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すいかのグラニータ

とっても大きなすいかを一玉買って、半分に切って冷蔵庫にしまっていた。
この夏に、ゆっくり時間をかけて食べていこうとワクワクしながら。

ある日半玉分を取り出して、机に置いたまま包丁を取りに行って戻ったら、どういう訳かすいかがひっくり返って落ちていたのだ。

半端に崩れた断面をきれいに切って均し、またひっくり返ってしまわぬよう冷蔵庫にしまった。
悲しさと虚しさと闘いながら、切り落としたぼろぼろの部分を、どう食べようか考えた。そのまま食べるには、虚しさに打ち勝てる気がしなかったのだ。

そこで、いっそ形をすべてなくして見た目も関係なく食べられそうな、グラニータにしてしまおうと思いついた。

すいかをブレンダーにかけてジュースにしたら、カチカチに固まらないように洋酒と、砂糖を少しだけ入れて凍らせる。
数時間おきに冷凍庫を覗いては、凍り切らないうちに削って冷やしてを繰り返し、氷の粒々にしたら出来上がったのが、すいかのグラニータ。

うん、悪くない。
無惨な姿になってしまったすいかが、心救われる姿に生まれ変わった。

ところで、グラニータ発祥の地であるイタリアは行ったことがないけれど、大好きなエスプレッソもドルチェも、いつか本場で味わえたらなぁと密かに夢に見ている。
淡い夢を胸に抱きながら、名作映画の「ローマの休日」とか、東京ディズニーシーのヴェネツィアンゴンドラが浮かぶメディテレニアン・ハーバーの風景とかを思い浮かべて、グラニータを口に運ぶ。

そんなこんなで気付けば悲しい気持ちは暑さとともにどこかへ吹き飛んでいった。
冷たいスイーツに変身したすいかを片手に、遠い地に想いを馳せながら心を躍らせていた昼下がりなのであった。

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