【読書記録】西巷説百物語(京極夏彦)
巷説百物語シリーズも高校、大学で読んでいたシリーズの1つ。ただ前巷説百物語までしか読んでいなかったのでかなり久々に続きを読み始めた。
【あらすじ】
大阪屈指の版元にして実は上方の裏仕事の元締である一文字屋仁蔵の許には、数々の因縁話が持ち込まれる。いずれも一筋縄ではいかぬ彼らの業を、あざやかな仕掛けで解き放つのは御行の又市の悪友、靄船の林蔵。亡者船さながらの舌先三寸の嘘船で、靄に紛れ霞に乗せて、気づかぬうちに彼らを彼岸へと連れて行く。「これで終いの金毘羅さんやー」。(あらすじより)
【感想(ネタバレあり)】
巷説百物語って、大体百介が出てきて、又市とかお銀さんが人を騙すみたいな流れだった気がするんだけど、今回は何度か助っ人で出てきた林蔵が主役。
昔読んだ前作までで林蔵の人柄についてどういうふうに描かれていたか、あんまり記憶がないんだけど、今作では気が利いて顔がいいどこにでもするっと馴染めてしまう男として描かれている。ちょっと治平と混同してたかも。
全体を通して依頼があった仕事について、妖の類を巧みにに絡めて、たくさんの仕掛けを施して、騙したり目をくらましたりして解決する話なんだけど、なんというか、人の業の深さと言うか、辛さというか、そういうものを感じる話が多くて、読み終わった後ちょっとしんみりしてしまった。
どの話も最初の方は語り手(大体ターゲット)目線でしか描かれないから、なんでこんな不可思議なことが?なんでこんな大変な目に?となるんだけど、後半で次々と真相というか、事実が明かされて、それがもう欲にまみれていたり利己的だったり冷酷だったり常軌を逸していたりで酷いこと酷いこと。豆狸だけはターゲットがただ単に可哀想な話だったけど、それ以外は大概まぁ酷かった。
いい人に見えていたのに、可哀想な人に見えていたのに、それが全く別の角度、別の視点から見ると違った話になるから、それが面白い。きっとここまで極端な話じゃなくても、私達の日常の中にも同じように、こちら側から見ている物語とあちら側から見えている物語が全く別物ってことがたくさんあるんだろうな。
この話に出てくるターゲット達は自分がしてきたことを悪いこととも思っていないからか、すっかり忘れていたり、認識していなかったりするのでたちが悪くて、懲らしめられる(懲らしめるレベルじゃ到底済まないものもあるけど)のを見るとちょっと溜飲が下がる気がした。
最後の野狐は林蔵の過去も明かされる1話で特に読み応えと、切なさがあった。お栄は強かで利己的で悪い狐だったと思うけど、その根底に林蔵への恋心があったと思うとどこかで踏みとどまってくれていれば、自分のしたことを少しでも悔いてくれていれば、と思わずにはいられなかった。
巷説百物語シリーズも次で最後かな?前の話結構忘れてるところもあるし、新カバーになってるのでまた買い揃えて読み直そうかな〜