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冒頭に威勢よく渋谷スクランブルに暴走車が突っ込む!それだけ。映画「グラスホッパー」

ハロウィンの夜に渋谷のスクランブル交差点で起こった事故をきっかけに、心に闇を抱えた3人の男の運命が交錯していく様を描いた伊坂幸太郎原作2015年の松竹超大作「グラスホッパー」。鈴木を演じる生田斗真、クジラを演じる浅野忠信、蝉を演じる山田涼介の豪華共演がセールスポイントだったが、その出来栄えはと言えば。

正直、伊坂幸太郎ファンでもない&原作未読の自分にはきつかった、の一言。

冒頭、いつものような、夜の何でもない渋谷のスクランブル交差点の雑踏が映し出される。そこで突然4WDが暴走し、大量殺傷事件に発展する。
わざわざスクランブル交差点をセットに作ってまで精密に再現したという、この原作さながら?のショッキングな映像に、期待感が否応なしに高まる。

次のシーン、「まるで油絵の筆を取るように」さらりと蝉が悪党どもに天誅を下す。このスタイリッシュさに期待感がますます高まる。

だが、その後は、地味〜な鈴木の探偵行が延々と続く。鈴木と鯨と蝉、この三名が交差するようで交差しない。要約すれば、鈴木が寝ている間に、鯨と蝉とが勝手にくんずほぐれつを始め、勝手に相打ちとなる。鈴木は完全に置いてきぼりにされたのだが、「ま、いいか」と明日へ向かう。

鑑賞後一夜明けてしまえば、ひたすらショッキングな冒頭部以外には何も記憶に残らない、そんな竜頭蛇尾な作品。
唯一の救いは、「指導」という名目でサエナイ風貌の生田斗真をえいえいと踏みつける比与子演じる菜々緒が、実に魅力的であるところだろうか。彼女になら私も踏まれてもいい、と思えるほど。

ということで、ファンにとっても辛い出来だったかもしれない本作。実際辛かったのは、本作の低評価が物語る。


とはいえ、2023年のハロウィンでついに封鎖された/今後も毎年のように封鎖されるであろう渋谷、の往時の姿をしのぶ映像資料として、十数年後には貴重な記録として残るかも?

それにしても、首相暗殺を描いた「ゴールデンスランバー」といい、伊坂幸太郎原作の小説は、どうしてどこかこう予言めいた、ジンクスめいた、フィクションを溶解させるような力を持っているのだろうか。

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ドント・ウォーリー
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