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子どもにもらった愉快な時間

以前に読んだ、「エピソードで語る教師力の極意」シリーズの岩瀬先生の本に、この本が紹介されていた。あなたも名探偵シリーズは大好きだし、この本は一体どんな本なのかなと思って読んでみたけれど、素直に読んで出会えてよかったなと思う。子どもたちのエピソードに浸りながら、その世界を存分に味わうことのできる書き振り。それでいて、丁寧にその現場で何が起こっているか考察されている、保育の現場がありありと伝わるってこういうことなんだろう。

例えば、こんなことが書かれている。

みちこちゃんは探しだした石を、「この石はさわると冷たい」と言って、袋にしまい込みました。さわらせてもらったけれど、よくわかりませんでした。そう感じたのならそうでしょうが、よくそんなことに気がつくものです。ぼくにはもう気づけないそんなことに心を動かせるみちこちゃんが、少しうらやましくもなります。

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このほんの少しの出来事。自分だったら見落としてしまうし、流れてしまう日常の場面。「分からないけど、そう感じてるんだなー」という、それ以上でも以下でもない感情。そこに対して、子どもたちの出来事を豊かに感じようとする心。今の自分には欠けている。欠けているというよりも、まだまだ足りていないんだろうな。
日々の様子を記録にとるとき、もっともっと子どもたちに寄り添う練習をしていきたい。それは外側から見ることも、内側に入り込むことのどちらも必要になってくるんだろう。

本の隅から隅まで、たくさんの愉快な時間が刻まれている。
今の現場における教育書って、こういう語り口のものは、もうほとんどないんじゃないだろうか。きっと杉山さんのダイナミックな実践の素晴らしさも語られるべきなんだろうけれど、その良し悪しよりもずーっと子どもたちが生きていると感じられる姿がそこら中にあるということ。

自分自身も教室を書く、書くというよりも描くなのかもしれない。
そんなことができたら、すごく楽しくなりそうだ。子どもと関わりながら、その姿を描き続けることを楽しんでいけたらいいな。

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