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【お仕事ルポ】猫が嫌いな人

こんにちは。

現在ライター志望で文章を書きながら方々を歩き回っていますが、その前に不動産会社に勤めていました。

私は不動産業の中でも「物件の維持管理」をしていました。

はっきり言いますが、クレーム対応部署です。対応だけじゃなくクレームを直接聞くこともあります。

そこには、
・トイレが漏水している
・コンロがつかない
・ドアの立て付けが悪くて開閉が難しい

など真っ当な修繕依頼もあれば、
・(隣が空室なのに)隣からの騒音がひどい
・毎日夜中に誰かが入ってきて怖い

というホラーな内容や、
・部屋にゴキブリが出たからなんとかしてほしい
・トイレが詰まった(※紙の流しすぎ)

など「それは自分でなんとかしてくれ」というようなものまで多岐にわたります。

たまに聞いてて吹き出してしまいそうな内容もありましたが、勤続4年ほどの私が一番面白いと思ったクレームを紹介したいと思います。


それは、


「猫がいる」


というものでした。


猫かぁ〜…


そのお客様が住んでいたのは、住宅街の一角にある物件だったのですが、その地域は地域猫として多数の野良猫を住民が見守る飼育を行なっていました。

そのため、実際に現地に行くとそこら中に野良猫がいます。人から餌をもらっていることもあってかあまり警戒感がなく、猫によっては近づいてきます。猫好きからしたらたまらない光景でしょう。

しかし、猫が嫌いな人からすればとてつもなく苦痛な場所だと思います。なぜなら物件の敷地内にも入ってくるし、そこでフンをすることも珍しくありません。

もちろんフンなら週に2回行う清掃日に掃除をして、なおかつ地域猫でもあるため周辺住民の親切で掃除をしてもらっていたりもしていました。


こういった場合、一度クレームを受けたら猫を完全に物件に立ち入らせないことや地域から猫を排除することは難しいので、家賃や立地などが似た条件の物件を近くで探して、交渉内容によっては引越し代を援助する代わりに別物件へ移動してもらうという対応をしていました。
実際猫ではありませんが、騒音や設備不良でそういったことを行うことはよくあることでした。
ただ猫が嫌いな人というだけであれば、大体それで解決します。


しかし、


そのお客様は是が非でも引越ししないと言い切ったのです。


さて、どうしたものか。

念の為理由を聞くとその物件はお客様の職場から近い場所だったようです。(個人的にはもっと近い場所に他社の物件があるよとずっと思っていました)

ただお客様の要望を無下にすることもできません。

そのため、できることを行い続けました。
・猫が不快に感じる柑橘系の匂いを発する水を物件の周りに置いておく。
・保健所を通じて朝や夕方~夜間にかけては住民の家の中に入れてもらう。
・敷地内の庭にあたるスペースに少しとげが生えた人工芝を敷く。
・週に3回ほど見回りをして、猫が近くにいたら追い払う。

このほかにも様々に細かい対応をしてきました。

とは言っても限界はあります。
もう人力で対応する方法は残っていませんでした。

普通の感性であれば、そこまでやればクレームというのは収まるものです。理由としてクレームの大半は「自分のために動いてほしい」という心理が大きく働いており、本当に何か対応してほしい時は何をしてほしいか具体的に伝えるものです。

しかし、その方は一言一句違わず「猫をどうにかしてほしい」としか言いませんでした。しかも毎度怒りながら。

さらに驚異的なのはそのクレームを入れる頻度です。

聞いて驚いてください。


「毎日」です。しかも1日2回以上。私が初めて電話を取ってから2年2ヶ月くらいずっと。


…その熱意は別のところに使ったほうがいいのではないでしょうか。

毎度毎度同じ内容で怒りながら電話をかけてくるため、先輩や上司は呆れて電話が来ると取りたがらなくなりました。

誰が対応することになるかというと、当時ペーペーだった自分です。

最初は相手のあまりの勢いの良さに純粋だった私は泣きそうになっていました。

なんとかしないとと思って、苦肉の策で「会って詳しい状況を聞きたい」という提案をしたものの受け入れられず。

何を言っても聞き入れられず、相手は同じことを言うだけ言う。だんだんと馬鹿馬鹿しくなります。

最終的には、電話が来ると頬杖をつきながらうんうん頷いていきなり電話を切るだけになりました。
もちろん上司や先輩から咎められます。さすがにね。

私自身もそれでは不誠実だと反省し、対応を改めました。
どういう対応になったかというと…


「もうできることはありません。失礼いたします」と、
一言言って電話をガチャ切りです。


これが展開が進まないクレームに対する最適解です。

その後、実際に会ってお話しをして、相手が毎度酔っ払いながら電話をかけていたことが判明し、シラフの状態で「もう電話をかけてこないでください」と釘をさしました。
少しクレームの頻度が減りましたが、それでも猫が嫌なのか今度は泣きながら助けを求めてくるようになりました。
もう側から見ればさながらコントのように思えるでしょう。それくらい電話での応酬は滑稽でした。

私はそのすぐ後に異動・退職し、上司や先輩方も各々異動や転職などで部署、会社を離れました。
現在どうなっているか知る由もありませんが、もう引っ越しているか、猫がいる環境に慣れているか、とにかく変なクレームを入れていないことを祈りながら文末としたいと思います。


最後に元不動産屋さんから、引越しをする際に見ておくべきところをアドバイスいたしましょう。
・空室期間の長さ(変に長いと色々怪しい)
・上下左右の隣人に問題がないかどうか(騒音・迷惑行為など)
・臭い(油っぽい臭いは注意)
・地域の特性(猫とか猫とか猫とか、自治会・町会がめんどくさいとか)
です。

正直間取りや立地、窓の方角などは二の次で上記が一番大事だと思います。

これで物件探しをお楽しみください!


それでは、また次の記事でお会いしましょう。


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