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国名がついた3つの製本様式<その2.ドイツ装編> フランス・ドイツ・スイスがあるのに、イタリアがない?

だいぶ間が空いてしまいましたが、国名シリーズの2回目をお届けします。前回はフランス装を取り上げました。

今回はフランスよりも東に移動しドイツにちなんだ「ドイツ装」について書いていきます。
そもそも「ドイツ装」ってどんな製本様式なのでしょうか?


ドイツ装ってどんな製本?

ドイツ装に関しては製本工房リーブルさんの記事が一番的確なので、引用させてもらいます。

ドイツ装とは表紙の背の部分と平の部分に別の素材を使った継ぎ表紙です。
1984年4月に、製本工房リーブルで「豆本セット」全10巻の企画、販売を始めました。(中略)そのうちの「尾崎放哉句抄」(第9巻)でそれまで馴染のなかった継ぎ表紙の技法を取り入れました。それが「ドイツ装」です。
実は、当時この継ぎ表紙には独自の名称がありませんでした。何か新しい名称をと考えていたところ、フランスではこの仕立てを「Bradel Allemand」(ドイツ式くるみ製本)と呼んでいると聞いたので、「ドイツ装」と名付けることにしました。
ドイツ装は背表紙と平表紙がそれぞれ独立しているので、布、紙、革などの素材だけでなく木材、金属、陶板、アクリル材なども表紙に用いることができ、いろいろな装丁が楽しめます。

製本工房リーブル「ドイツ装」
背をくるむ表紙とオモテ・ウラの表紙が別素材で仕立てられているのがドイツ装

簡単に言いますと、コデックス装のようだけど、表紙が本体の背から内側に引っ込んでいて、段差がある特殊な製本といったところでしょうか。

結構難しい製本です

基本的にはコデックス装の背にクロスなどを巻き込んで貼り付け、そのあと、表と裏と別仕立ての表紙を背からずらしてベタ貼りします。

表紙を貼りつけるのも刷毛を使い、ズレないように注意しながらの手作業になります。そこでも技術が必要となってきます。

本体はホットメルト固めの並製本で仕立てて、ドイツ装式に表紙を付けるといったことも可能です。この場合は糸綴り・ボンド固め・クロス巻きの上製本タイプより安い値段で加工できます。

下の画像の左側の本のように、本体と表紙に段差があるため、仕上げ裁ちの際に角が剥けやすいのですが、そこをどう工夫して切るかが製本会社の知恵の絞りどころとなってきます。

小口の断面の見せ方でも印象が変わるのもドイツ装の魅力

表紙の切り口が見えてしまうのは、デザイン上どうかな?といった場合は、上の画像の右側の本のように、先に本体を仕上げ断裁しておいてから、四方巻込み表紙貼りをしたものを後でベタ貼りすることも可能です。

デザイン力が発揮できる面白さ

開きもよく写真集や図録にも適しているドイツ装

ドイツ装も基本がコデックスと同じですので、ノド元までよく開きます。だから写真集や図録などにはうってつけですし、ぱっと目を引く製本でもあります。

また、背をくるむ部分とオモテ・ウラの表紙の素材の組み合わせでも印象がガラリと変わるので、様々な意匠を凝らすことができます。
いずれにしても、いろいろな意味で、ドイツ装はデザイン性を発揮できる製本様式といえると思います。

変わったデザインの本が造りたいという方、ぜひ弊社に一度ご相談ください。知恵を絞って、お答えさせていただきます。

国名製本様式シリーズの最終回はスイス装のお話

次は、ドイツから南に下って「スイス装」のお話をさせていただきます。お楽しみに。


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イラストAC : 普通人様 / ミツキ様 / Kinoko3様
フキダシデザイン


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