「薬指の標本 / 小川 洋子」の美しい靴


薬指の標本 / 小川 洋子

最近は趣味や実用書を読むことが多かったので文学から離れていたのだが、
読書家の友人からおすすめされて小川洋子の本を読んでみた。
恐らく彼女の著書で一番有名なのは「博士の愛した数式」でしょうね。

ドラマ化もされていますものね。
未見なのですが。

友人からすすめたれた小川洋子の本はまた別の作品だったのだが、図書館で借りるのに検索したら上位に出てきたのでそのまま試しに借りてみたのだ。

そこまで長い話ではないので、すぐに読めてしまうのだが、
主人公がサイダー工場の事故で薬指を切り落としてしまうという話からはじまる。
主人公は女性だが、これブラックサバスのトニーアイオミの話?とホラーな展開を期待していたのだが、その後職場を標本室に変えてからというもの、
フェティッシュな偏愛の物語になっていく。

女性独特の美しい文体で隙が無いのだが、いきなり「圧倒的な平凡さ」とか冷たいナイフのような表現が出てくる。

また、主人公がプレゼントされた靴についての描写で
「きりっとしてて、媚びたところがなくて、意志の強そうな靴だ。それに何より、あなたの足によく似合ってる。まるで、生まれた時から足にくっついているみたいに見えるよ」
とある。

なんとなく、その靴の表現が自分の性格のように思えたのだ。というより、そういう自分に憧れているのかもしれない。
また、その靴のように誰かにぴったりな自分を。
ぴったりと似合う、誰かに出会いたいのだ。
そう思っていた人とはダメになってしまったから。

女にとって靴というのは大事なアイテムなのだ。
自分を美しくも醜くも、快適にも不快にもしてくれるから。
最後はどうなってもいいと思えるような靴に出会えたらそれ以上の喜びはないわね。


トニーアイオミの指についてはこちらの記事を。


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