マガジンのカバー画像

特別寄稿

22
各界よりお寄せいただいた、道しるべへの寄稿を特集しています。 それぞれの専門の方の文章をお楽しみください。(道しるべによる解説記事も合わせて採録しています)
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

【緊急寄稿】安倍元首相襲撃事件からの気づき―凶弾が民主主義に突き付けたものとは

 安倍晋三元首相が銃撃されたニュースは、大きな衝撃でした。全く予想していなかった出来事であり、その唐突さと、「まさか日本で、こんなことが起きるとは」という驚きがあって、これが一体何であるのか、頭の整理が追い付かなかったのです。  まず、政治テロを考えました。初報のニュースでは、犯行の動機について、「元首相の政治理念に反対したわけではない」と報じられていました。では、これはテロなのか、目立つことを狙った劇場型の殺人なのか。犯人は、「安倍元首相を殺害しようとした」と言っていまし

【緊急寄稿】ロシア・ウクライナ侵攻からの気づき(7)―台湾を”第二のウクライナ”としないための教訓(柳澤協二氏) 

(1)長期化する戦争  5月9日の対独戦勝記念日に劇的な変化はありませんでした。マリウポリは陥落しましたが、戦争は長期化しています。心配なことは、ウクライナへの武器供給で戦力が拮抗し、戦争の目標が侵攻兵力の撃退、すなわちロシア侵攻前の現状回復ではなくなりつつあることです。西側諸国はロシアの弱体化を目指し、ウクライナはクリミア奪還を目標にしています。それは、かつて武力で奪われた領土を取り返すという意味で”侵略”とは言えないにしても、ウクライナが攻撃側に回ることです。少なくとも

【緊急寄稿】ロシア・ウクライナ侵攻からの気づき(6)―戦争犯罪に向き合う世界の行方と日本の役割 (柳澤協二氏)

■戦争犯罪をめぐって  私はいま、ウクライナ戦争が始まって以来、最も落ち込んでいます。ロシア軍が撤退したキーウ(キエフ)近郊の街で、多数の民間人の殺害が明らかになったからです。  実に正視に耐えない情景です。東京大空襲や被爆後の広島の情景と重なってしまいます。なぜ人間が、同じ人間に対してこうも残虐になれるのか。戦争や弾圧による犠牲と、自然災害の犠牲の違いはそこにあるのだと思います。いかなる正義があろうとも、自らの正義を満足させるために数万人の命を顧みない人々に、あらためて憤

【緊急寄稿】ロシア・ウクライナ侵攻からの気づき(5)―見えてきた戦争の出口・見えない戦争の意味(柳澤協二氏)

■戦争は理性の喪失に始まり、理性で終わる  私はこれまで、首都キエフの防衛やマリウポリなど包囲された東部諸都市の防衛について、悲観的でした。しかし、ウクライナの抵抗は頑強で、首都周辺や東部の都市近郊でも反転攻勢に出てロシア軍を押し返す状況が見られます。計算可能な兵力数だけでは語れない”士気”という要素が戦闘を左右する大きな要因であることがわかりました。  ロシア側も、キエフの攻略を当面断念して、東部戦線に集中する方針に変わっているようです。そうだとすると、それは戦争で達成

【緊急寄稿】ロシア・ウクライナ侵攻からの気づき(4)―停戦とポスト・ウクライナ危機への課題とは(柳澤協二氏)

 戦争が始まってほぼ1か月になります。連日、悲惨な映像が流されています。3月といえば、10日の東京下町大空襲、11日の東北大震災、20日のイラク戦争開戦の記憶と重なり、不条理な悲劇への共感が強くなる時期かもしれません。あらためて、過去の悲劇が風化することはないし、させてはいけないと思います。 ■”見せしめ”のマリウポリ ― 許し難いロシアの戦争プラン  以前、首都キエフ陥落は時間の問題と書きましたが、キエフはまだ首都として機能し続けています。それは、ウクライナが組織的に抵

【緊急寄稿】ロシア・ウクライナ侵攻からの気づき(3)-長期化する戦争の波紋(柳澤協二氏)

■戦争の長期化が変える"勝利"の定義  ロシアの侵攻から2週間、ロシア軍が首都キエフに迫っています。病院などの民間施設への攻撃が拡大し、国外に退避する難民も200万人を超えました。連日、破壊された街や難民の悲惨な映像が流され、ロシア非難とウクライナを応援する国際社会の動きが広がっています。でも戦争は止まらない。  当事者による停戦会議も開かれ、トルコが仲介する外相会談もありましたが、ロシアは、武装解除と中立化という事実上の無条件降伏を求め、譲る気配はありません。第2報の末

【緊急寄稿】ロシア・ウクライナ侵攻からの気づき(2)―「戦場の霧」で試される、ロシア・日本・国際社会(柳澤協二氏)

■ロシアが陥っている「クラウゼヴィッツの罠」 ロシア軍がウクライナに侵攻してから1週間経ちました。私は、両軍の圧倒的な戦力差から見て、ロシアは数日のうちに首都キエフを陥落させるのではないかと思っていました。ウクライナのゼレンスキー大統領は、当初、無駄な殺戮と破壊を避けるために停戦を呼びかけ、ロシアに”降伏する”かに見えました。停戦条件をめぐって、ロシアは、ウクライナの武装解除と中立化を要求しました。それは、無条件降伏の要求に他なりません。ウクライナは、これを拒否し、むしろ徹

【緊急寄稿】ロシア・ウクライナ侵攻からの気づき―今、日本が取るべき選択とは(柳澤協二氏)

【★チャリティーキャンペーンのご案内】 (※終了のアナウンスが本記事上で出るまで実施) ウクライナ侵攻を受け、本記事にnoteのサポート機能でお寄せいただいた寄付金は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のウクライナでの緊急支援活動に寄付いたします。ご賛同いただける方はぜひご支援をお寄せください! ※注意事項、寄付先選定の理由については最下段をご参照ください。 ■ロシアの軍事侵攻を見誤った3つの原因 ロシアがウクライナに侵攻しました。この間の出来事について、先の論考に追

【完全版】『日米リーダー交代からの気づきーコロナが気づかせた不安の時代』(柳澤協二氏)

【道しるべより特別寄稿のご紹介】 柳澤協二元内閣官房副長官補/防衛研究所所長による新連載『日米リーダー交代からの気づき』が、本日すべての論考掲載が完了しました。 https://note.com/guidepost_ge/n/nbdc8eb9bca15?magazine_key=mf156a1081e3b 本日まで計3回にわたりお届けした連載記事各回をこの一ページに収め、完全版として掲載します。 柳澤氏の味のある文章そのままを、どうぞご堪能ください。 諦める日本と、諦めな

政治への注文・多様性のなかの希望―日米リーダー交代からの気づき(3)(柳澤協二氏)

【道しるべより特別寄稿のご紹介】 柳澤協二元内閣官房副長官補/防衛研究所所長による新連載『日米リーダー交代からの気づき』。2回目では、格差を助長する経済政策への警鐘がならされました。 https://note.com/guidepost_ge/n/n2e2a0bc6a66b 完結編の3回目では現政権の危機管理のあり方を総括の上、「多様性」を活力とする日本政治に希望を見出します。  菅義偉政権への支持率が急落しています。感染防止と経済の両立は、難題です。だれが首相であっても苦

データで見る日本社会の「大変」―日米リーダー交代からの気づき(2)(柳澤協二氏)

【道しるべより特別寄稿のご紹介】 柳澤協二元内閣官房副長官補/防衛研究所所長による新連載『日米リーダー交代からの気づき』。初回では、熱狂のない日米リーダー交代の背後に「不安の時代」に直面し立ち往生する社会の有様が描かれました。 https://note.com/guidepost_ge/n/n840b457c7675 2回目では各種データをもとに、格差が影を落とす現在の日本社会に焦点を当て、あるべき展望を探ります。  報道されたデータをあげれば、日本では、生活保護申請が4月

諦める日本と、諦めないアメリカ~日米リーダー交代からの気づき(1)(柳澤協二氏)

【道しるべより特別寄稿のご紹介】 昨年、道しるべは柳澤協二元内閣官房副長官補/防衛研究所所長より、コロナ禍の日本社会を考察された『新型コロナからの気づき―社会と自分を中心に』をご寄稿いただきました。その続編となる新連載『日米リーダー交代からの気づき』が始まります。 コロナ禍で起きた日米両国の指導者交代に、ポストコロナへの展望を探ります。連載の初回は、日米のリーダー交代に見え隠れする社会の病巣を解き明かします。   2020年に、日米で政治リーダーの交代劇がありました。安倍前

新連載ダイジェスト『日米リーダー交代からの気づきーコロナが気づかせた不安の時代』(柳澤協二氏)

 2020年、新型コロナウィルスの蔓延という未曽有の国難に見舞われた日本とアメリカで政治のリーダーが交代することになりました。コロナ禍の下でのリーダー交代が浮き彫りにしたのは、コロナ禍が鮮明にしたリーダーシップの貧困と格差社会の深刻化でした―。  コロナ禍の不条理の構造を究明し、希望へのヒントを探る特別連載が今、始まります。 忙しい方のためのダイジェスト『日米リーダー交代からの気づき』 道しるべは元内閣官房副長官補・防衛研究所長の柳澤協二氏より、この象徴的な政治ドラマを分析

【完全版】『新型コロナからの気づき―社会と自分の関わりを中心に』(柳澤協二氏)

【道しるべより特別寄稿のご紹介】  先日完全版を掲載した柳澤協二元内閣官房副長官補/防衛研究所所長による新連載『日米リーダー交代からの気づき』(https://note.com/guidepost_ge/n/n98f027aa7b5e?magazine_key=mf156a1081e3b)にちなみ、2020年にご寄稿いただいた『新型コロナからの気づき―社会と自分の関わりを中心に』完全版を掲載いたします。  日本初の緊急事態宣言下に執筆された連載記事各回をこの一ページに収め、