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<神戸北野・スターバックス>の線描をどう描いたか

神戸北野坂スターバックス(線描)

神戸北野スターバックス(線描) WHATMAN F4

はじめに

 教室の生徒さんから聞かれる質問には共通性があります。 自分の作品を題材にして、線スケッチの初心者の方の質問を想定し、 項目ごとに解説していきます。  
<この作品に対しては以下の内容>
・スケッチポイントを選んだ理由
・遠近法を使ってどう描くか
・樹木の葉の描き方
・人物の描き方

(1)なぜこの場所を選んだのか?   

 スケッチポイント選びは、描く方の関心により様々ですので、 あくまで私個人の理由を示します。

 もともと明治以降、都市 の景観を造った戦前の近代建築に関心がありました。
 建物のデザインの美しさだけでなく、その時代に生きていた人々の生活 と、現代までの 時間のつながりに思いを馳せて描くと、ノスタルジックな感慨がわくのです。

 この 北野坂のスターバックスコーヒーの建物は、戦前から戦後の高度成長期、阪神大震災による被災、スターバックスコーヒーによる修復を経 て今があります。

 描いた3年ほど前、この場所は東南アジアからの観光客のメッカになっ ており、50年前にこの北野界隈を訪れた頃の、まだ静かな住宅街だった情景を思い出すと、時代の大きな移り変わりに驚きます。その時代の変化を人物も含めて描きたいと 思ったのが選んだ理由です。  

(2)どこから描き始めたのか?  

 「線スケッチ」は、鉛筆の下描きをせず、ペンで直接水彩紙に描きます。

 どの線から 描いたか記憶はあやふやですが、一般に手前のものか ら始めるケースが多いと思います。

 この場合は、左の建物の縦 の線を上から思い切りよく引き、鉢を入れる編み籠の上部で止 めます。次にこの絵の主役である、スターバックスの看板のついたドーム 型の屋根の小屋を描きました(人物を描き入れる部分は 空けておきます)。
 次に歩道の左端の線を決めつつ、立て看板と吊り下げバスケットを描いたのち、ドームに隣接する樹木、さらに奥の建物の順です。

(3)遠近法を使ってどのように描いたらよいか? (建物の壁の線、立て看板の形、歩道の敷石など)  

 現場描きスケッチの場合に、線遠近法をどのように意識して描 いたらよいか、別途項を設けて解説する必要がありま す。ここでは、私がいつも採用している描き方を以下にまとめます。  

「線を描き始める前に、自分の目線の水平線と、立ち位置を 含む縦の直線を思い浮かべます。ある線を引くときは、始点、終点を決めるときに、この水平線、縦線それぞれに対する角度と 位置を推定して当たりをつけます。そして描くと決めたら迷わず線を引きます。」  

 この絵では、人工物、具体的には建物の線、歩道や道路の線、 看板の線、建物の窓枠や壁の板の線がそれにあたります。一方、 樹木のような自然のものは、少々違っても問題はありません。 

<人工物の厚みを観察する> 
 これらの人工物を描くにあたってもう一つの大事なポイントは、必ず厚みを観察することです。

 具体的には、建物の壁の板の厚みと見えている部分、窓枠の板の厚みと見えている部分、看板および枠の厚みと見えている部分。これらの厚みを含めたリンカクを描くことで、絵はリアルさを増します。

(4)樹木の葉はどのように描いているのか?  

 この絵には、真ん中に大きな樹木があります。その葉は一見 細かく描いているように見えます。実際には素早く描かないと いくら時間があっても描くことができません。

 大事なことは、その 樹木の葉の特徴を捉えて描くことです。この木の種類は欅だったと思います。少し丸みをおびた小さな葉の形の特徴を把握し、それらしく見えるように描いていきます。この木のように描く葉の数が多いと、形や配列が単調になりがちです。それを避けるためには、樹冠の中の葉の向きや形の特徴を常にしっかり観察しな がら素早く描いていくことが大切です。  

(5)人物はどのように描くのか?  

 この絵の主要な人物である女性は、写真を利用して、後で描き入れました。

 通常、人物はその場で描くことを原則としています。水彩 紙に人物を描く前に、その場を通る人物をスピードスケッチして、 それを水彩紙に写すか、直接水彩紙に描きます。

 しかし、その 方法では印象深いポーズをとる人物の姿はなかなか描けません。その場所に ふさわしい服装や、仕草をした人物が通りかかったときに素早く写真を撮影してお き、それを利用します。

 実際この絵のケースでは、おしゃれな街神戸にふさわしい服装の若い女性が通りかかり、スタバの建物を通るときに、フト顔を建物に向けた瞬間を逃さず写真に撮りました。

おわりに

 この絵を描く前に、同じ建物を坂の反対側から描いた絵があります(下記、ブログ記事の末尾、<本日の絵>をご覧ください)。見てお分かりのように、その絵の出来は不満足で、今回ご紹介した絵はリベンジのつもりで後日描いたものです。


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