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【トレイル紹介】Cordillera Huayhuash Circuit 5000mのアンデスを歩く

ペルーのトレイル Cordillera Huayhuash Circuit(コルディエラ・ワイワッシュ・サーキット)の解説です。
情報は2024年10月時点のものです。

基本データ

所在:ペルー, アンカシュ
距離:約130km (81mi)
日数:8〜10日
累積標高:約7000m
最高点:5000m (Cuyoc Pass)

スタート:Quartelhuain
ゴール:Llámac

パーミット:要
事前予約:不要
ワイルドキャンピング:可


歩いた日

2024年10月22日〜10月29日(8日間)


ベストシーズン

天気、気温、混雑等を考慮したシーズン早見表

一般的には、ペルーの乾季に当たる6月〜9月がベストシーズンとされます。
しかし、この期間は一年で最も最低気温が低いシーズンでもあります。日々の宿泊は4000〜4500mでのテント泊となるため、朝晩は−10°Cに達することもあります。また、7〜8月は欧米のバカンスシーズンであるため、トレイルの混雑が予想されます。

乾季と雨季が移り変わる5月と10月は、それほど降水量は多くなく、最低気温も高めで、混雑も避けられるバランスの良い月といえます。
実際に10月に歩いてみて、雨が降ったのは8日中3日でした。いずれも一日中降り続くということは無く、行動に大きな影響はありませんでした。13時〜16時の間に、数時間の降水があるのがパターンのようです。
12月〜3月の雨季は、土砂崩れが多発し、トレイルヘッドまでのアクセスも困難になるため避けた方が良いでしょう。

10月でも朝方はテントに霜が降りることもあります。


アクセス

首都リマ〜最寄の町ワラス

⚫︎バス
昼行、夜行便共に1日に複数のバス有り。約8時間。S/50〜90。

⚫︎飛行機
長らく廃線になっていたリマ〜ワラス航路が2024年7月に復活。LATAM航空のリマ7:05発の1日一便。所要時間1時間10分。S/190〜。

実際に利用したLINEA社のバス。新しい車両で、シートも綺麗で快適でしたが、窓にシートが貼ってあり、外の景色が見えないのが残念でした。

ワラス〜トレイルヘッド

TOURISMO NAZARIO社がワラス〜各トレイルヘッド間のバスを毎日運行しています。

⚫︎Huaraz〜Quartelhuain
・Huarazを朝5時発、Quartelhuainまで約5時間
・片道1人100ソル
・Huarazにあるオフィスで事前に購入。現金のみ。英語は通じません。
・途中Chiquiánで1時間弱停車、バス乗り換え
・ChiquiánではTOURISMO NAZARIOのオフィスで無料トイレを利用できました
・Chiquiánまではマイクロバスで、地元民の利用も多くほぼ満席。Chiquiánからはバン      で、ワイワッシュに行くハイカーの利用がほとんど

⚫︎Llámac〜Huaraz
・Llámacを11時発、Huarazまで約4時間
・片道1人100ソル
 (Quartelhuainまでと同額なのが腑に落ちませんが、交渉してもダメでした)
・LlámacのTOURISMO NAZARIOのオフィス発着、料金はドライバーに現金で支払い
・Quartelhuainから折り返してきたバンに乗ります
・Chiquiánでの乗り換え、トイレ休憩は無し
・トレイルが終わり、Llámacの村に入る所でNAZARIOのオフィスがある商店の人が待ち構えており、オフィスまで連れて行ってくれました

Chiquián〜Quartelhuain間は未舗装路でヘアピンカーブの連続なので、酔い止めがあった方が良いです。
NAZARIOの他には、El Rápido社がChiquiánまでのバスを出しているようです。トレイルヘッドまで行くかは不明。

TOURISMO NAZARIO公式サイト、ワラスオフィス住所

Llámacオフィス住所:

TOURISMO NAZARIO社のマイクロバス
TOURISMO NAZARIO社のバン


宿泊地

ワイルドキャンピング

トレイル全域でワイルドキャンピングは可能です。どの団体がHuayhuash Circuitを管理しているのかは明確でなく、ワイルドキャンピングの可否やルールについての公式な声明は不明です。ですが地元コミュニティのコブラドール(集金係)へ、公式のキャンプサイト以外でテントを張りたい旨を話したところ、特に咎められることはありませんでした。指定キャンプサイトよりも景色が良い所を狙って張れるのでおすすめです。

Nev.Cuyocを臨んでのワイルドキャンプ

指定キャンプサイト

Huayhuash Circuit上には12ヶ所の指定キャンプサイトがあります。指定サイトでは、テントを貼るのに適した平らな土地、場所によりますが水場と水洗トイレが備わっています。ツアーで参加する場合は、ここでのテント泊になります。後述する通行料を支払えば、キャンプサイトの利用料金はかかりません。個人で行く場合も事前予約は不要、というか予約する術がありません。
ツアーの団体で混み合っており、ラジカセで音楽を流したりしているので、個人で行く場合は利用をあまりお勧めしません。

Huayhuach Circuitの指定キャンプサイト一覧
地図上では、Huayllapa〜Gashpapampaの間に2ヶ所キャンプサイトの表記があり、ある程度平坦で幕営可能な地面はありますが、トイレ等設備はありません。
Huayhuashのキャンプサイト
Jancaのトイレ。どのサイトのトレイもゴミ箱はあるが、ペーパー、便座は無い。水洗だが排水の行先は不明。

山小屋

Huayhuash Circuit上に山小屋はありません。
Huayllapaという集落がトレイル上にあるので、ここでの宿泊、食事、補給は可能です。


ルート状況

標識・マーカー

分岐の標識は、ある所と無い所があります。トレイルを示すマーカーはありませんが、ツアーのロバも頻繁に往来するため、トレイルの踏み跡は全ルートを通して明瞭です。

分岐の標識の一例

渡渉

数箇所ありますが、足を濡らす程の渡渉はありません。そのような川には橋が架けられています。

危険箇所

・Paso San AntonioからCutatamboへの下り
 標高差約800mのかなり急なガレ場と砂の下りです。天候が悪い時には避けた方が良いです。

Paso San Antonioからの下り。景色は良いがかなりの傾斜。


水場

全体的に沢が豊富なので、水場には困らないと思います。Huayhuash全域で放牧がされているので、浄水は必須です。


パーミット

パーミットは不要ですが、トレイルを歩くための“通行料”の支払いが必要です。これについて公式な情報は無いため、個人で行くハイカーが最も頭を悩ませるポイントかと思います。

支払いは事前にまとめて行うことはできず、トレイル上の各ポイントでコブラドールと呼ばれる集金係に直接現金で支払います。お釣りは貰えないと思っておいた方が良いので、10ソル・20ソル・50ソル紙幣を用意しておきましょう。
この通行料を支払えば、指定キャンプサイトの利用料金の徴収はありません。逆に言えば、指定サイト以外でワイルドキャンピングをしても通行料の支払いは必要になります。

通行料を支払うと、支払い証明書を渡されます。トレイル上で支払い証明を求められることもあるので、取り出しやすい所に保管しておきましょう。

また、集金係になりすましてハイカーから金を取ろうとする輩がいるという話も聞きました。私が遭遇することはありませんでしたが、基本的には指定キャンプサイトで徴収され、必ず支払い証明書を渡されるので、トレイル上で支払いのみ求めてきた場合はフェイクだと思って良いでしょう。
2024年10月時点での通行料について、下記にまとめるので参考にされてください。

Huayhuash Circuitの通行料一覧(2024年10月)
※Viconga温泉へは寄らなかったため徴収がありませんでした。
支払い証明書

2020年前後に歩いたハイカーの情報と比べ、金額が1.5〜2倍になっています。ワラスのペルー公式インフォメーションセンターで確認しても、どこでいくら払うのかという細かい情報は貰えず、トータルでS/210くらい必要になると言われただけでした。実際の合計支払額はS/280でした。今後も値上げの可能性は大いにあるため、帰りのバス代が足りなくならないよう現金は多めに用意しておいた方が良いでしょう。

そもそも、通行料って何?という話ですが、それについての明確な説明は無く、トレイルの整備や環境保全に使われているとも思えないので、腑に落ちないところではあります。2000年頃には、ハイカーが強盗に襲われる事件も起きており、そのような事態を地元コミュニティが防いでいるとのことなので、治安維持のための保険料と考えれば少しは納得できるかもしれません。


地図・ガイドブック

地形図

・0/3c Alpenvereinskarte Cordillera Huayhuash (Peru) 1:50 000

トレイルの全エリアを1枚で網羅しています。Amazonかワラスのアウトドアショッ  プ、ツアー会社にて購入可能。ラミネート加工されたものでS/85、通常の紙の地図でS/70で販売していました。
私は通常仕様のものを下記のアウトドアショップで購入しました。このお店の周辺にアウトドアショップ、ツアー会社が集まっています。

ガイドブック

・Neil Pike, Harriet Pike『Peru's Cordilleras Blanca and Huayhuash』


装備

6〜8月には、夜間〜早朝にかけて最低気温が−10°Cに達することもあるので、対応したシュラフまたは防寒着が必要です。


ハイライト

  • Siula Puntaへの登りの展望スポットからのThree Lakes(L.Gangrujanca, L.Siula, Quesillococha)

  • Punta CuyocからのNev. Cuyocと氷河

  • Paso San Antonioから北側の眺望

  • Juraucochaでのワイルドキャンプ


サイドトリップ

  • L.Gangrujanca
    メイントレイルを外れて10分ほど登って全体を見ることができます。絶壁とそこから湖へ流れ落ちる滝の迫力を感じることができるので、見に行くことをおすすめします。

  • Juraucocha
    Cutatamboから100m程の登り。ターコイズブルーの湖とその背後に聳える氷河と山々は、4,000m超の高所ならではの絶景です。湖畔でのワイルドキャンプをおすすめします。

Juraucochaでのワイルドキャンプ


コースバリエーション

完全なサーキット
Quartelhuainを出発し、Llamacへ下るルートでは完全なサーキットにはなりません。それを目指す場合は、2通りのパターンが考えられます。

⒈ Quartelhuainから時計回りにスタートし、JahuacochaからRondoy Puntaを超えてQuartelhuainへ戻る。

⒉ Pocpaからスタート。Jahuacochaから⒈と同じルートで時計回りに一周したら、Macrash Puntaを超えてLlamacへ下る。

Circuit Alpino
Huayhuashのテントサイトから、Trapecio Punta, Paso Jurau, Paso Rosario, Paso Rasacを経てJahuacochaに至る、よりアルパイン要素強めのルートです。トレイルは不明瞭で氷河の上を歩く可能性もあるため、読図スキルとGPSが必要になるでしょう。紙の地形図にはこのルートは記載されていませんが、MAPS.ME・CalTopoでは確認することができます。


Huayhuashで見られる動物

  • 牛、ロバ、羊、牧羊犬

放牧されている羊の大移動
  • ヤマビスカッチャ

チンチラ科の齧歯類ビスカッチャの一種で、主にペルー・チリの高山帯にのみ生息します。ウサギのような耳とリスのような長い尻尾が特徴的です。岩場に数匹でいることが多く、遭遇率は割と高めです。


拠点の町ワラス

Huayhuashの他に、Cordillera Blancaのハイキングの拠点でもあります。Santa Cruz TrekやLaguna69等のデイハイクもここから行えます。標高約3000mにありながらも、中規模の都市であるので物価は安いです。特に宿や食堂のランチセットは他の地方都市と比べても安かったです。

  • おすすめスーパー:Trujillo Market、Novaplaza
    どちらもワラス内に数店舗あります。米、袋麺購入可能。Trujilloの方が安い傾向にあります。NovaplazaにはATMがあり、場合によるとは思いますが、100ソル紙幣2枚を20ソル紙幣に両替もしてもらえました。

おすすめレストラン:Restaurant Turistico Eli's
 ランチセットはS/12で、飲み物・前菜・メインが付きます。アラカルトはS/15。ワラスではS5〜ランチを食べれる食堂がありますが、こちらは値段の割にクオリティが高いのでコスパが良いと思います。

  • おすすめホステル:Krusty Backpackers B&B (Mirador B&B Backpackers)
    シャワートイレ付き個室が朝食込みで、1泊約¥2,300。部屋からの山々の眺めが良いです。ワラスの多くのホステルでは、チェックアウト後でもハイキング中に不要な荷物を預かってもらえます。別のホステルですが、8日間のハイキング中でも預かってもらえました。

ホステル屋上からのワラスとCordillera  Blancaの眺め


個人的な感想

Cordillera Huayhuash Circuitは、アンデスの高地ならではの急峻な山々と迫力ある氷河を見ることができるトレイルです。4000〜5000mというこれまで体験したことのない標高には不安がありましたが、ある程度の経験のあるハイカーでワラスで高度順応を行えば、個人で歩くことは十分可能だと思いました。私はHuayhuashを歩く3週間前にJohn Muir TrailをSOBOで歩いたので、それも良い高度順応になったかと思います。
美しい自然景観の一方で、ゴミの散乱や、ツアー団体の荷物運びのロバの激しい往来によるトレイルの荒廃が気に掛かりました。また、一方的とも捉えられる通行料の徴収も気持ちの良いものではありません。この辺りは、環境保護の意識とハイキングカルチャーが未成熟な発展途上国のトレイルに共通する課題なのではないかと思います。

Pampa Llamacでのワイルドキャンプ

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