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『海の家』正油ラーメン。

あの頃の海を わたしは時々思い出す。
海の近くに 住んでいたわたし。
団塊世代の両親、どちらかというととっぽくて。
若い頃の写真を見ると、その頃のわたし達と変わらない。そんな匂いを感じた。

父の弟が近くの海で『海の家』をやっていて、ヨットスクールも経営していたので、毎年家族で夏になると訪れていた。

その叔父(父の弟)はいかにも!な風貌だった。
髪は長くて一つに結っていて、前髪をなびかせて、髭もかなり長くて。
子供ながらに『仙人みたい。』と、思っていたりもした。
普段はブリーダーをしていて、可愛いわんこがお家にいるのが羨ましかった。

わたしは、叔父がやってる『海の家』で出していた正油ラーメンが大好きだった。

今のわたしのラーメン好きは、多分このラーメンきっかけなんだと思っている。

しなちく、なると、海苔、ネギ。
チャーシューはあったかなかったか、記憶にないけど。海で泳いで、冷えて疲れた体に あの濃ゆい醤油ラーメンのスープがなんとも云えない旨さだった。

わたしが子供の頃は今程の異常な暑さではなくて、27℃もあれば結構な夏日とか言われてしまっていたんじゃなかったかな?
今ほどのジメジメした風もなく、もっとカラッと、スカッと暑い!そんな清々しい夏だった時代だった。

大嫌いな父は、いつも瓶ビールを飲んでたかな。
わたしは早くラーメンを食べて、早く海へ戻りたかった。
海がそれほど得意ではなかっはたけど。どちらかというと恐くて、無理して入ったりもしたけど。

父がお酒を飲んでる海の家の、いつ暴れだすか分からない。そんな不安定な あのテーブルに居たくなかった。

陽が落ちる頃には、いつの間にか酔っぱらって寝てしまっている。そうなるまで、夢中ではしゃいで海から出ようとしなかった。


わたしは海の家で食べる、あの濃いめの正油ラーメンのスープが大好きだ。
今でこそ当たり前に付いてくる、れんげ で飲むのではなくて。

幼いながらも豪快に、目の前に見える何もかもを覆い隠すように。器のふちに口をつけて「ゴキュゴキュ」と喉を鳴らしながら飲む、あの頃の記憶を。

あの時間はわたしにとって、苦しくも 今生きているわたしの ちょっとした楽しみを作ってくれた、そんな時間だ。

忘れかけているような、でも時々おもいだす。そんな曖昧な、でも確かにあった。そんな、そんな時間。

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