会話授業にAIを取り入れてみたー結果編ー
会話の授業にAIを取り入れれば、授業準備しなくてもいいじゃないか!と、発端はそんなものである。とりあえず1か月やってみた。
授業デザイン
はじめのアイデアは「会話授業にAIを取り入れてみたー準備編ー」で書いたけど、最終的に学生に提示したのはこれ。
ちなみにこんなことができるのは、学校がこの時期を「もてあましている」からであって「なんでもいいから会話的なものをやっちゃって」という雰囲気だからである(そこは今後いろいろ着手しなければならないところでしょうけど)。そもそもカリキュラムとしてビジネス会話にビジネスマナーと並んでいるあたり最悪である(自分が諸事情を鑑みて組んだ)。
気を取り直して、会話は当初30分の予定で、最終的にはこんな流れ。
①「日記を作ってください」という定型文(プロンプト)に「映画を見た」とか「ジムに行った」などいくつかの選択肢から好きなものを選んでコピペして、Google BardまたはChatGPT-3.5で日記を作る。
②見ないでスラスラ言えるようになるまで練習する。ペアでも練習する。
③「日記について質問を作ってください」という定型文(プロンプト)で質問リストをつくり、Padletにポストする。
④ペアで日記を教え合ったのち、Padletを見ながらお互いに質問する。
⑤ペアを変えて、もう一度やってみる。
*プロンプトづくりはかなり試行錯誤を要し、何度AIを罵倒(というか嘲笑)したことか(遠い目)
授業の様子
ツールとしてはBardを使っていた学生が圧倒的に多かった。ChatGPTだとちょっと長くて難しいらしい。Bardだと3つのドラフトの中から選ぶこともできて、少しはレベル調整が可能。ただ、一度離れると作成したはずの日記が消えてしまうので蒼白になる学生も続出。ChatGPTはすべて記録が残るので便利。でも「残ってますよ」と見せてくれた学生もいたりで、なにかしらあるのかも(深追いせず)。
「スラスラ言えるまで覚える」に関しては学生それぞれの特性が出る。ぶつぶつとがんばって暗記する学生もいれば、時間まで延々と編集し続ける学生もいるし(覚える時間がない)、覚えずに会話のときは読むだけの学生、覚えないけど内容だけつかんで適当に話す学生などがおりました。
工学系の大学を卒業したばかりの若者だけど、Bardはもちろん、ChatGPTも使ったことがない学生がほとんどで、はじめはかなりおもしろがっていた様子。授業の流れにのることに関しては、日本語力が影響しないので日本語の運用能力が比較的低い学生でも周りと対等に渡り合っていた。
結局30分を予定していたけど、なんだかんだで毎日1時間半くらいはかかってた(さくっとやるためにAI導入したのに意味なし)。
授業の結果
「会話授業にAIを取り入れてみたー準備編ー」を振り返って検証してみる。
毎日特筆すべきことがあるわけじゃないし、日々のことを話すのって難しいけど、AIが適当に作ってくれるのでその辺は楽にやっていたようだった。1か月も後半になると、AIの日記を実際の自分の行動に近づける賢者も出てきて、それは非常によいと思った。ちなみに日記を続けることは1週間でわたしがギブアップし、2週目からは600字程度の文章を読んでそれについて感想や意見を述べるという課題にシフト。ついでに、いきなり読むのもなんなんで、文章のテーマについて話したり、Googleで調べたりする時間をはじめにくっつけて、本格的に30分では終わらなくなりました。結局ウォーミングアップの内容を考えたり、いろいろ情報を集めて文章を書いたり、プロンプトの定型文を作って、実際にBardとChatGPTに入力して結果を試してみたり、「授業準備しなくていい」はずの授業が(私にとって)台無しになりました。
もうすこし具体的に、予想した効果があったのかどうか考える。
・日本語運用へのマインドシフトは起こったが
・理解語彙から使用語彙へは不明
・基本的な文法のモニタリングは起こらず
試験用の日本語から運用へマインドシフトしたのは、AIを使ったからでは当然なくて、試験が終わってあと数か月で渡航だからである。語彙に関しては、新しい語彙の獲得の可能性はあると思う。AIが出してきた語彙をノートにメモる姿も多く見られたし(保持できているかは不明)。でも、試験のために覚えた大量の理解語彙が使用語彙になったかどうかは観察できなかった。たぶん、なっていない。文法に関してはまったく効果が見られなかった。まじめに暗記した学生も、その覚えたものを話し始めると活用や助詞のミスがかなり目立つ。と今書いてて思ったけど、モニタリングできているのかも… 活用や助詞のミスはわたしが気づきやすいだけで、そのほかの部分で本人にモニタリングや気づきが起こっている可能性はおおいにある。
1か月やってみて感じたこと
まず圧倒的にAIを使ってみてよかったと思っている。彼らのAIを使う力がメキメキと伸びたのは事実である。おかげで、突然「式典で流すメッセージビデオをつくってほしい」と依頼されたときも、学生のつくったスピーチ原稿の添削が超楽だったし、今やってる正式な会話授業(?)でも添削作業が超楽。
それから、会話の授業をはじめて1か月がたったころ、学生から「AIがつくったものじゃなくて、自分で考えたもので話したい」という声が出た。どうぞどうぞである。今は学生それぞれが適宜AIを利用しながら自分の言いたいことを書いているみたいで、結局落ち着くとこに落ち着くんだなと思っている。人は定型にハメられると抜け出したくなるものなのかもしれない。
さらに、まじめに授業に来てくれている学生限定だけど、日本語の使い方(語彙選択や文法)や話の構成(談話能力)が確実に改善された。わたしとくに何も教えていないのに、あらいつの間に?とさっき思ったとこ。もちろんAIの会話授業が要因じゃないかもしれないけど、可能性は高い。
進化を続ける言語学習系AIで、すでにとかいってる時点で「古っ」とかいわれそうな勢い。情報は追うものの、TwitterなどでひっそりとRe-tweetボタンを押すのみの毎日である(気力がない)。そもそもTwetterじゃないのか、意地でも小鳥ちゃんを手放すつもりはないけど。