【獣医師が教える!】犬の避妊去勢手術はいつすればいい?病気との関係と手術時期の決定
犬の避妊・去勢手術の時期について、いつするべきか、そもそもするべきなのか悩む方も多いです。
「まだ子どもなのに手術をするなんてかわいそう。」
そんな声も聞こえてきますが、犬の発達スピードは人間とは全く違います。犬の避妊・去勢手術の推奨時期というのは、その後の病気のリスクや生活の質などをふまえた上で決められているのです。
今回は避妊・去勢手術によって防げる病気と、いつ手術を受けるべきかについて解説していきます。
避妊去勢手術の時期と病気との関係
避妊・去勢手術で防げる主な犬の病気
避妊や去勢手術で防げる犬の主な病気を紹介します。
乳腺腫瘍(メス)
肛門周囲腺腫(オス)
外傷
犬の避妊・去勢手術はいつする?
犬と人の成長スピードは全く違います。
犬の体が子供を作れるようになっていく「性成熟」は、個体差はありますが、実は5ヶ月頃から始まるのです。人では10年ほどかかると考えるとすごいスピードに感じますよね。
いつ手術を受けさせるべきか?についてですが、結論から言うと私は6ヶ月令前後を推奨しています。
”6ヶ月での手術”を勧める理由
獣医が6ヶ月で手術を勧める理由をお話していきます。
ワクチンとの関係
犬では生後2ヶ月から約1ヶ月ごとに計3回の混合ワクチンと、3ヶ月令以上で狂犬病予防接種を受けます。ワクチン接種が全て終わり、体調が安定していることを確認した上で避妊・去勢手術をする流れが一般的です。
病気との関係
女の子であれば乳腺腫瘍の発生率という点では、初回発情が来る前に手術を受けることが望ましいです。犬の性成熟は一般的に5ヶ月ごろに始まります。
しつけとの関係
性成熟が進むと異性に反応するようになります。未去勢のオスでは攻撃性が高くなってケンカをしたり、過度にマーキングをするようになったり、メスの発情に反応してしつけへの集中力を欠いてしまったり、脱走までしてしまったりすることがあります。メスでも、ぬいぐるみやおもちゃを抱えて唸り、飼い主でも手が出せなくなるなどの問題行動が出ることがあります。
乳歯遺残との関係
乳歯が抜けずに残ってしまう場合は、全身麻酔での乳歯抜歯が勧められます。乳歯の生え変わりは5〜7ヶ月ごろに起きるので、この時に抜けそうにないものは避妊去勢手術と一緒に処置をする、という選択肢があります。
こういった事情から、6ヶ月令頃が一番手術に適していると言えます。もちろん、保護動物などでこのタイミングを逃したとしても、手術を受けるメリットはありますから主治医と相談して決めるといいでしょう。
⚠ ただし、シェルター内の保護動物など、一般的な飼い犬とは違う環境の場合は、違う選択肢があります。
終わりに 犬の避妊去勢手術で心のケアもしましょう
まとめ
避妊去勢手術で防げる病気がある。
しつけにおいてもメリットがある。
一般的な手術の目安は生後6ヶ月ごろ。
犬の避妊去勢手術は体の健康の面からも、心の健康の面からも良い効果を期待できます。脳の発達している犬にとって、心の健康はとても大切です。
避妊去勢手術は賛否両論ありますし、強制ではないです。最終決定は飼い主さんがしないといけないですが、メリットがたくさんあるということは知っておいていただきたいです。また、手術の目安として6ヶ月ごろをお勧めしていますが、動物病院の方針やその子その子の体調、成長具合によって手術時期を決めていってください。
協力
「世界を旅する獣医師」 唐野智美
山口大学獣医学科卒 卒業後、東日本大震災の被災動物保護シェルターを併設する一般動物病院にて診療業務に従事。シェルター閉鎖後は、世界各国の動物事情を体感するために単独で世界一周。帰国後、福岡の救急動物病院にて救急獣医療に従事し、緊急性の高い疾患の診療、手術を多く請け負う。同時期に、人と動物との共生について伝えるための「世界一周動物写真展」を全国5都市で開催した。先進的なシェルターを見学するためのオーストラリア滞在など、日本の動物福祉向上を目標として積極的に活動中。