【オーディブル感想文】『能面検事』by 中山七里さん
はじめに
ビジネス書もいいですが、小説も好きです。ということで、『能面検事』をオーディブルで聞くことにする。選んだ理由は3つ。
エンタメ目的: ストーリーテリングが面白そうで、純粋に物語を楽しみたい!
印象的なタイトル: 「能面検事」というタイトルが、どういう意味だろうと気になった!
好きなジャンル: 私の好きなリーガルミステリー!!
あらすじ
大阪地検の一級検事である不破俊太郎は、どんな圧力にも屈せず、微塵も表情を変えないことから、「能面」と呼ばれている。新米事務官である総領美晴と共に、西成ストーカー殺人事件の捜査を進める中で、容疑者のアリバイを証明し、捜査資料が一部なくなっていることに気づく。これが大阪府警を揺るがす一大スキャンダルに発展し、不破は組織の闇に深く関わっていくことになる。組織の不正や権力闘争に巻き込まれながらも、不破は自身の正義を貫き、真実を暴こうと奮闘する。
感想
ストーリー構成が巧みで、心理描写がおもしろい!
緊迫感のあるストーリー展開と、登場人物たちの心理描写が巧みに織り込まれていた。特に、タイトルどおり、不破検事の感情を一切表に出さないクールなキャラクター造形は、彼は一体何を考えているのだろう?と疑問に思わせ、物語に引き込まれ、一気に聞き切りました!
また、警察、検察などの組織内の複雑な人間関係、警察と検察の関係や、権力闘争の描写も非常にリアルで、まるでドキュメンタリーをきいているかのような感覚に陥った。きっと、作者は取材をたくさんしたんだろうな。すごい!
作者の意図やテーマはなに?
作者は、この作品を通じて、私たちに何を訴えかけているのか。それは、正義とは何か、組織の中で個人がどう職責を全うするのか、そして、私たちが社会に対してどのような役割を果たすべきか、といった根源的な問いを投げかけているように思われました。
事務官の美晴の問いに対し、不破は検察官の職務を「事件を捜査、起訴するかしないか決めること」として、正義を下すのは裁判官の職務である、というようなことを話したのが印象的。
なるほど、職務の役割分担。司法システム全体で正義をかなえる、ということかと思う。
自分の場合に置き換えて考えてみると、自分の役割を果たす、他の役割まで手を出すと消化不良になって、自分の役割に悪影響を及ぼすこともあるならば、みな、それぞれが自分の役割に専心するのが、みんなのため、社会に資することになるのかな。
本作は、単なるエンターテイメント作品にとどまらず、現代社会における司法のあり方や、組織の闇を鋭くえぐり出す社会派小説といえます。
この小説から、人が社会において仕事をする場合、自分の役割とはなにか、役割を徹底する意義というものを考えるのは大事、ということを学びました。
あ、ナレーションもききやすかったです。
ちょっと社会派ミステリー読みたいな、という方におすすめです!