マガジンのカバー画像

小説

24
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

絵とショートストーリー 『デリカシーがない男』

あの時、 君は何て返してほしかったんだろう 僕は 今も時々 問いかける 答えは出ない なんて当然わかってる あなたは デリカシーがない 伏し目がちに 微笑しながら 君は つぶやいた そりゃあ 間違ってない 僕は たしかに デリカシーがない でも、 あのタイミングで そんなことを 言い残せる 君は きっと もっと デリカシーがない

ビジュアル短編小説 『近未来ちゃん』 老害が無くなる!? の巻

お年寄りは外に出にくくなる →現場からお年寄りが減る。 →老害が無くなる。 →日本、良くなる! き、近未来ちゃん!! で、でも・・・!!! テレワークの浸透で、いらないおじいちゃんたちの存在が如実に明るみに出たりしてるじゃないか・・・!! 近未来ちゃん→「その程度でゆるむほど、 日本の社畜文化は甘くないっす。 事態が収束するのを待つまでもなく、 緊張感が抜けるや否や、 あっという間に、元に戻る力が すっごい勢いで、はたらくよ。 老害のメイン層、50、60代が 慣れ

小説 『202X年 びょういんで はたらく パパ』

202X年の朝、 勤務先の建物は、関係者入り口まで列が続いていた。 ガラス扉の向こう側、ビニールシートで区切られた待合スペースはもちろん満席。 昨夜の健康情報番組で、あんな話題が出たから当然か。 うちもそろそろ当日受付は止めて、 完全予約制にしてほしいものだ。 でもそういうことは経営者が考えること。 自分は目の前にいる一人一人に対し、 できることを淡々とやるだけだ、 それがプロフェッショナルというものだ、 そう言い聞かせてエレベーターに乗った。 消毒室を抜けて、ロ

【最終回】 小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(16)

一話目から読む 【前の話】 普段使わない筋肉だったせいか、右腕の筋肉痛は月曜日になっても続いていた。弁当を食べる箸がうまく操れない。 でも、その鈍い痛みがなにかの成果のようで心地よかった。 背後から例の声が聴こえた。 「ちひろさーん、ランチ時間長すぎじゃないかあー。昼休みってのは、仕事をしっかりやった人が初めて取る権利があるものであってさあ」 箸を持つ手に力がこもる。 すばやく振り返って、その声の主を見上げた。 にやけ面にある充血した目を捉えた。 ピクッと細かく

小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(15)

一話目から読む 【前の話】 しばらくそのまま歩いていた。グッズがつまった袋のこすれる音が歩みを進めるたびに響く。 「やっぱ自分しかないっしょ」 「え?」 「それでもどうしても消えてほしいって思うなら、自分でやるしかない」 「そこに戻るんですか? 無理ですから。わたし、人殺しなんて」 「できるかどうかなんて、やってみなきゃわからないから」と大きな目を見開いた。 「なんかすごく真っ当っぽいこと言ってますけど、そんなことしたら、わたし、人生終わりますから」  ハル