共通項がないからこそ、分かち合う「今、この瞬間」~Buddy's Voice vol.10:河野和也~
We are Buddies(WAB)は、子どもと大人ボランティアがバディとなり、直接会って一緒に遊んだり、話したりしながら、細く長い関係性を築いていくオランダ発祥のプログラムです。バディとなる大人ボランティアは、月に2回程度の子どもとの関わりを1年以上続けることを自らの意思で選択し、この活動に参加しています。様々なバックグラウンドを持つ大人バディたちは、なぜWe are Buddiesに参加し、活動を通してどんなことを感じているのでしょうか。 この"Buddy's Voice" の連載では、様々な視点からこのプロジェクトを捉え、その意義を探求するべく、大人バディたちの生の声を届けていきます。
第10回となる今回は、大人バディの荒井萌さんがインタビュアーとライティングを担当しました。インタビューを受けてくれたのは、身体を動かす事が好きで、総合商社で仕事をしている河野和也(こうのかずや)さん。小学4年生の男の子Hくんの大人バディとして活動中です。
悩んだ末に出会えた、フィーリングの合う友人
元々知り合いだった事務局メンバーに誘われて、たまたまWABに参加している子どもたちと遊ぶ機会があったという和也さん。その時はただ純粋に楽しかったそう。その後改めてWABの説明を聞いて、元々ビジネス以外の社会貢献に関わってみたい気持ちがあったので興味がわいたとのことです。ただ、一方で、子どもとの関わりは皆無ということもあり、安易な気持ちで関わっていい事ではないな...と決断には悩んだとのことでした。
そんな形でとことん悩んだ末に決断して始めたかずやくんのバディ活動。子どもバディの相手は、1つの物事に対してあれこれと追求したくなる好奇心旺盛さを持った、生き物が大好きなH君!自分と似ているところがあって、フィーリングの良さを感じるんだとか!
荒井萌(以下、萌):普段のミートアップ(2人で過ごす時間)はどんな感じで過ごしてるの?内容とかは、ふたりで決めてる?
河野和也(以下、和也):公園で遊んだり、おたまじゃくしをとりにいったりと、色々で、僕から提案することもあれば、H君から言ってくれることもありますね。ミートアップの時間に行った先で、「あの木に卵がある」とか「これは何でここにあるんだろう」とか、お互いの発見を口にしていくことが多いです。基本オフラインで毎回やってますね。
萌:すごい!面白い遊び方してる!H君って周りをよく観察してるんだね。和也君とフィーリングが合うっていうのが分かる気がする。そういう過ごし方の中での印象的な出来事って何かある?
和也:H君が生き物がすごい好きで、おたまじゃくしをとりにいったんですよ。1回目は獲れず、2回目はおらず、、で最終的に小魚を獲る事に切り替えたんですけど、H君が10匹くらい捕まえててすごかったんです。
きっと家に持ち帰りたいって言うだろうなと思ってたんですけど、「お母さんは何て言うかな」「バケツで持って帰れるのかな」「どうやって育てればいいんだろう」って色んな角度から検討し始めて、最終的に自分で決断して全部川に返してました。自分で考えて自分で決めてっていうのがすごいな、と思った出来事でしたね。
萌:私だったら、後先考えずに持って帰りたい!っていう気持ちだけで行動しちゃいそうだけど、H君はそこで思考を巡らせるんだね。その時は、和也君から何かアドバイスしたりしたの?
和也:バディズって先生でも親でもないフラットな関係性っていうのがあるので、危険な目に合わないようにという事だけは気にかけてますが、それ以外は基本的にやりたいように過ごしてもらうように、何も言わないようにしてますね。僕自身、友達に会いに行くような感覚なので、まじでフラットですよ!
"今"その場所に意味を感じられる、ふたりの時間
萌:H君の大人バディを始めて半年くらい経つけど、和也君の中ではどんな変化があった?
和也:例えばなんですけど、渋谷駅で待ち合わせしたら、H君は会って5秒後にいきなりそこにあるモニュメントとかを見て、「これってなんでここにあるんだろう?」という話になるんです。どうしてもこの歳になると、カフェとかどこかに行って話をするのが目的になる事が多いし、例えば僕と萌さんだったら、仕事にしろプライベートにしろ何かしら話せると思うんですよ。内容も「最近どう?」とか、この場に関係ない話したりするじゃないですか。
でもH君とは、共通項がほぼないんで、目の前の対象に突っ込みを入れていくとか、一緒にいるその場所にフォーカスした話になるんです。本当に「今」っていう感じ。なうです、なう。
萌:和也君のなかで目の前のものに目を向け、それを共有する機会が増えたんだね。今ココにフォーカスがあたるって素敵。まさに、ふたりがその時間その場所にいる意味というか。共通項があるとお互いの話で盛り上がってしまい今この場を感じることが少ないけど、和也君とH君はその場に紐付くこと、「今、この瞬間だけ」を、2人で共有しているんだね。
和也:あとは改めて1対1の関係性っていいなと思いました。H君と過ごす中で、なうにフォーカスしつつ、ふたりで話すっていうのがリラックス出来ます。
萌:1対1で対峙するからこそ、場に紐付くことを共有できるっていうのもあるかもだね。複数人いたら、共通項がなくても成立しちゃう会話ってある気がする。
和也:確かにそうかもしれないですね。H君と過ごすようになって、目の前の物に目を向ける機会が増えたし、普通に大人同士で過ごしていたらなかった視点を貰えたなと思います。
萌:すごい素敵な気づきだなぁ。H君の変化も感じた?
和也:当たり前かもしれないですけど、初対面の時からだいぶ柔らかくなりましたね。
萌:和也さんがリラックスしてるのと同様、H君も心が近くなってるんだろうね!今後こんな関係性でいたいとかあったりする?
和也:16年先に早く生まれてきてるだけのフラットな関係なんで、H君に何かあった時とかにアドバイス出来たり助けられる自分でいたいですね。お互いそれぞれ変容していくだろうから、今のフラットな関係性は変わらず、話す事や一緒に楽しむことがかわるくらいかなと思います。
WABに関わる数時間が、きっと人生を面白くする
萌:和也君の今後のバディ生活における展望とかはある?
和也:今後は3本柱でいこうって決めてるんですよ。1つ目は変わらずH君との関係性構築。2つ目は、自分が面白い体験をさせてもらっているこの活動を盛り上げたいので、既に何人かいるんですが、大人バディを増やすリファラルにも力を入れたいですね。大人バディは、信頼性の担保のため紹介制のみにしているとのことなので、自分の周りでバディをやったらいいんじゃないかなと思う人に声をかけたりしています。3つ目は、WAB運営がよりスムーズになるように、データ管理方法の見直しだったり、得意領域を活用して運営サポートしていきたいと思ってます。
萌:和也さん自身が楽しんでるからこそ、周りは気になるのかもしれないね。最初こそ悩んでいたと思うけど、今は色んな人にやってみてほしい?
和也:そうですね。僕もめちゃくちゃ迷ってましたけど、H君とかそのお母さんとか、普段だったら絶対に関われない人と、中長期的に関係性を築かせてもらえるってすごい面白い体験だと思うんですよね。だからこそ、自分はH君と半年バディをしてみて、もっとWe are Buddiesにかかわりたいと思うようになったし、運営面でもなにか自分のできることはないかと事務局に聞いてみたんです。今後は自分のできることで運営面もサポートしていきたいです。
日々忙しさに追われている人ほど、週の数時間だけでもこういう時間にあててみてほしいです。きっとその数時間で人生だいぶ面白くなると思うので。
<編集後記>
まっすぐに人の目を見て、一つ一つの言葉をしっかりと選びながら、真摯に話してくれた和也くんの話ぶりで、H君と過ごす心地よい時間はこんな感じなんじゃないだろうか、と想像出来ました。
言葉数は少なかったとしても、お互いがお互いを信じあっている、心の奥底で"唯一無二"と言えるくらい、つながりあっているふたりなんじゃないかと思いました。H君と向き合う時間は、一緒にいる空間そのもの、”今”という瞬間を分かち合える、尊い時間であるというのがとても印象的で、私自身今をもっと大切にしたいと思わせてもらったインタビューでした。
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