中に流行りだし
我々の寿命がどんどん短くなり
今では30年ほどになっています

最近になって ヒューマンの体があれば
寿命が延びることがわかったのです

このままだと 我々は絶滅するでしょう
そのあたり どうか理解していただき
全面降伏をお願いします
さもないと 我々はインベイドを開始します
もう時間がないのです」

政府がノーと答えるやいなや
アースのいくつかの島々が破壊された
エイリアン・クールはスクリーから消え
声だけが響く

「我々は目に見えないので
見つけることはできませんよ
どうかあきらめて 我々をお救いください
そうしないと 次はトキオです
我々は戦いが好きではありません」

キリヤが話し始める

「戦わなければならないくらい
彼らも必死にいきようとしているのはわかる
でも 我々はアースを救わなきゃだな
話す時間がないなら残念だが
ノーと言おう 生き残るためにだ」

「イエス ホウプ」

ザ・ユースでは 了解 を意味する

ユリが話しかける

「アケボシくん 
あなたにあげたアースがピンチじゃない
なにかいい考えはないの」

「ヤマベ先輩が開発したETレーダーで
エイリアンのだいたいの位置はわかっています
姿は目に見えませんが 
物理的には消えていないようです
気づかれないように近づいて
色をつけてしまいましょう」

他になすすべもなく
アケボシの提案を実行に移す

ETレーダーが示す位置に
ビートルが特殊な弾丸を打ち込むと
「クール宅急便」という文字が入った
冷凍保存用の荷台のついた
よく見かけるトラックが現れた

宇宙船がさらにカムフラージュしてある
エイリアン・クールはその荷台の中に
収集したヒューマンを生きたまま
コールド・スリープ状態で保存した

次の瞬間
ビートルは敵からの電撃を受け
フルタとソマは気を失った
同乗していたアケボシは
二人を救助しているあいだに
化身ミクリアを召喚して戦わせるが
やはり電撃に苦戦していた

二人を安全な場所に移動させると
アケボシは赤いメガネをかけた

ただメガネをかけるだけで
姿形はヒューマンのままだが
アケボシは超能力を
使うことができるようになるのだ

トラックはフル・スピードで
母船が偽装する倉庫へと逃げ込んだ
追いかけて入っていくと
数十台のトラックが停まっている

後ろで入り口が閉まると
明かりが消えて真っ暗になった
アケボシは暗闇のなか
8体のエイリアン・クールに囲まれた
敵は蜘蛛のように宙に浮いており
徐々に間合いをつめている

おおきく息を吸いながら
ゆっくりと両手を頭上で合わせ
勢いよく振りおろした

紫電一閃
8体の昆虫型エイリアンたちは一瞬にして
真っ二つになり地面に落ちた

alien COOL spaceship

荷台に眠らされたヒューマンを救うと
母船は額からのビームで破壊された

(この戦いは正しかったのか
エイリアンは必死に生きようとした
我々と同じように
たしかに命ほど大切なものはない
だが自分が生きるためとはいえ
他の命を奪っていいものか
考えれば考えるほどわからなくなる)

一件落着したあとあらためてキリヤが
アケボシをメンバーに紹介した

「よろしくね アケボシくん」

ユリが微笑みかける

ザ・ユースがいまこの場所に
はじめて全員集合し
多くの奇妙な出来事に
直面していくことになる

アケボシ 年齢不詳 出身地不明
T大学教育学部 院生

つづく


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