はじめまして、東京都荒川区の渡邉製本株式会社です。 このたび、渡邉製本 はnoteをスタートしました。 ここでは製本にまつわるコラムや紙製品のトピックスを発信していきます。 初回は、そもそも製本ってなに?という話題に簡単に触れながら、わたしたちの自己紹介をさせていただきます。 そもそも、製本ってなに?製本ってなに?印刷とどう違うの? と聞かれることも多い業種です。 簡単に言えば、印刷された紙や表紙を組み立てて本にしています。 地味な仕事ですが、皆さんの手元に本の形と
「烈果と雷鳴」というタイトルの、B5ヨコサイズの本コデックス装の製本です。 以前、「純粋思考物体」という、デザインされたコデックス装で協力させていただいた京都のアトリエ空中線の間様からの依頼で、今回も印刷からのワンストップで製作させていただきました。 その時の記事はこちらです ⇒ https://note.com/watanabe_seihon/n/n0e1fc1272012 今回の表紙はオフメタル銀46/130にチップボール22号を合紙しています。合紙表紙の場合、通常
様々なご相談をいただく弊社ですが、このところ、特にホームページからのお見積りやお問合せが多い「B4ヨコ製本」を今回はご紹介します。 このサイズのご用命を見ますと 写真集・画集・マンションカタログなどの内容がほとんどです。 B4判はもともと大型本と言われる規格サイズです。 それをさらに横長にすることで、A4ヨコに比べて紙面の面積は約1.5倍もありますから、そのインパクトと情報量が段違いなのは当然のことです。 細かく言えば、 1. ビジュアルの訴求力 2. 広い紙面を活
前回から引き続き、上製の表紙に関しての職人さんの紹介です。 今回はその仕事の素晴らしさについて文章で書くより、目で確かめていただきたいです。 先ずは、布クロスに金箔。 だいぶ前の話ですが、結婚式の新郎新婦からゲストの皆さんへのプレゼント用のノートのオーダーが有りました。 その時の箔押しのデザインが次からの写真です。 クローズアップしてみます。 このノートはB6サイズです。ですので、一つの要素の大きさがだいたい6×5センチです。 とても細かいデザインの上、織り
流通している本の場合、印刷が上がってきたものを最終的な製品にするまで、当社くらいの会社の規模では全部の工程を一つの会社でやるという事は有りません。 ・大きな紙に印刷されたものを折る『折本』やさん。 ・ページを合わせる『丁合い』やさん。 ・折ったものを何単位かにまとめて糸で綴じる『かがり』やさん。 ・表紙に紙や布を張り合わせる『表紙貼り』やさん。 ・表紙などに箔を押す『箔押し』やさん。 ・ハコ付きの本の場合の『製函』やさん。 などなど結構細分化した専門の会社があるのです
皆さん、マーブリング染という技法をご存じですか? 溶液の表面に何色かの絵の具を重ねて浮かべ、櫛や筆で模様を描き、それを紙に写し取る特殊な技法です。 マーブリングの技法は15世紀頃のトルコが起源と言われ、その後、イタリアのフィレンツェで盛んになった歴史があります。 日本でも唯一無二の複雑な模様とその美しさから、装丁はもちろん、改ざん防止の実用面で明治時代から洋式帳簿製本にも用いられてきました。 帳簿では製本用語で「小口(こぐち)」と呼ばれる本の側面にマーブリングを施すこ
ナラシ機って何でしょう? 漢字で書くと「均し機」となります。背を均す機械という意味です。 製本って、1冊の中身が全体に平らでないと、直角に切れませんし、綺麗な製品が出来ません。 紙は折っただけでは、背の方が高くなってしまいます。アジロ折という、背にエアー抜きの穴が開いている方法ではそうでもないのですが、綴折(普通折)という穴なしの折り方の場合はどうしても背が高くなってしまいます。 頁数が少ない場合はそうでもないのですが、厚い本の場合はなおさらです。 そこで、活躍するのがこの機
昭和レトロな製本機械達を紹介するシリーズの第3弾です。 今回はこの機械 「バッキング機」とか「バッケ出し機」などと呼ばれている機械です。 日本製本紙工新聞社発行の「製本用語事典(1998年)」によりますと、「バッキング」とは「本の中身の丸身出しを行った後、中身の背の形を整え耳を出す作業」とあります。機械が無い頃は2枚の専用の板で締め取ってハンマーでたたいて耳出しをしていたそうな。これは、私もまるっきり知りません。今でも、諸製本(もろせいほん:図書館製本)ではこの方法でして
前回、社内にある昭和チックな機械たちを紹介し始めました。 今回はその第2弾「溝入れ機」です。 今年4月の記事になりますが、遺産になった道具たちという記事で「イチョウ」と呼ばれる溝付けのコテを紹介しました。 こんな使い方でしたね。 写真でもわかる通り、上製本の背に沿って付いて、本体と表紙をがっちりとバインドしている溝を付けるための道具です。 但し、私も本製造では一回も使ったことがありませんが・・・・。 今回の機械は、それの進化バージョンですが、とはいっても昭和然とした道具
我が社には、昭和な生身の人間(私です)の他に昭和チックな機械たちも現役で頑張ってくれています。今回からはそんなレトロな機械をシリーズで紹介していきます。 例えばこの機械。二連式焼付けプレス機といいます。 上製本で、表紙と本体を圧着させるのに使います。現在は、自動のフォーミングマシンというものが「表紙クルミ機」に連結されていますので、普通はお役御免なのですが、自動というのは制限があるもので、束(本の厚み)が薄いものや、逆に厚過ぎる物。また、大きすぎる物は自動機は使えなくな
こんにちは、渡邉製本です。ホームページで更新し続け10年になる「最近作った本紹介」という製本事例コーナーのnote編になります。 ホームページよりも読みもの度合いを上げて、写真も文章も多めにお話しています。 今回紹介する本『瀬戸酒造店ブランドブック』今回は、2023年3月に製本した『瀬戸酒造店ブランドブック』の紹介です。前回は白い本をご紹介しました。今回は真っ黒なB4サイズの大型本です。 第65回 全国カタログ展で金賞と全国中小企業団体中央会会長賞をダブル受賞されています。
極くたまにですが、市販されているノートの中に「中ミシン綴じ」という製法を「糸かがり」と表記しているものがあります。 どちらも「糸を使って紙を綴じる」という点から見ると同じです。 けれど、製本という観点からすると、製法や特徴がそれぞれ違います。 上の写真と下の「中ミシン綴じ」と比べてみてください。綴じ方のピッチがまるで異なります。 ノートでよく見かける「中ミシン綴じ」 大学ノートなどでおなじみの「中ミシン綴じ」 頁の少ない絵本でも用いられています。 実はこれ、某国のミュ
突然のメールから始まった第一歩 それは2012年5月に届いたアメリカからの突然のメールから始まりました。 送り主はロサンゼルス近郊で日本文具を専門に販売しているオンラインストアさん。自社で初めてオリジナルノート、それもオールメイドインジャパンの製品を作りたくてウチのHPにたどり着いてくださり、コンタクトをしてきてくれました。 海外からのOEMの問い合わせなどそれ迄受けたことなどは全くないし、どのように取引をしたらよいかも分かりません。まして、英語でやり取りするなど、遥か昔の
今回の忘れ去られた道具はこれです。 本屋さんで、本を購入する時、本から半円だけ頭が出ている短冊が付いているのはご存知かなと思います。数年前から、この短冊自体が不要になりはじめて、今はあまり、これが付いている書籍は少なくなってしまいましたが、その短冊を「売り上げカード」と言ったり「スリップ」と言ったりしています。 でも、私たちの業界用語では「ボウズ」と言ったりもします。 昔は、ウチノ社内でも「ボウズ」と呼ぶ方が圧倒的に多かった記憶があります。 そう、本の天から顔を出している
こんにちは、渡邉製本です。これまでホームページで不定期に更新していた「最近作った本紹介」という製本事例コーナーのnote編になります。 ホームページよりも読みもの度合いを上げて、写真も文章も多めにお話していきたいと思います。 今回紹介する本『純粋思考物体』今回は、2022年9月に刊行された『純粋思考物体』の紹介です。 造本が素晴らしく魅入ってしまう一冊です。配本前の見本を初めて目にした時、その佇まいに思わず息を呑みました。 コデックス装にフィルムカバーをかけた白くて透明な
今はほとんど使われなくなってしまった「道具」達が、ウチの工具棚にひっそりと横たわっています。 今回、その中から取り出してみましたのが、この写真の道具です。 勿論、製本道具ですが、みなさん、何に使うための物かお分りになりますか? これは、「イチョウ」(イチョウの刃とかイチョウのコテ)という道具です。漢字で書きますと「銀杏」になります。イチョウの葉に形が似ていますでしょう? 現在のように機械化されていなかった時代、多分、昭和20年代までのことだと思いますが、この「イチョウ」を