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サウダーヂな夜の窓際には、クリスマスにぴったりでロマンチックな二人席ができた。東京スピーカーがそっとふたりの存在を隠してくれる。ああ、いいな。あっちは完全に恋人たちの世界だ…。いつか私もあの席で、深夜の桃太郎大通りを眺めながら「誰もいないね。」とか言いたい。(昼間もいないが。)気の利いたムーディな選曲に耳を傾けながら、静かな夜に溶けこみたい。とにかく今の窓際は最高だけど、やっぱりカウンター席も捨てがたい。なんたって、サウダーヂの松潤ことナカチ店長がいるのだから。そんな店長は最
白くて深い霧が色んなものを包み込んで、桃太郎大通りの信号もぼやあっとにじむ不思議な夜。サウダーヂな夜には、とある客。その人はゴッドファーザーを彷彿させるような出で立ちでクリスマスを目前にして現れた。その人は、周りがゲラゲラ笑っても、どれだけびっくりしても、決して表情を変えようとせず、どんな時でも不敵な笑みを浮かべている。ゴルゴ13の効果音を背負わせると世界で一番似合いそうだ。 クリスマスイヴの夜、その人は教会で歌をうたうと言う。ちょっと歌ってみてよ、なんてそこにいたおじさん