自分の生きてきた世界観が拡がる、つながりやすいきっかけ~Buddy’s Voice vol.9:佳川陽美樹~
We are Buddies(WAB)は、子どもと大人ボランティアがバディとなり、直接会って一緒に遊んだり、話したりしながら、細く長い関係性を築いていくオランダ発祥のプログラムです。バディとなる大人ボランティアは、月に2回程度の子どもとの関わりを1年以上続けることを自らの意思で選択し、この活動に参加しています。様々なバックグラウンドを持つ大人バディたちは、なぜWe are Buddiesに参加し、活動を通してどんなことを感じているのでしょうか。 この"Buddy's Voice" の連載では、様々な視点からこのプロジェクトを捉え、その意義を探求するべく、大人バディたちの生の声を届けていきます。
99回となる今回は、Buddy’s Voice vol.8 でインタビューを受けてくれた久野雄大さんがインタビュアーとライティングを担当しました。
インタビューを受けてくれたのは、芸能事務所に所属して役者を目指す佳川陽美樹さん。普段はダンスや歌など様々な稽古に取り組みながら舞台でも活躍している傍ら、中学2年生の男の子Cくんの大人バディとして活動中です。
二人の見ている景色を重ね合わせることで感じられるつながり
陽美樹さんのバディ相手のCくんは地形や歴史が好きな男の子。普段のミートアップ(2人で過ごす時間)では、2人での現代地図と古地図、地形図を見ながら都内を散歩しているそうです。3時間ほど歩くこともあるんだとか。
久野雄大(以下、雄大):Cくんとの散歩はどうやって決めているんですか?
佳川陽美樹(以下、陽美樹):事前にオンラインで近況報告する時間を設け、雑談をしながらコースや会う日を決めて、お互いの予定が合った日に散歩に出かけています。Cくんが行きたいところを事前に調べてくれていて、ルートやスケジュールも考えてくれるんです。お城の跡や台地、暗渠など自分だけだとなかなか行かないような場所を散歩しています。Cくんは普段は落ち着いた性格ですが、散歩しながら気になった場所やポイントについては熱心に説明してくれますよ。
雄大:陽美樹さんにとっては新鮮な経験ですね。
陽美樹:そうですね。私は訪れる場所の雰囲気や自然に目線がいくんですが、Cくんはその場所の地形や道の形などに目線がいってます。同じ道を歩いていてもCくんと私は違うものを見たり感じたりしているところがおもしろいなと感じます。Cくんがその場所の成り立ちを説明してくれるので、「なるほど!だからここは平らになっていたり草木が多いんだ」という発見があります。会話をすることでその土地についての理解が深まるので、二人の見えている景色を重ね合わせ、つながりを持てていることを実感しています。
自分が生まれ育ってきた環境に感じるありがたみ
私は生まれたときから両親だけでなく色んな大人に囲まれて育ってきたんです。家にもよく家族以外の大人が自然にいたので、お父さんやお母さんがたくさんいるような感じですね。そのため、もともと他人との距離感も近くて、人とのかかわりは豊かなほうだと思うんです。代表の愛梨さんからWABの活動内容を聞いたときも、家族以外の大人と過ごす時間がたくさんあった私にとってWABの目指す世界観は全然違和感がなかったんです。
雄大:陽美樹さんにとってバディは良い意味で特別なことではなさそうですね。
陽美樹:そうなんです。Cくんとも家族や友達が一人増えたというような感じです。ただ、上京してから、これまで自分が生まれ育ってきた環境はとてもありがたいものだったんだなとわかるようになってきたんです。そのため、私にとって自然だったことが周りの人にとってもも自然なことになっていくための活動がバディであり、この活動が拡がっていくといいなと思っています。私はこうした環境にいさせてくれた家族にとても感謝していて、家族のことが本当に大好きです。
一方で、私にとって家族という言葉は、曖昧でありとても広い概念なんです。私は、両親や弟、妹のことを尊敬しているんですが、WABを通じて出会ったCくんも尊敬している。お互いが尊重しあっていて、つながりが持てていれば、誰でもみんな家族のように感じますね。
WABは人と人がつながりやすくなるきっかけになる
陽美樹:WABの活動は、私にとってはごくごく自然にあった人とのつながりを世の中に増やしていける取り組みの一つだと思います。ひとりでいても一人に感じないようなつながりが自然と生まれるような世の中になるといいなと思います。そのためには、組織や団体といった一つの集団に囚われることなく、一人ひとりが子どもや大人といった区別なく互いに尊重し合っていくことが大事なのかもしれませんね。
雄大:陽美樹さんの考え方はとても共感できます。
陽美樹:WABの活動は、子どもと大人がつながることのできるきっかけが用意されているという点がとても良いと思います。そういった取り組みは他にもあるかもしれないけれど、子どもと大人がペアになり、バディとして遊ぶことでつながるというのはわかりやすい。普段一緒にいる家族以外の大人とのかかわりを通して、子どもが多様な価値観に触れられるというのは素敵なことだと思います。また、大人にとっても、相手の子どもバディや同じようにボランティアとして活動する様々な大人バディとの出会いを通して、人と人がつながりやすくなるきっかけになる取り組みだと思います。
もちろん、これはみんながみんな共感することではなく、つながりを持ちたい人もそうでない人もいると思います。ただ、私はこれまで育ってきた環境にも、WABを含めた今の生活にも感謝していて、幸せです。なので、これからもっとWABが拡がっていってほしいと思うし、バディという活動に出会えた人はラッキーだと思いますね。
<編集後記>
Cくんとのミートアップでの様子や自分の育ってきた環境やご家族への感謝を丁寧に話す陽美樹さんから温かさを感じました。ご自身の原体験からくる大人バディとしてのかかわりや人とのつながりに対しての陽美樹さんの純粋な言葉がとても印象的で、素敵な価値観に触れることのできたインタビューでした。
INTERVIEW & TEXT :久野雄大
PHOTOGRAPH:清水陽子
EDITING:西角綾夏
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